宅建士講座
2023.11.14
宅建士試験合格のコツ

Vol.56 権利関係
~民法(代理)~


代理の問題は、3年に2回ぐらいのペースで出題されており、出題頻度が高いテーマの1つです。代理についてはまんべんなく全体を押さえておくべきですが、今回は、代理に関する論点のうち無権代理(表見代理を含む)以外の部分に絞って学習していきます。

1. 顕名

代理人が本人のために代理行為を行うためには、相手方に本人のために行うこと(A代理人Bという表示)を示さなければなりません(顕名)。顕名を欠いて代理行為が行われた場合は、次のようになります。

顕名の表

2. 代理行為における意思表示の瑕疵等

代理行為における意思表示の問題(詐欺、強迫、錯誤、善意・悪意、過失など)は、代理人を基準にして判断するのが原則です(たとえば、代理人が詐欺に遭った場合、本人は売買契約を取り消せる)。ただし、特定の法律行為をすることを委託された代理人がその行為をしたときは、本人は、自分が悪意であったり、過失があったりした場合、代理人の善意や無過失に基づく主張をすることができません。

3. 代理人の行為能力

制限行為能力者が代理人としてした行為は、制限行為能力を理由として取り消すことができません。

4. 代理権の消滅

有効に代理権が存在していても、その後下記のような事情が生じた場合は、自動的に代理権が消滅します。

代理権の消滅の表

ゴロ合わせ

「獅(死亡)子(死亡)は(破産)後(後見開始)方(法定代理)」

代理権の消滅の表

ゴロ合わせ

「し(死亡)は(破産)し(死亡)は(破産)の後(後見開始)任(任意代理)」

5. 自己契約・双方代理および利益相反行為の禁止

自己契約(たとえば、売主Aから土地の売買代理権を与えられたBが自ら買主となり売買契約を締結)と双方代理(たとえば、売主、買主双方の代理人となって契約を締結)は、代理権を有しない者がした行為(無権代理行為)とみなされます(無権代理行為は無効)。ただし、①本人があらかじめ許諾した場合、②債務を履行する行為を行う場合、には例外的に有効な代理行為となります。

また、代理人と本人の利益が相反する行為も、本人があらかじめ許諾した場合を除き、同様に無権代理行為とみなされます。

6. 代理権の濫用

代理権の濫用とは、代理人が代理権の範囲内の行為をしたが、自己または第三者の利益を図る目的で行為をした場合(たとえば、土地売却を依頼された代理人が、売買代金を着服する意図で土地売却の代理行為をした場合)をいいます。

この場合も、代理権の範囲内の行為である以上、有効な代理行為となるのが原則ですが、代理人の目的について相手方が悪意または善意有過失であるときは、無権代理行為とみなされます。

7. 復代理

(1) 復代理とは

復代理とは、代理人が自分の権限の範囲内の行為を行わせるため、さらに代理人を選任することをいいます。

(2) 復代理人の権限の範囲

復代理人は代理人によって選任されるものであり、代理人の代理権が復代理人の権限の根拠ですから、復代理人の代理権が代理人の代理権を超えることはありません。

(3) 復代理人を選任できる場合と代理人の責任

復代理の表

問題を解いてみよう!

論点の確認と
知識の定着を
  • 【Q1】代理人が相手方に対してした意思表示の効力が意思の不存在、錯誤、詐欺、強迫またはある事情を知っていたこともしくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、本人の選択に従い、本人または代理人のいずれかについて決する。 (H26 問2)
  • 【Q2】AがBに対して、A所有の甲土地を売却する代理権を付与した。Bが自己または第三者の利益を図る目的で、Aの代理人として甲土地をDに売却した場合、Dがその目的を知り、または知ることができたときは、Bの代理行為は無権代理とみなされる。 (R2(12月) 問2)

ic_kaisetsuこう考えよう!<解答と解き方>

Answer1
×

【解説】代理行為における意思表示の問題は、原則として、代理人を基準として判断されます。代理人と本人のどちらを基準にするかを、本人が選択できるわけではありません。

Answer2

【解説】代理権が濫用されても、原則としてその代理行為は有効ですが、相手方が代理人の濫用目的について悪意または善意有過失の場合は無権代理行為とみなされます。


植杉 伸介

植杉 伸介

宅建士・行政書士・マンション管理士、管理業務主任者試験などの講師を35年以上務める。著書に『マンガはじめてマンション管理士・管理業務主任者』(住宅新報出版)、『ケータイ宅建士 2023』(三省堂)などがあるほか、多くの問題集の作成に携わり、受験勉強のノウハウを提供している。