宅建士講座
2024.04.12
宅建士試験合格のコツ

Vol.61 権利関係
~民法(保証)~


過去の本試験を20年くらいさかのぼると、保証に関する問題は2年に1回弱の頻度で出題されています。しかしここ3年間は、保証からの出題がありません。それゆえ、本年度の試験では、保証に関する問題が出題される可能性が高いと思われます。今回は、保証に関する重要ポイントを押さえます。

「保証」に関する重要ポイント

1.保証契約

保証債務は、債権者と保証人との契約によって成立し、この契約は主たる債務者の意思に反しても締結できます。ただし、保証契約は、書面または電磁的記録によってなされなければ効力を生じません。

2.保証債務の性質

(1)随伴性

主たる債務が債権譲渡などにより移転したときは、これに伴って保証債務も移転します。したがって、主たる債務者に対して債権譲渡の通知をすれば、保証人に対しても債権譲渡を対抗できます。

(2)付従性

主たる債務者に生じた事由の効力は、原則として保証人にも及びます。逆に、保証人に生じた事由は、原則として主たる債務者には及びません(ただし、保証人が弁済または弁済に準じる行為を行った場合は、その効果が主たる債務者にも及ぶ)。

①成立における付従性主債務が不成立→保証債務も不成立
主債務の目的・態様≧保証債務の目的・態様
②存続における付従性主債務者が主張できる抗弁→保証人も主張できる
主債務者が相殺権等を有する→その限度で履行を拒める
③消滅における付従性主債務が消滅 → 保証債務も消滅

<①について>

成立における付従性

保証債務の目的・態様が主たる債務より重いときは、主たる債務の限度に減縮されます。なお、主たる債務を後から重くした場合は、保証人にその効果は及びません。

<②について>

存続における付従性

BがAに対し50万円の反対債権を有するとき、保証人Cは、Bの相殺権の限度で保証債務の履行を拒むことができます。

存続における付従性

しかし、保証人CがAに対して50万の金銭債権を有するときに、BがCの相殺権の限度で主債務の履行を拒むことはできません。

(3) 補充性

① 催告の抗弁権

債権者がいきなり保証人に請求してきたときは、保証人は、まず、主たる債務者に請求せよと主張することができます。

② 検索の抗弁権

債権者がまず主たる債務者に請求したうえで、保証人に請求してきた場合でも、保証人は、主たる債務者に弁済の資力があり、かつ、強制執行が容易にできることを証明して、まず主たる債務者の財産に強制執行せよと主張することができます。

3.分別の利益

共同保証の場合(1つの債務のために複数の保証人がつく場合)の各保証人は、債権額を保証人の頭数で割った額のみの保証債務を負担します。

4.連帯保証

連帯保証も保証の1つであるから、ここまでの保証に関する説明が、原則として、そのまま当てはまります。ただし、次の2点のみ、普通の保証と異なります。

①連帯保証人には、催告の抗弁権・検索の抗弁権がない。
②連帯保証人には、分別の利益がない。

問題を解いてみよう!

  • 【Q1】主たる債務の目的が保証契約の締結後に加重されたときは、保証人の負担も加重され、主たる債務者が時効の利益を放棄すれば、その効力は連帯保証人に及ぶ。(R2 問7)
  • 【Q2】AがBに1,000万円を貸し付け、Cが連帯保証人となった。Cは、Aからの請求に対して、自分は保証人だから、まず主たる債務者であるBに対して請求するよう主張することができる。(H10 問4)

ic_kaisetsuこう考えよう!<解答と解説>

Answer1
×

【解説】主たる債務の目的が保証契約締結後に加重されたとしても、その効力は保証人には及びません。また、時効の援用・放棄は、それぞれの当事者の意思に任せるべきことなので、主たる債務者が時効利益を放棄しても、その効力は保証人には及びません。

Answer2
×

【解説】連帯保証人には、催告の抗弁権がありません。したがって、Cは、Aに対して、まずBに請求するよう主張することはできません。


植杉 伸介

植杉 伸介

宅建士・行政書士・マンション管理士、管理業務主任者試験などの講師を35年以上務める。著書に『マンガはじめてマンション管理士・管理業務主任者』(住宅新報出版)、『ケータイ宅建士 2024』(三省堂)などがあるほか、多くの問題集の作成に携わり、受験勉強のノウハウを提供している。