「国土の長期展望」最終とりまとめ
「デジタル進展で転換点に」
10万人規模の多彩な地域生活圏を形成


国土交通省は5月20日、第15回「国土の長期展望専門委員会」(増田寛也委員長)をウェブ形式で開催し、最終とりまとめについて議論を行った。「デジタルを前提とした国土の再構築」を掲げ、多彩な地域生活圏の形成等を目指す。新型コロナ感染症の感染拡大等に起因したデジタル化の進展と、リアル社会の重要性の再認識を踏まえ、「国土計画のあり方の転換点」を迎えている。

同委員会は、人口減少の進行、急速な高齢化等を前提として国土の長期展望を行い、将来的な国土の重要課題を調査するため19年5月に設置された。新型コロナ感染症の感染拡大によって議論が中断した時期があったものの、社会変化の最前線で今後の国土政策を踏まえた議論が行われた。

最終とりまとめ案では、「デジタルを前提とした国土の再構築」を進めていく必要があるとし、2050年を見据えて目指す国土づくりの究極目標として「『真の豊かさ』を実感できる国土」と明記した。そのための共通土台として、(1)安全・安心、(2)自由・多様、(3)快適・喜び、(4)対流・共生を挙げ、「ローカル」「グローバル」「ネットワーク」という3つの視点で取り組んでいくこととした。

具体的な取り組みの方向性については、多彩な地域生活圏の形成を図るため、人口10万人前後の圏域を1つの目安として維持・強化していくことに。また、新時代に対応した産業構造への転換や大都市のリノベーションを進めると共に、交流ネットワークや様々な面でのつながりの充実を目指す。人口減少に応じた「国土の適正管理」や防災・減災、国土強靭化、カーボンニュートラル等の取り組みを推進していくとした。

増田委員長は大枠での承認が得られたとし、「DXの浸透やカーボンニュートラルなどを念頭に議論してきたが、コロナ禍に伴ってテレワークが推進され、リアル社会の重要性を再認識することにもなった。多様性を担保していくために若い世代へどう伝えるか、計画をどう成熟させるかが課題」と振り返った。

●次世代への発信を強化

また、次期国土計画の策定に向けて各委員が発言した。多くの委員がコロナ禍に起因したデジタル、オンライン化の手法が交通網を強化するという従来の国土計画のあり方を転換させていくと指摘。都市と地方の関係性においては、「省庁間の連携によって、働き方の転換の推進」や「ネットワークを前提とした物理的な多極化と多様な人材の選択肢」を求める意見が挙げられ、教育や企業の活動にも多様性が生まれる可能性が示された。

他方、「若い世代に目指すべき国土政策ビジョンを示し、実現していくために国、省庁スタッフの実践状況を示すことが説得力になる」など、実行性のある国土政策への転換と、担い手となる若い世代への発信力の強化などが課題として指摘された。

(『住宅新報』2021年6月1日号より抜粋・編集)