マンション関連2法改正案が国会へ
適正管理に恩恵、促進図る


政府は2月28日、「マンションの管理の適正化の推進に関する法律及びマンションの建替え等の円滑化に関する法律の一部を改正する法律案」を閣議決定し、同日に国会へ提出した。国による「管理基本方針」をはじめ、管理組合による「管理計画」の認定制度、団地における敷地分割制度などの創設が柱。成立すれば、公布から2年後に全面施行される。

マンション管理の基本方針を策定

まず管理では、国がマンション管理についての基本的な方針を策定。国土交通省告示による現行の「マンション管理適正化指針」は、同基本方針に組み込む形となる。

加えて、地方自治体の役割も規定する。施策の主体は、基本的にはマンションの割合や数の多い都区部と市単位を想定し、町村については県が役割を担う見込み。各自治体は国の基本方針を踏まえ、区域内の「マンション管理適正化推進計画」を作成できる。

マンションの状況は自治体によって差があるため、あくまでも任意の計画となる。同省住宅局市街地建築課の佐藤雅課長補佐は「多くの自治体が作成してくれるよう期待しており、当然しっかりと周知を図っていく」と語る。

更に、自治体は管理組合に対して助言や指導、勧告を行える。罰則規定はないものの、区分所有者へのヒアリングなどから、例えば「積立金が不足している」「総会が適切に開かれない」といった状況を把握し、「管理適正化指針」に基づき対処する。

税制優遇を検討、IT重説も

そして管理組合を主体とした、個々のマンションの「管理計画」制度も創設する。所定の基準に適合していれば行政の認定を受けられるため、管理状況の可視化と市場での優位性につながり、住民による適正管理のモチベーション向上が期待される。加えて佐藤課長補佐は、「同計画認定のインセンティブとして、税制による優遇も検討している」と方針を明かした。

管理組合と管理業者の負担軽減も図る。管理受託契約における重要事項説明書と契約時の書面についてはデジタル交付を認め、重説自体もIT活用が可能となる見込み。また、同一内容での契約更新時の重説については、組合側が説明不要と表明すれば、書面の交付のみで可とする。

制度改正で建て替えやすく

マンション再生についても、新たな施策を盛り込んだ。現行の敷地売却制度を拡充し、対象の追加に加え、同様の枠組みで敷地分割も行いやすくする。

現行法では耐震性不足のマンションを「要除却認定」とし、議決権の5分の4以上の同意をもって敷地売却を可能としているほか、建替え時の容積率特例も設けている。そこで同認定対象として、防火性についての建築基準法等不適合と、「外壁の剝落(はくらく)等による周辺危害のおそれ」を追加。またバリアフリー性能が確保されていない建物や、給排水管などの著しい劣化なども加えた。

これらのうち、耐震性不足と防火性不適合、外壁等の剝落については、名称を「特定要除却認定」と改め、敷地売却制度の対象とする。バリアフリー不足と配管劣化は「要除却認定」で、敷地売却制度の対象外ながら、容積率特例は受けられる。

敷地分割のハードル下げる

これを踏まえ、「特定要除却認定」の団地型マンション等の再生へ向け、敷地分割の新制度を設ける。基本的な枠組みは敷地売却制度と同様で、所有者等の5分の4以上の同意により敷地を分割・売却できるようにするもの。

現在は民法の原則により全員の賛成が必要となるため、敷地分割は極めて困難。国は同新制度により、敷地分割が現実的に可能な環境を整える狙いだ。同省は同法改正により、マンション建替え件数(1975年からの累計)を、2018年の325件から2025年には約500件へ押し上げるという効果目標を掲げている。

(『住宅新報』2020年3月10日号より抜粋・編集)