建築基準法からは、毎年2問出題されます。建築基準法には建築物に対する種々の規制が定められていますが、そのうち建ぺい率に関する規制は出題頻度が高めですので(選択肢の1つとして出題されるパターンが多いですが)、しっかりとポイントを押さえておきたいところです。
1. 建ぺい率の制限
建ぺい率とは、建築物の建築面積の敷地面積に対する割合のことです。日照、通風、防災等の市街地の環境維持のために建ぺい率の制限がなされます。
たとえば、建ぺい率が10分の6という場合、100㎡の敷地であれば、そのうち60㎡までしか建築できないことになります。
建ぺい率の具体的な数字は、次の表のようになります。
前記表の「原則」欄に書かれている、各用途地域ごとの都市計画で定められる数値を暗記する必要はありません(ただし、商業地域の10分の8という数値だけは覚えてください)。
角地の緩和と防火地域内の耐火建築物等に関する緩和の部分が重要です。たとえば、都市計画で定められた建ぺい率が10分の6であっても、角地であれば10分の7に緩和されるのです。
なお、角地の緩和は、「特定行政庁の指定」がある角地に限られることに注意してください。また、耐火建築物等に関する緩和も、防火地域と準防火地域で異なっています。都市計画で指定された建ぺい率が10分の8の地域において耐火建築物等であることにより10の2がプラスされて「制限なし」となるのは防火地域だけであり、準防火地域の場合は10分の1がプラスされるだけです。
さらに、次の場合には、建ぺい率の制限がありません。つまり、敷地いっぱいに建築できます。
①巡査派出所、公衆便所、公共用歩廊等
②公園、広場、道路、川等のうちにある建築物で、特定行政庁が安全上、防火上、衛生上支障がないと認めて、あらかじめ建築審査会の同意を得て許可したもの
2. 敷地が建ぺい率の異なる区域にわたる場合
敷地が建ぺい率の異なる区域にわたるときは、各地域の建ぺい率に、各地域の面積割合を乗じた数値を合算します。
具体的には、次のように計算します。
・ 当該敷地は、特定行政庁が指定した角地であるものとする。
・ 防火地域の指定はないものとする。
まず、それぞれの地域の都市計画で指定された建ぺい率は、近隣商業地域は10分の8、準住居地域は10分の6ですが、角地加算により、近隣商業地域について10分の9、準住居地域について10分の7となることがわかります。この場合、準住居地域の部分も角地加算が適用される点に注意してください。全体として1つの敷地として利用する以上、準住居地域の部分も含めて敷地全体が角地であるといえるからです。
その結果、この敷地の建ぺい率の上限は次のようになります。
問題を解いてみよう!
知識の定着を
- 【Q1】街区の角にある敷地またはこれに準ずる敷地内にある建築物の建蔽率については、特定行政庁の指定がなくとも都市計画において定められた建蔽率の数値に10分の1を加えた数値が限度となる。(H24 問19)
- 【Q2】都市計画により建蔽率の限度が10分の8と定められている準工業地域においては、防火地域内にある耐火建築物については、建築基準法第53条第1項から第5項までの規定に基づく建蔽率に関する制限は適用されない。(R2(12月) 問18)
こう考えよう!<解答と解き方>
Answer1
【解説】建蔽率に関する角地の緩和(10分の1プラス)は、特定行政庁の指定がある場合に限り、適用されます。
Answer2
【解説】都市計画で定められた建蔽率の限度が10分の8である地域においては、防火地域内の耐火建築物等に該当するときは、建蔽率は制限なしとなります。
植杉 伸介
宅建士・行政書士・マンション管理士、管理業務主任者試験などの講師を35年以上務める。著書に『マンガはじめてマンション管理士・管理業務主任者』(住宅新報出版)、『ケータイ宅建士 2023』(三省堂)などがあるほか、多くの問題集の作成に携わり、受験勉強のノウハウを提供している。