一般的に「その他」と呼ばれる科目の内容は、①鑑定評価・地価公示、②住宅金融支援機構、③不当景品類及び不当表示防止法(略して「景表法」)、④宅地建物の統計、⑤土地、⑥建物の6問で構成されます。②~⑥は、5点免除科目です。
鑑定評価と地価公示
鑑定評価か地価公示のどちらかから1問出題されます。これは5点免除科目に含まれないので、全受験生が解答する必要があります。鑑定評価は難問が多いですが、地価公示は難易度が高くないので得点源にすることができます。
(1)土地・建物の鑑定評価
鑑定評価は、対象不動産に係る市場の特性等を適切に反映した複数の手法を併用して行うべきであるとされています。
原価法 | 対象不動産の価格時点における「再調達原価」を求め、これを「減価修正」して積算価格を求める方式。要するに、対象不動産と同じものをつくるとしたらどの程度のお金がかかるかを求め、これを築年数などによって減価して、不動産の価格を求めるのです。 |
---|---|
取引事例比較法 | 多数の取引事例を収集し、適切な事例を選択して、これらに係る取引価格に必要に応じて補正等を行い、価格を求める方式。要するに、対象不動産と類似した条件にある取引事例を集めたうえで、これを対象不動産と比較して価格を求めるのです。 |
収益還元法 | 対象不動産が将来生み出すであろうと期待される純収益の現価の総和を求めることにより、対象不動産の価格を試算する方式。要するに、対象不動産を賃貸したらどの程度の賃料収入を得ることができるかという試算に基づいて、不動産の価格を求めるのです。 |
(2) 地価公示法
①地価公示の目的
都市およびその周辺の地域等において、標準地を選定し、その正常な価格を公示することにより、一般の土地取引価格に指標を与えるなどして、適正な地価の形成に寄与することを目的とします。
②地価公示の手続
土地鑑定委員会が、全国から他の参考になりやすい土地を「標準地」としてピックアップし、その標準地の正常な価格(毎年1月1日現在の価格)を官報に掲載することによって公示します(官報への掲載時期は、3月下旬ごろ)。
③公示価格の効力
公示価格を「指標」とするもの | 土地取引を行う者の責務 *国または地方公共団体がその所有する土地の取引を行う場合においても、公示価格を指標として取引を行うよう努めなければならない。 |
---|---|
公示価格を「規準」とするもの | ①不動産鑑定士が行う土地についての鑑定評価 ②公共事業の用に供する土地の取得価格 ③土地収用に対する補償金の額の算定 |
「指標」という場合は努力目標にすぎず法的拘束力はないが、「規準」という場合は法的拘束力がある。
5点免除科目の対策
5点免除とは、国土交通省指定の登録講習を修了すると46~50問目の問題が免除(5問を全部正解したものとして扱われる)となる制度です。読者には5点免除の対象者が多いと思われるので、5点免除科目の対策についてはポイントだけを示すことにします。
住宅金融支援機構法 | 住宅金融支援機構の業務の範囲に関する出題が多い。細かい知識も出題されるが、基本的な知識を押さえることにより、選択肢を2つに絞ることができる程度の実力がつけばよしとすべきである。 |
---|---|
景表法 | 広告内容に関する規制が出題される。ある程度、常識でも対応できるが、覚えなければならない知識もあるので、しっかりと覚えて得点源にしよう。 |
統計 | 住宅着工戸数、地価の変動、土地の取引件数の推移、不動産業の売上高等の推移などについて、最新の統計データに基づいた出題がされる。統計データの細かい数字を暗記する必要はない。データの変化の傾向(増えているのか減っているのかなど)を押さえておけばよい。完全に暗記物なので、一夜漬け的に直前に覚えればよい。試験開始直後、記憶が残っているうちに、統計の問題(例年、問48として出題される)を解き終えてしまうのも一策。 |
土地・建物 | 土地に関する知識と建物に関する知識が、それぞれ1問ずつ出題される。その年によって問題の難易度には少しばらつきがある。難問は正解できなくてもよい。難易度が低めの問題を得点できるレベルを目指そう。 |
過去問を解いてみよう!
知識の定着を
- 【Q1】鑑定評価の基本的な手法は、原価法、取引事例比較法及び収益還元法に大別され、実際の鑑定評価に際しては、地域分析及び個別分析により把握した対象不動産に係る市場の特性等を適切に反映した手法をいずれか1つ選択して、適用すべきである。(H30年 問25)
- 【Q2】土地の取引を行なう者は、取引の対象となる土地が標準地である場合には、当該標準地について公示された価格により取引を行なう義務を有する。(H29年 問25)
こう考えよう!<解答と解き方>
Answer1
【解説】1つの手法を選ぶのではなく、複数の手法を併用して行うべきであるとされている。
Answer2
【解説】 標準地の取引を行う場合であっても、公示価格を指標として取引をするように努力をすればよく、公示価格で取引を行う義務はない。
植杉 伸介
早稲田大学法学部卒業。宅建士、行政書士、マンション管理士・管理業務主任者試験等の講師として30年以上の実績がある。『マンガはじめて建物区分所有法 改訂版』(住宅新報出版)など、これまでに多くのテキストや問題集の作成に携わり、受験勉強のノウハウを提供している。