宅建士講座
2023.10.13
宅建士試験合格のコツ

Vol.55 宅地造成等規制法
~宅地造成工事規制区域~


宅地造成等規制法からは、毎年1問出題されます。内容的にはそれほど難しくはありませんし、出題されやすい論点も割合に限られています。過去問をしっかりと押さえておけば、宅地造成等規制法の問題を得点源にすることも可能です。

宅地造成工事規制区域

1. 宅地造成工事規制区域の指定

宅地造成工事規制区域(以下「規制区域」)とは、宅地造成に伴い災害が生ずるおそれが大きい市街地または市街地となろうとする土地の区域であって、宅地造成に関する工事について規制を行う必要があるものについて、都道府県知事(指定都市等にあっては指定都市等の長。以下同じ)が関係市町村長の意見を聴いて指定したものをいいます。

注:規制区域は、都市計画区域の内外を問わず指定されます。

2.宅地造成工事の許可

規制区域内で宅地造成工事を行おうとするときは、造成主(宅地造成に関する工事の請負契約の注文者または請負契約によらず、みずからその工事をする者をいいます)は、その工事着手前に、都道府県知事の許可を受けなければなりません。ただし、都市計画法の開発許可を受けた宅地造成工事については、許可は不要です。

許可が必要な「宅地造成」工事とは、次のものをいいます。

(1)宅地とは

「宅地」とは、次の土地をいいます。

「宅地」とは

上記①②以外の土地はすべて「宅地」として扱われるので、かなり幅広いものが含まれます。青空駐車場やゴルフ場も宅地ですし、私立学校、私営運動場、私営墓地なども国、地方公共団体が管理するものではないので宅地です。

(2)宅地造成とは

「宅地造成」とは、宅地以外の土地を宅地にするため、または宅地において行う、次のいずれかの土地の形質の変更(宅地を宅地以外の土地にするために行うものを除く)をいいます。

① 高さ2mを超える崖が生じる切土の場合
② 高さ1mを超える崖が生じる盛土の場合
③ 切土と盛土を同時に行う場合は、盛土部分に1m以下の崖ができ、かつ、切土と盛土で高さ2mを超える崖が生じる場合
④ (①~③に該当しなくても)盛土、切土を行う土地の面積が500㎡を超える場合

宅地造成とは

3. 届出制

下記の行為をする者は、一定期間内に都道府県知事に届け出なければなりません。

届出の例

①の届け出は、宅地造成工事を開始した時点では、その区域が規制区域に指定されておらず、工事の途中でその区域が規制区域に指定された場合です。

3つの届出のうち、①と③は事後届出ですが、②は事前の届出を要求している点に注意してください。また、②の届出は、「除却」工事を行う場合であることに注意してください。がけ崩れ防止施設である擁壁や排水施設を除却することは危険だからです。「設置」工事の場合は届出不要です。

4. 宅地の保全義務等

①規制区域内の宅地の所有者・管理者・占有者には、宅地を常時安全な状態に維持するよう努めなければならない義務があります。
②都道府県知事は、宅地造成に伴う災害の防止のため必要があると認めるときは、所有者・管理者・占有者に対して、擁壁または排水施設の設置または改造等の防災上必要な措置をとることを勧告することができます。
③さらに、都道府県知事は、擁壁や排水施設が不完全なため災害が発生するおそれが大きいと認められる場合は、所有者・管理者・占有者に対して、相当の猶予期限を付けて、擁壁または排水施設の設置等を行うよう命ずることもできます。

問題を解いてみよう!

論点の確認と
知識の定着を
  • 【Q1】宅地造成工事規制区域内において、宅地を宅地以外の土地にするために行われる切土であって、当該切土をする土地の面積が600㎡で、かつ、高さ3mの崖を生ずることとなるものに関する工事については、都道府県知事の許可は必要ない。(H26 問19)
  • 【Q2】宅地造成工事規制区域内の宅地において、地表水等を排除するための排水施設の除却工事を行おうとする者は、宅地造成に関する工事の許可を受けた場合を除き、工事に着手する日までにその旨を都道府県知事に届け出なければならない。(H22 問20)

ic_kaisetsuこう考えよう!<解答と解き方>

Answer1

【解説】造成後に宅地となる場合にだけ許可の対象となります。「宅地以外→宅地」「宅地→宅地」とする造成工事は許可の対象ですが、「宅地→宅地以外」「宅地以外→宅地以外」の場合は許可不要です。

Answer2
×

【解説】規制区域内で排水施設の除却工事を行おうとする者は、工事に着手する日の「14日前」までに、その旨を都道府県知事に届け出なければなりません。


植杉 伸介

植杉 伸介

宅建士・行政書士・マンション管理士、管理業務主任者試験などの講師を35年以上務める。著書に『マンガはじめてマンション管理士・管理業務主任者』(住宅新報出版)、『ケータイ宅建士 2023』(三省堂)などがあるほか、多くの問題集の作成に携わり、受験勉強のノウハウを提供している。