“非対面”営業続々
積極企業がコア業務を進化
春の賃貸市況
実内覧をせずにインターネット上の広告画像閲覧のみで契約を決める消費者動向はこれまでも広がってきたが、新型コロナウイルスの影響により、足元の繁忙期でもその特徴が一層顕著になったようだ。各社が繁忙期に向き合った非対面ニーズへの対応を紹介する。
入居の延期・中止が約3割
ライフル(井上高志社長)は、全国の「ライフルホームズ」加盟店企業に対し、新型コロナに関した意識調査を実施(3月9~12日、4月6~12日)。4月調査では企業活動へ影響が出ている割合は全体の91.7%で、3月調査の70.5%から拡大。特に賃貸仲介、賃貸管理の事業者に、3月に入って増加した具体的影響を聞くと、「入居の延期・中止」が最多(全体の約3割)となり、「家賃値下げの相談・交渉」「家賃支払い遅延の連絡・相談」も2割近くの事業者が増えたと回答。新型コロナによる失業や収入減少に直面し、家賃の支払いが困難になっている状況がわかった。
非対面需要におけるオンラインツールの活用
同社ではこれらの調査・分析と共に事業者支援を開始。新規申し込みがあった加盟店に対し、非対面接客が可能となる「オンライン相談/オンライン物件見学/IT重説」を無償提供している。その結果、「既存会員の積極活用に加え、新規利用も一部で進んだ」(同社)とし、3月実績は「相談・物件見学」の合計が2月対比で約5倍、「IT重説」は1.7倍に増加。「オンライン接客の普及には新規会員の手間や難しさという先入観を取り払うことが必要」(同社)として、無償提供期間を9月末まで延長することを決めた。更に売買領域ではオンライン相談が可能な物件の情報提供を4月27日に始めるなど、ユーザー向けの非対面サービスも拡充した。
いえらぶGROUP(岩名泰介社長)も、「WEB接客」機能を新規導入する不動産会社に対して無償提供をいち早く打ち出した。「大手はもちろん、今まで積極的ではなかった中小不動産会社からも問い合わせが増えた」(同社)と事業者の意識の変化を受け止める。4月以降、RPAで不動産会社の業務効率化を図る「らくらくロボシリーズ」を随時発表しており、リモートワークを促進する狙いだ。
不動産会社の対応はどうか。神奈川県川崎市で賃貸仲介・管理業を営むエヌアセット(宮川恒雄社長)は4月10日、来店不要の部屋探しサポート「リモートレント」を実装。同社の管理物件において①物件の内見、②申し込み、③契約前の重要事項説明、④契約のプロセスをすべて遠隔で可能にした。国内外からの転入者が多い地域性のため従来も一部遠隔サービスで対応してきたが、非対面需要が高まった状況を受けて本格化した。
アットホームラボ(株)の磐前淳子氏は、今後の賃貸市況のポイントに「不要な転居の見送り」「トップシーズンの平準化と長期化」「非対面ニーズへの対応」を挙げる。更に1人のユーザーが不動産会社に対して問い合わせ、訪問する件数が減少している傾向に触れ、「消費者は絞り込みを行っている。対面接客が減少し、現地見学や来店者数が減少するだろう。不動産情報サイトの中で多くを発信する現代では、不動産会社にはプロとしてのエリア説明、情報提供が求められる。具体的には透明性と正確性、独自性の3点だ」と分析する。
アットホームにおいても、AIによる音声認識で物件確認の電話に自動応答する「スマート物確」を在宅勤務中でも可能とするリモートワークオプションの提供を開始したばかり。事業者側の業務効率化を図ると共に、コア業務として注力すべき領域で何を提供するか。その対応が差別化のポイントとなるはずだ。
(『住宅新報』2020年5月12日号より抜粋・編集)