宅建業の免許に関する問題は、本試験において毎年2問程度出題されます。今回学習するのは、免許の手続きに関する基礎知識です。合格するためには、絶対に押さえておかなければならない論点です。内容的には難しくないので、しっかりとマスターしてください。
1. 免許の種類
宅地建物取引業の免許には、都道府県知事免許と国土交通大臣免許とがあり、両者の区別は、事務所の設置場所で決まります。なお、国土交通大臣の免許を申請する場合は、主たる事務所の所在地を管轄する都道府県知事を経由して行います。
都道府県知事免許 → 1つの都道府県の区域内のみに事務所
国土交通大臣免許 → 2つ以上の都道府県の区域内に事務所
ここでいう「事務所」は、そこで宅建業を営んでいることが当然の前提となります。たとえば、本業が建設業の会社で、一部の支店のみで宅建業を営んでいる場合、建設業しか行っていない支店は宅建業法上の「事務所」ではありません。しかし、このような会社でも本店は、常に「事務所」として扱われます。
なお、免許の種類は、事務所の数で決まるわけではないことに注意してください。たとえば、事務所が3つあったとしても、それがすべて同じ都道府県内にあれば都道府県知事免許ですし、事務所が2つしかなくても、その2つがそれぞれ別の都道府県に設置されていれば国土交通大臣免許になります。
2. 免許の有効期間と更新
有効期間 | 5年 |
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更新 | 有効期間満了の日の90日前から30日前までに免許の申請書を提出 |
従前の免許の有効期間の満了日までに、更新申請についての処分がなされないときは、その処分がなされるまで従前の免許は有効です。この場合、免許の更新がなされたら、その新免許の有効期間は、従前の免許の有効期間の満了の日の翌日から起算されます。
3. 免許換え
免許を受けた後に、事務所の増設・廃止・移転などがあり、免許を受けるべき者(免許権者)が変更になった場合は、免許換えが必要となります。免許換えには、次の3つのパターンがあります。
免許換えにより取得した免許は、まったく新規に免許を受けた場合と同じと考えてください。したがって、免許換えによる免許の有効期間は、新免許交付の日から5年です。
知事免許に免許換えをする場合は、その知事に直接申請書を提出しますが、大臣免許に免許換えする場合は、主たる事務所(本店)の所在地を管轄する知事を経由して大臣に申請書が提出されます。
問題を解いてみよう!
知識の定着を
- 【Q1】甲県に本店を、乙県に支店をそれぞれ有するA社が、乙県の支店でのみ宅地建物取引業を営もうとするときは、A社は、乙県知事の免許を受けなければならない。(H19 問33)
- 【Q2】宅地建物取引業者E(乙県知事免許)は、乙県内に2以上の事務所を設置してその事業を営もうとする場合には、国土交通大臣に免許換えの申請をしなければならない。(R2 問26)
こう考えよう!<解答と解き方>
Answer1
【解説】本店は、常に宅建業法上の事務所に該当します。したがって、A社は甲県と乙県に事務所を有することになるので、国土交通大臣の免許を受けなければなりません。
Answer2
【解説】事務所の数が2以上であっても、それがすべて乙県内にある以上、乙県知事の免許でなければなりません。
植杉 伸介
宅建士・行政書士・マンション管理士、管理業務主任者試験などの講師を30年以上務める。著書に『マンガはじめて建物区分所有法 改訂版』(住宅新報出版)、『ケータイ宅建士 2022』(三省堂)などがあるほか、多くの問題集の作成に携わり、受験勉強のノウハウを提供している。