宅建試験は宅建士になるための試験ですから、宅建士に関する宅建業法上の規制は必ず押さえておく必要があります。本試験においても、宅建士に関する問題は毎年必ず出題されます。宅建士の登録の基準に関する知識は少しややこしいですが、しっかりとマスターしておいてください。
宅建士の登録の基準と宅建士証
1. 登録の基準
(1)実務経験等
宅建士の登録を受けるためには、次のいずれかの実務経験等が必要です。
①宅地建物の取引に関する2年以上の実務経験
または
②国土交通大臣がその実務経験を有する者と同等以上の能力を有すると認めること(具体的には、国土交通大臣の登録を受けた講習を修了すればよい)
(2)欠格要件
実務経験等があっても、以下の者は宅建士の登録を受けることができません。
① 未成年者
ただし、宅建業の営業に関し成年者と同一の行為能力がある場合(法定代理人の営業許可がある場合)は、登録を受けることができます。
② 免許の基準と共通の基準
- (1) 破産者で復権を得ない者
- (2)不正手段で免許取得、業務停止処分事由に該当し情状が特に重い、業務停止処分違反のいずれかの理由で免許取消処分を受け、その取消しの日から5年経過しない者
- (3)(2)の免許取消処分を受けた業者が法人である場合に、その取消しに係る聴聞の期日等の公示の日前60日以内に、その法人の役員であった者
- (4)(2)の免許取消処分の聴聞の期日等が公示された日から、その処分をするかしないかを決定する日までの間に、相当の理由なく廃業等の届出をした者
- (5) (2)の免許取消処分の聴聞の期日等が公示された日から、その処分をするかしないかを決定する日までの間に、法人が相当の理由なく廃業等の届出をした場合、その公示の日前60日以内に役員であった者
- (6) 禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行が終わり、または刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
- (7) 宅建業法違反、暴力的犯罪、背任罪により罰金刑に処せられ、その刑の執行が終わり、または刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
- (8) 暴力団員等(暴力団員または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者)
- (9) 心身の故障により宅建士の事務を適正に行うことができない者
③登録消除処分を受けた者
④登録消除処分を受ける前に自ら消除申請した者
⑤事務禁止期間中に自ら消除申請した者
登録の欠格事由を学習する際は、宅建業の免許の欠格事由と比較する視点が重要です。特に、未成年者の部分が重要です。免許の場合、「成年者と同一の行為能力を有しない未成年者」に関しては、未成年者だからという理由で免許を拒否することはありませんが、その代わり法定代理人の欠格事由もチェックされます。これに対し、登録の場合は、「成年者と同一の行為能力を有しない未成年者」であるというだけで、登録を受けることができません。
2. 宅建士証の交付
宅建士としての職務を行うには、登録を受けた知事より宅建士証(有効期間5年)の交付を受けなければなりませんが、その際は原則として知事が指定する講習(実務経験のない者が登録を受けるために受講する国土交通大臣が指定する講習とは別のもの)を受講する必要があります。
原則 | 交付申請前6カ月以内に(新規交付の場合だけでなく、宅建士証の更新を受ける場合も同じ)、登録を受けている知事が指定する講習を受講しなければならない |
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例外 | 試験合格から1年以内の者、登録の移転に伴い宅建士証の交付を受ける者は受講義務なし |
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3. 宅建士証の返納・提出・提示義務
返納 | 登録の消除または宅建士証が失効した場合に知事に返還すること |
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提出 | 事務禁止処分を受けた場合に知事に提出すること |
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提示 | 取引の関係者からの請求があったときおよび重要事項の説明をするときに相手方に見せること |
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宅建士証の提出は、事務禁止処分を行った知事ではなく、宅建士証を発行した知事に対して行います。
問題を解いてみよう!
知識の定着を
- 【Q1】未成年者は、成年者と同一の行為能力を有していたとしても、成年に達するまでは宅地建物取引士の登録を受けることができない。(H23 問28)
- 【Q2】甲県知事の登録を受けている宅地建物取引士が、乙県知事から事務の禁止の処分を受けた場合は、速やかに、宅地建物取引士証を乙県知事に提出しなければならない。(H30 問32)
こう考えよう!<解答と解き方>
Answer1
【解説】法定代理人から営業の許可を受け、成年者と同一の行為能力を有する場合は、未成年者であっても宅建士の登録を受けることができます。
Answer2
【解説】事務禁止処分を受けたときは、宅建士証を提出しなければなりませんが、その提出先は宅建士証を発行した知事(本問の場合は甲県知事)です。
植杉 伸介
宅建士・行政書士・マンション管理士、管理業務主任者試験などの講師を30年以上務める。著書に『マンガはじめて建物区分所有法 改訂版』(住宅新報出版)、『ケータイ宅建士 2022』(三省堂)などがあるほか、多くの問題集の作成に携わり、受験勉強のノウハウを提供している。