売買IT重説が2021年4月から本格運用
国交省ではデジタル書面の新社会実験も


国土交通省は、これまで行ってきたIT重説(ITを活用した重要事項説明)の社会実験結果をふまえて、2019(平成31)年から実用化されてきた賃貸取引に続き、売買取引についてもIT重説を本格運用する方針を示した。併せて、新たに売買取引におけるデジタル書面(宅建業法35条および37条書面の電磁的交付)についての新社会実験も開始することとした。

現在すでに実施している賃貸取引におけるデジタル書面の社会実験については、今後も継続することとした。

同省は2021(令和3)年1月25日に「ITを活用した重要事項説明に係る社会実験に関する検証検討会」の第7回会合を開催し、2019(平成31)年10月から行われている「個人を含む不動産売買取引におけるIT重説社会実験」と「賃貸取引における書面のデジタル交付社会実験」の結果を報告した。

それによると、売買取引社会実験は、2020(令和2)年12月時点の登録事業者数が854社、実施件数(アンケートの回収件数)が2,289件。当初の登録事業者数は59社で、期間は同年10月までの1年間としていたが、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けてIT活用やこれにかんする実験へのニーズや注目度が上昇したため、登録事業者や実施件数も急増し、期間を延長した経緯がある。

同検討会で報告された結果概要によると、実証実験におけるトラブルは宅建士・説明の相手方共に約9割が「なかった」と答え、トラブルが発生した場合でも、結果的には対処、解決がなされている。とはいえ、この中でIT重説に要した時間が「30分未満」という回答が19.7%あったことなどに懸念を示す声も複数あがった。

こうした結果と検証議論もふまえ、同省は実験のサンプル数とトラブル発生状況については問題ないと判断。今後も取引態様を注視しつつ、売買におけるIT重説も本格運用へと移行することとした。

今年2月には「宅建業法の解釈・運用の考え方」を改正し、本格運用に向けた実施マニュアルを作成。4月の本格運用に向けて準備を進める。

併せて2月のガイドライン作成後、3月に参加事業者の募集を行ってデジタル書面についての社会実験を開始することとした。

(『住宅新報』2021年2月2日号より抜粋・編集)