宅建士講座
2024.06.14
宅建士試験合格のコツ

Vol.63 権利関係
~不動産登記法(申請手続等)~


本試験では、不動産登記法から毎年1問出題されます。細かい手続きが問われることもあり、難易度は高めですが、正解率5割以上のレベルは確保したいところです。本年は、登記の申請義務について重要な法改正があったので、その点も押さえておく必要があります。

️「登記の申請」に関する重要ポイント

①登記事項証明書の交付等

だれでも、登記官に対し、手数料を納付して、登記記録に記録されている事項の全部または一部を証明した書面(登記事項証明書)または記録されている事項の概要を記載した書面(登記事項要約書)の交付を請求することができます。登記事項証明書・登記事項要約書の交付申請をするに当たって、当該不動産に対して利害関係を有することや、正当な理由があることなどは必要ありません。

また、だれでも、登記官に対し、手数料を納付して、地図等の写しの交付の請求および地図等の閲覧を請求することができます。

②登記申請の手続き

(1) 申請主義の原則

申請主義の原則とは、「当事者の申請または官公署の嘱託がない限り、登記官が勝手に登記すること(職権による登記という)はない」という原則をいいます。登記は自分の権利を守るために行うものなので、登記をするかどうかは本人の意思に任せてあるのです。

しかし、これには重要な例外があります。「表題登記」は、当事者からの申請がなくても、登記官の職権により登記することができます。不動産の物理的な現況を明らかにすることは、社会全体から見ても必要なことで、本人だけの問題ではないからです。

(2) 共同申請の原則

共同申請の原則とは、登記の申請は登記権利者と登記義務者とが共同して行わなければならないという原則をいいます。どちらかが単独で申請するよりは、共同で申請させたほうが、真実に合致した正しい登記がなされるであろうという考え方に基づきます。

登記義務者とは、権利に関する登記をすることにより、登記上、直接に不利益を受ける登記名義人を指します。これに対し、登記権利者とは、登記上、直接に利益を受ける者を指します。たとえば、売買により土地の所有権を移転する登記を申請する場合、売主が登記義務者、買主が登記権利者となります。

共同申請の原則にも下記の例外があります。下記の場合は、単独で申請ができます。

①相続による登記、②所有権保存登記、③表示に関する登記、④判決による登記、⑤登記名義人の表示(住所、氏名等)に関する変更の登記、⑥仮登記義務者の承諾があるとき、または仮登記を命ずる裁判所の処分があるときの仮登記

③登記の申請義務

(1) 表示に関する登記の申請義務

表題登記は登記官が職権ですることができますが、登記官が表題登記の必要性をすべて把握することは困難です。それゆえ、表題登記については、所有者等に登記の申請義務を課しています。

たとえば、埋め立てによって新たに生じた土地の所有者や、新築した建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から1カ月以内に、表題登記を申請しなければなりません。そのほか、地目・地積の変更や、増築による床面積の変更などがあった場合も同様に、変更が生じた日から1カ月以内に、変更の登記を申請する必要があります。

(2) 権利に関する登記の申請義務

権利に関する登記については、原則として申請義務がありません。たとえば、新築建物の所有権を取得した者は、前述したとおり表題登記の申請はしなければなりませんが、所有権保存登記は申請しなくてもよいのです。

しかし、これには重要な例外があります。相続による権利取得等については、登記の申請義務が課されています。この点は、法改正により令和6年4月1日から施行されることになったものなので、本年の試験に出題される可能性が高いと思われます。

①所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、その相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、所有権を取得したことを知った日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。

②相続開始後に法定相続分の登記等をした場合(①の登記を履行済みの場合)であっても、その後、遺産分割があり、その遺産分割によって相続分を超えて所有権を取得した者は、遺産分割の日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。

正当な理由なく上記の登記申請を怠った者は、10万円以下の過料に処せられます。

問題を解いてみよう!

  • 【Q1】新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権取得の日から1月以内に、所有権の保存の登記を申請しなければならない。(H28 問14)
  • 【Q2】相続により不動産の所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知った日から3年以内に、所有権の移転の登記をしなければならない。(予想問題)

ic_kaisetsuこう考えよう!<解答と解説>

Answer1
×

【解説】ややひっかけ的な問題です。1カ月以内に申請する必要があるのは、表題登記であり、所有権保存登記ではありません。

Answer2
×

【解説】3年の期間制限は、相続の開始があったことを知っただけでなく、所有権を取得したことを知った日からカウントします。相続開始を知ったからといって、遺産に当該不動産があることまで知るとは限らないので、その段階で登記義務を課すことはできないからです。


植杉 伸介

植杉 伸介

宅建士・行政書士・マンション管理士、管理業務主任者試験などの講師を35年以上務める。著書に『マンガはじめてマンション管理士・管理業務主任者』(住宅新報出版)、『ケータイ宅建士 2024』(三省堂)などがあるほか、多くの問題集の作成に携わり、受験勉強のノウハウを提供している。