国土交通白書
2つの危機の先を見据える
DX、多様な社会実現へ


政府は6月25日、21年版「国土交通白書」を閣議決定した。2部構成で、第1部では「危機を乗り越え豊かな未来へ」をテーマに、現在、わが国が直面する新型コロナウイルス感染症と災害の激甚化・頻発化という2つの危機に着目。社会と環境の変化の加速化と、これまで認識されなかった課題の顕在化を乗り越え、目指すべき「豊かな未来」の姿を展望している。

第1章では、新型コロナが人命・健康への被害、経済的打撃に加え、出生数減少を加速化させる可能性を指摘。さらに激甚化・頻発化する豪雨災害や発生リスクが高まる大規模地震を2つ目の危機と捉えた上で、過去の大震災を契機にGIS(地理情報システム)整備の本格化や復興まちづくりによるコンパクトシティの形成といった変革が実現した点を報告する。

第2章では、危機によって加速、顕在化した変化や課題として、(1)社会の存続基盤の維持困難化、(2)災害リスクの増大や老朽化インフラの増加、(3)多様化を支える社会への変革の遅れ、(4)デジタルトランスフォーメーション(DX)の遅れと成長の停滞、(5)地球温暖化の進行を挙げ、分析・整理した。例えば、社会基盤については公共交通の維持困難化と人口減少等により生活サービスの維持も困難化が進むと予測。また、日本のテレワーク利用率は31%と世界各国(中国都市部75%、米国61%)に及ばず、世界デジタル競争力ランキングでも調査対象の63カ国のうち27位にとどまる現状を指摘している。

第3章では、これらの変化や課題を踏まえて、今後どのように取り組むかを整理、紹介している。

また、第2部では例年通り国土交通行政の動向を報告した。

(『住宅新報』2021年6月29日号より抜粋・編集)