都市計画は、都市計画法が用意している都市計画のメニューの中から、その区域にふさわしいものをピックアップしてあてはめるという方法で行われます。都市計画の内容とは、そのメニューのことです。本試験では、ほぼ毎年1問出題されています。
都市計画の内容
(1)区域区分
具体的な都市計画のメニューのうち、最も重要といってもいいのが区域区分です。区域区分とは、都市計画区域内を市街化区域と市街化調整区域に区分することをいいます。
市街化区域 | すでに市街地を形成している区域およびおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域 |
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市街化調整区域 | 市街化を抑制すべき区域 |
都市計画区域のすべてを市街地にしてしまうと住みにくい都市となるので、農業中心の場所などを市街化調整区域として、市街化すべき場所とそうでない場所を線引きして歯止めをかけることにしたのです。要するに、市街化区域は市街地にする区域であり、市街化調整区域は逆に市街地にしない区域です。この定義を一言一句完璧に丸暗記する必要はありません。「すでに市街地」「10年以内」「抑制」などのキーワードを押さえておけば大丈夫です。
市街化区域と市街化調整区域は、それぞれの区域の具体的なイメージを持つようにしましょう。市街化区域は、文字どおり市街地というイメージで、市街化調整区域は農村地帯というイメージです。市街化調整区域は、市街化を抑制するといっても、都市計画区域の一部ですから、だれも住まない山の中ではありません。
区域区分は、すべての都市計画区域で定められるわけではありません。地方の実状に合わせて、区域区分を定めないこともできます。ただし、三大都市圏などの大都市に係る都市計画区域については、必ず区域区分が定められることになっています。
なお、区域区分を行わないこととした都市計画区域のことを非線引き区域または非線引き都市計画区域ということがあります。区域区分は、都市計画区域内に線を引いて、市街化区域と市街化調整区域に区分する作業だからです。
区域区分により、日本の国土は下図のように区分されることになります。
(2)地域地区
区域区分よりもっと具体的な都市計画のメニューとして、地域地区と呼ばれるものがあります。以下、重要なものに絞ってみていきます。
1. 用途地域
用途地域とは、建築物の用途に着目して地域の区分を定め、建築基準法により、それぞれの地域にふさわしい形態制限等を行う地域のことをいい、下記の表にあるように13種類あります。
この13種類については、定義の中身も押さえておいてください。ただし、一言一句正確に暗記する必要はありません。他の区域と区別できるように、キーワードを押さえておけば大丈夫です。たとえば、第一種低層住居専用地域と第二種低層住居専用地域の違いは、冒頭に「主として」という言葉が入るかどうかだけが違っています。
そして、都市計画区域のうち、市街化区域には必ず用途地域を定める必要がありますが、市街化調整区域には原則として用途地域を定めません。この知識は非常に重要です。
市街化区域は、市街化を図る区域なので、建物がたくさん建築されます。用途地域を決めておかないと、閑静な住宅街のど真ん中にキャバレーが建築されるなどということが起きてしまいます。それゆえ、必ず用途地域を定めることにしているのです。
これに対し、市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域なので、基本的には建物を建築しない場所です。建物を建築しない場所なのに、建物の用途に関する用途地域を定めるのは矛盾しています。したがって、原則として用途地域を定めないのです。
非線引き区域および準都市計画区域は、必要に応じて用途地域を定めることができます。
問題を解いてみよう!
知識の定着を
- 【Q1】市街化区域については、少なくとも用途地域を定めるものとし、市街化調整区域については、原則として用途地域を定めないものとする。(H30 問16)
- 【Q2】第二種住居地域は、中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域とされている。(R2・10月 問15)
こう考えよう!<解答と解き方>
Answer1
【解説】市街化区域は、市街化を図る区域であり、建物がたくさん建築されるので、必ず用途地域を定めることにしています。これに対し、市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域であり、基本的には建物を建築しない場所なので、建物の用途に関する用途地域を定めるのは矛盾しています。したがって、原則として用途地域を定めません。
Answer2
【解説】第二種住居地域は、主として住居の環境を保護するため定める地域です。本問の記述内容は、第二種住居地域ではなく、第一種中高層住居専用地域に関するものです。
植杉 伸介
宅建士・行政書士・マンション管理士、管理業務主任者試験などの講師を35年以上務める。著書に『マンガはじめてマンション管理士・管理業務主任者』(住宅新報出版)、『ケータイ宅建士 2022』(三省堂)などがあるほか、多くの問題集の作成に携わり、受験勉強のノウハウを提供している。