宅建士講座
2020.06.12

Vol.15 意思表示
権利関係1~民法1~


権利関係の学習の中心は民法です。民法は大規模な法改正(令和2年4月1日施行)があり、改正内容に基づいた出題は本年度試験が初めてとなるので、本年度の受験対策としては、改正点を押さえることが重要になってきます。それゆえ、この連載においても、重要な改正点を中心テーマとして試験合格のコツを示していきたいと思っています。今月号は「意思表示」を学習します。

意思表示

(1)詐欺

詐欺には、相手方が詐欺である場合と第三者(契約相手以外)が詐欺である場合の2つのタイプがあります。

詐欺による意思表示の効果取り消すことができる
第三者との関係取消し前の善意無過失の第三者には取消しを対抗できない
第三者による詐欺相手方が善意無過失の場合は取り消すことができない

ポイント第三者が関係する場合について、法改正前は過失があっても善意であればよいとされていたのが、改正法では無過失も要求されるようになった。

※注意を払っていたが知ることができなかった状態であること。法律上、ある事実を知らないことを「善意」、知っていることを「悪意」といい、「過失」とは不注意、落ち度を指す。

(2) 強迫

強迫にも、「相手方の強迫」と「第三者の強迫」の2つのタイプがありますが、強迫された場合は、第三者が善意でも悪意でも取消しを対抗できます。

強迫による意思表示の効果取り消すことができる
第三者との関係善意無過失の第三者にも取消しを対抗できる
第三者による強迫相手方が善意無過失の場合も取り消すことができる

(3) 心裡留保

心裡留保とは、冗談で契約するなど、当事者の一方がわざと真意と異なる意思表示をすることをいいます。民法では、原則として心裡留保による意思表示は有効としていますが、相手方が悪意もしくは善意有過失の場合は、無効となります。

心裡留保による意思表示の効果原則:有効(表示どおりの効果が生ずる)
例外:無効(相手方が悪意または善意有過失の場合)
第三者との関係善意の第三者に対しては無効を対抗できない

ポイント善意(無過失までは要求されていないことに注意)の第三者を保護することが、改正法で条文化された(改正前は規定なし)。

(4) (通謀)虚偽表示

本人が相手方と通謀(共謀)して虚偽の意思表示をすることを(通謀)虚偽表示といい、善意の第三者には、無効を対抗できません。

虚偽表示による意思表示の効果無効
第三者との関係善意の第三者に対しては無効を対抗できない

ポイント第三者は善意であればよく、無過失までは要求されていないことに注意。

(5) 錯誤

①原則

錯誤とは、勘違いのことをいい、以下の2つの条件を満たせば取り消せますが、善意無過失の第三者には取消しを対抗できません。

錯誤による意思表示の効果①意思表示が重要な錯誤に基づくこと、②重大な過失(重過失)がないことの2つの要件を満たすときは、取り消すことができる
第三者との関係善意無過失の第三者には取消しを対抗できない

ポイント改正前は錯誤による意思表示は「無効」とされていたのが、改正法では「取消し」となった。また、改正前は善意の第三者にも対抗できるとされていたのが、善意無過失の第三者には対抗できないことになった。

②行為基礎事情(動機)の錯誤

行為基礎事情(動機)の錯誤とは、意思表示をする際の動機の部分における錯誤をいいます。例えば、今なら課税されないと思って土地を売却する意思表示をしたが、実は課税される取引であったような場合です。このような錯誤は外部からはわかりにくいので、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されているときに限り、取り消すことができます。

③重過失があっても取り消せる例外

法改正により新設された部分です。錯誤による意思表示をした者に重過失があっても、下記のいずれかの場合は例外的に取り消すことができます。

  • ①相手方が表意者に錯誤があることを知り、または重過失によって知らなかったとき
  • ②相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき

過去問を解いてみよう!

論点の確認と
知識の定着を
  • 【Q1】A所有の甲土地につき、AとBとの間で売買契約が締結された。Bは、第三者であるCから甲土地がリゾート開発される地域内になるとだまされて売買契約を締結した場合、AがCによる詐欺の事実を知っていたとしても、Bは本件売買契約を詐欺を理由に取り消すことはできない。(H23年 問1)
  • 【Q2】AがBに甲土地を売却し、Bが所有権移転登記を備えた。Aの売却の意思表示には、意思を欠く錯誤があり、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものである場合、Aに重大な過失があったとしても、AはBに対して、錯誤による意思表示の取消しを主張して、甲土地の返還を請求することができる。(R元年 問2改題)

ic_kaisetsuこう考えよう!<解答と解き方>

Answer1
×

【解説】第三者による詐欺の場合、相手方が善意無過失のときは取り消すことができないが、相手方が悪意のときは取り消すことができる。

Answer2
×

【解説】 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、原則として意思表示の取消しをすることができない。


植杉 伸介

早稲田大学法学部卒業。宅建士、行政書士、マンション管理士・管理業務主任者試験等の講師として30年以上の実績がある。『マンガはじめて建物区分所有法 改訂版』(住宅新報出版)など、これまでに多くのテキストや問題集の作成に携わり、受験勉強のノウハウを提供している。