宅建士講座
2023.06.14
宅建士試験合格のコツ

Vol.51 宅建業法
~重要事項の説明~


重要事項の説明は、宅建士が担当する最も重要な職務です。重要事項の説明に関する宅建業法の規制内容は、宅建士である以上必ず知っておかなければならない知識です。宅建試験は宅建士になるための試験ですから、本試験において重要事項の説明に関する問題は、毎年3問程度出題されています。

重要事項の説明

1. 重要事項の説明義務

重要事項の説明は、次のような方法で行われます。

説明の相手方物件を取得または借りようとする者(売主・貸主には説明不要)。なお、交換契約の媒介・代理を行った場合は、契約両当事者に説明する
説明の時期契約成立前
説明の場所特に制限はない
説明義務者業者(説明を担当するのは宅建士だが、説明義務を負うのは業者であり、業者が宅建士を使って説明させなければならない)
説明の方法書面を交付して ② 書面への宅建士の記名(会社名ではない) ③ 宅建士による説明(専任でなくともよい) ④ 宅建士証の提示(相手からの請求がなくとも提示する必要がある)

たとえば、宅建業者Aが売主となる契約で、他の業者Bが媒介・代理をした場合は、売主業者Aと媒介・代理業者Bの両方が、説明義務を負うことになることに注意。ただし、この場合でも、Aの宅建士とBの宅建士が同じ説明を行う必要はなく、どちらかの宅建士が代表して1回説明すればよいとされています(重要事項の説明書面には、両方の宅建士の記名が必要)。

取引の相手方が宅建業者である場合は、宅建士証を提示したうえでの宅建士による説明をする必要はなく、重要事項説明書を交付するだけでよいことになっています。

重要事項の説明は、対面で行うのが原則ですが、パソコン等の端末を利用して対面と同様に質疑応答が行えるなどの一定の要件を満たしていれば、テレビ会議等のITを活用して重要事項の説明(IT重説)をすることが認められています。

<IT重説の実施要件>

①相手方が映像を視認でき、音声を双方向でやりとりできるIT環境での実施
②重要事項説明書及び添付書類の事前送付
③説明開始前に相手方の重要事項説明書等の準備とIT環境の確認
④宅建士証を相手方が視認できたことの画面上での確認

出典:国土交通省「ITを活用した重要事項説明実施マニュアル」より抜粋・編集
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001397149.pdf

2. 説明の内容

重要事項として説明すべき内容(説明事項)は、取引態様、物件の種類などによって細かく定められており、すべてを暗記することは不可能ですし、その必要もありません。しかし、説明事項に関する問題は本試験で必ず出題されますので、何らかの対策は必要です。受験対策は、次のように行うとよいでしょう。

まずは、テキストに記載されている説明事項全体にひととおり目を通します。この段階で意識的に暗記しようとする必要はありません。それよりも、書かれている内容を具体例に置き換えるなどして、内容を具体的にイメージしながら目を通すことのほうが大切です。

次に、過去問集で、重要事項の説明に関する過去問を解きます。過去問を解くときは、テキストで目を通した部分を思い出そうとするのではなく、それぞれの問題ごとに、自分が買主や借主になったつもりで正誤を考えてください。

幸いなことに宅建試験は4肢択一式で出題されます。4つの選択肢を比較して、正解から遠いものを順に消していけばよいのです。重要事項の説明対象でないものを問う問題であれば、自分が宅地・建物の購入者になったつもりで、重要と思われる事項から消していき、最後に残ったものが正解と考えるのです。このようにして解いていけば、覚えてない知識が出題されても、案外うまく対処できるはずです。過去問を解くことによって、このような訓練を繰り返せば、覚えていなくてもほとんど正解できるようになります。

ただし、自分の感覚では重要だと思ったのに重要事項の説明対象に含まれていなかったり、逆に、重要ではないと思ったのに重要事項の説明対象に含まれているものが出てくることがあります。そのように、自分の感覚で問題を解いてみて間違えた部分は、最優先で覚える必要があります。

たとえば、(1)代金・交換差金・借賃の額と(2)登記・引渡しの時期、などです。常識的な感覚では、買主等にとって重要な情報であり、説明事項に含まれそうに思うところです。ところが、説明不要とされています。重要事項の説明は契約締結前に行いますが、代金・借賃の額や登記・引渡しの時期などは、これから交渉して、最終的に契約で決めることです。契約締結前の重要事項の説明を行う時点で、客観的に説明すべき問題ではないのです。また、代金額等がまったく示されずに、契約交渉に入ることはあり得ないことであり、ある意味では法律で説明義務を課す以前の問題ともいえるのです。

このように、問題を解いてみて間違えた部分だけを覚えるのであれば、分量的にもそれほど大変ではないと思います。また、覚え方としても非常に効率的です。本試験に出題され、しかも解答の分かれ目になるような部分を優先的に覚えることになるからです。

問題を解いてみよう!

論点の確認と
知識の定着を
  • 【Q1】宅地建物取引業者である売主は、他の宅地建物取引業者に媒介を依頼して宅地の売買契約を締結する場合、重要事項説明の義務を負わない。(R1 問41)
  • 【Q2】建物の売買の媒介における重要事項の説明において、登記された権利の種類および内容については説明したが、移転登記の申請の時期については説明しなかった場合、宅地建物取引業法の規定に違反しない。(H22 問36)

ic_kaisetsuこう考えよう!<解答と解き方>

Answer1
×

【解説】宅建業者である売主も、自ら売買という宅地建物取引業に該当する行為をしている以上、他の宅建業者に媒介を依頼していたとしても、宅建業法上の重要事項説明義務を負います。

Answer2

【解説】移転登記の申請時期は、重要事項の説明義務の対象ではありません。なお、取引する物件について登記された権利の種類および内容は、重要事項の説明義務の対象です。


植杉 伸介

植杉 伸介

宅建士・行政書士・マンション管理士、管理業務主任者試験などの講師を35年以上務める。著書に『マンガはじめてマンション管理士・管理業務主任者』(住宅新報出版)、『ケータイ宅建士 2022』(三省堂)などがあるほか、多くの問題集の作成に携わり、受験勉強のノウハウを提供している。