政府提出予定の不明地対策法案
相続土地の登記義務化へ


政府は2月24日に第7回「所有者不明土地等対策の推進のための関係閣僚会議」を開き、所有者不明土地(不明地)への対策に向けて提出予定の法案を明らかにした。

今回の報告では、法務省所管の「民法等の一部を改正する法律案」(民法等改正案)と「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律案」(相続土地国庫帰属法案)。不明地の発生予防に主眼を置いた法改正案および新法案で、相続登記の義務化や土地所有権の放棄が柱となる。近く閣議決定し、国会へ提出される見通し。

民法等改正案のうち、不動産登記法部分では、不明地が相続時や住所変更時の未登記により発生するケースが多いことを受け、不動産についての相続登記や住所変更等登記を法的に義務付ける。相続による不動産取得を知った日から3年以内に登記申請をしなかった場合、最大10万円の過料。同様に、氏名や住所等の変更登記は2年以内の申請を義務づけ、違反時の過料は最大5万円が科される。

併せて登記申請の負担軽減策を講じ、実効性の担保を目指す。相続人が登記申請を簡易に行えるよう、添付書面を簡略化するなどした「相続人申告登記制度」を新設。登録免許税の負担軽減措置も設ける見込みだ。また登記漏れの防止策として「所有不動産記録証明制度」も新設し、相続登記が必要な不動産を把握しやすい環境を整備する。

住所変更等については登記事項を追加してほかの公的機関の持つ情報とも連携し、登記官が登記名義人に確認の上、必要に応じて変更登記を行う仕組みを導入する。

相続土地国庫帰属法案は、相続等により取得した土地に限り、所有権を放棄して国庫に帰属させることを可能にする新法案。国の調査等によると、相続した土地を手放したいと考える人が増加しており、登記や管理の不全化を招いていることから、条件付きで土地の放棄を認める方針に舵を切った。

国庫に帰属させられる土地は、相続・遺贈により取得したものに限られるほか、建物等や土壌汚染、崖、権利関係の争い、担保権等がなく、また通路などとして他人に使用されていない土地。また審査手数料に加え、相場を基に国の算出した土地管理費用10年分相当額の「負担金」を支払う必要がある。条件や負担金の設定により、安易な土地放棄を防ぐ狙い。

このほか民法改正案においては、不明地の土地・建物管理に特化した新たな財産管理制度を創設する。また不動産共有者の所在等が不明な場合に、所定の金銭の供託により共有関係を解消する仕組みや、遺産分割が10年以上の長期にわたり未了状態の場合に法定相続分で画一的に分割する仕組みも導入。更に隣地所有者が不明な場合にもライフライン設備等を引き込めるようにするなど、相隣関係規定も見直した。

いずれの法案も、成立した場合には原則として公布から2年以内に施行される。

(『住宅新報』2021年3月2日号より抜粋・編集)