横ばい傾向続く
東京圏 コロナの影響で客足鈍る
住宅新報家賃調査


住宅新報が年2回実施している4大都市圏家賃調査がまとまった。

東京圏のマンションの平均成約賃料はワンルームタイプが7万3,797円で前回調査(2019年9月1日時点)比0.48%プラスとなった。1LDK~2DKタイプは10万9,600円で同0.19%プラス。2LDK~3DKタイプは13万6,863円で同0.20%プラス。マンションは2016年9月以降すべてのタイプでプラスとなった。ただ上昇幅は抑えられ、実態は横ばい傾向が続いている。

アパートの平均成約賃料は、1K~1DKタイプで6万4,103円で同0.52%プラス。2DKタイプが8万7,151円で同0.25%プラスといずれも上昇した。アパートについては、上限、下限ともいずれのタイプも上昇したが、特に1K~1DKタイプの下限で上昇が目立った。

移動が少ない

この横ばい傾向については、理由がある。とにかく、必要最小限の移動、引っ越しにとどまり、継続更新が多いということだ。昨年10月に消費増税が行われ、出費が多くなっていることに加え、景気そのものが下降曲線を描くようになった。そこに、今回の新型コロナウイルス感染症が襲来。就職、進学、異動などでどうしても動かなければならないという人以外は動きが鈍くなった。実際に、繁忙期だった今春の客の動きは少なくなっているという。

新型コロナの影響は限定的

新型コロナウイルスの影響としては、「来店客がゼロとなり、毎日開店休業状態。学生の問い合わせ自体はあるので、今後の営業再開に期待」(都営新宿線菊川駅)。「駅前に人通りがない。転勤ニーズもほとんど動きがない。見通しは厳しく、パートにも辞めてもらった」(同大島駅)と、やはり厳しい声が聞こえてくる。また、「既に入居している人から家賃を少し下げてほしいとの相談が5件以上あった」(JR山手線品川駅)。家賃については、家賃保証会社の存在などもあり、「影響はない」(西武新宿線鷺ノ宮駅ほか多数)が、この状態が長引けば家賃交渉を行うケースも増えていくだろう。

それでも、「新しい日常」にいや応なく対応している業者の声がある。「数件は、住宅確保給付金の必要書類を書いた」(西武池袋線江古田駅)。「従来は、IT重説のニーズはあまりなかったが、今回のコロナ以降、地方在住者からのニーズがあった」(東京メトロ丸ノ内線新高円寺駅)。「付近の大学への入学客は例年どおり。しかし、コロナの影響で、入構禁止となり、学生も実家に帰るに帰れず、ネット授業らしい。そのせいか、ネット環境の整備などの問い合わせも増えた」(JR常磐線北千住駅)。

IT重説やVR内見などの対応については、「オンライン内見については元々扱っていたが、ニーズが大幅に増えた」(JR京浜東北線東神奈川駅)。「IT重説の利用者は新型コロナの影響よりも遠方の人が多い」(JR総武線千葉駅ほか)。「これからはVRも入れてみたい。IT重説はやっている」(田園都市線溝の口駅)と、既にIT重説を行っている業者は多いようだ。

緊急事態宣言が解除されても、「新しい日常」は続く。今回、調査した不動産会社を見ると、確かに苦境に立たされている会社もあるが、今ある武器を駆使して、新しい事業方法を模索している会社もある。この「新しい日常」にどう対応して、ユーザー、オーナーとウィンウィンになれるか、それは各社の取り組み方にかかっている。