例年、本試験では、借地借家法から2問(借地1問、借家1問)出題されます。借地借家法は、借主を保護するために定められた法律です。「借主保護」という観点を忘れずに、具体的な規定の中身を学習することが大切です。ぜひ、借地借家法を得点源にしてください。
❶借家権(建物の賃貸借)の存続期間
借家期間は、原則として自由に定めることができます。そもそも期間を定めないこともできるし、50年を超える期間を定めることもできます。ただし、あまり短すぎる契約は適当ではないので、1年未満の定めをしたときは、無効となり、期間の定めがないものとみなされます。
1年未満の定め → 期間の定めなし
1年以上の定め → 契約どおりの期間
期間の定めなし → 期間の定めなし
❷借家契約の更新
(1) 期間の定めがある場合
借家期間が満了する際に、当事者が合意すれば借家契約を更新できますが、合意がない場合でも次の場合は自動的に更新されます。
①賃貸人が、期間満了の1年前から6カ月前までの間に、正当事由に基づいた更新拒絶または賃貸借契約の条件の変更を認めなければ更新しない旨の通知をしなかった場合、前契約と同一条件で更新したものとみなされる。
②期間満了後、賃借人が建物の使用を継続し、これに対して賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときは、前契約と同一条件で更新したものとみなされる。
注意:自動更新の場合、更新後の存続期間は、期間の定めがないものとなります。
(2) 期間の定めがない場合
①解約申入れ
当事者は、いつでも解約の申入れをすることができますが、賃貸人から解約を申し入れる場合は、正当事由が必要であり、正当事由のある解約申入れが行われても、契約が終了するのは6カ月後となります。
これに対し、賃借人からの解約申入れには正当事由は不要です。また、賃借人からの解約申入れの場合は、申入れ後3カ月で契約が終了します。
②解約後の使用継続
正当事由のある解約申入れが行われ、契約が終了する場合でも、契約終了後も賃借人が建物の使用・収益を継続し、これに対して賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときは、前契約と同一条件で更新したものとみなされます。
❸造作買取請求権
賃借人が、賃貸人の同意を得て建物に付加した造作(畳、建具など)または賃貸人から買い受けた造作は、賃貸借が終了するときに、賃貸人に時価で買い取るべきことを請求できます。
❹居住用建物の賃借権の承継
居住用の建物の賃借人が、相続人なくして死亡した場合、婚姻届・養子縁組届は出していないけれども、賃借人と事実上の夫婦・養親子の関係にあった同居者は、賃借人の権利義務を承継することができます。
❺借家人に不利な特約の効力
借地借家法の規定により、賃借人に不利な特約を定めても、無効となります。ただし、例外として、造作買取請求権を認めないとする特約および内縁の妻等による居住用建物の賃借権の承継を認めないとする特約は、有効です。
❻定期借家権
更新がなく、確定期間によって借家契約が終了する借家権には、次の2種類があります。
定期建物賃貸借 | 一定期間を定めて建物の賃貸借をする場合において、書面または電磁的記録によって契約をするときに限り、契約の更新がない旨を定めることができる。 |
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取壊し予定建物の期限付き賃貸借 | 法令・契約により、一定期間経過後に建物取壊しが明らかな場合、建物取壊し時に借家契約が終了する旨の特約を、書面または電磁的記録により定めることができる。 |
[上記の定期建物賃貸借に関するポイント]
①定期建物賃貸借をしようとするときは、あらかじめ賃借人に対して、契約の更新がなく、期間の満了により契約が終了する旨を記載した書面を交付(賃借人の承諾があれば、電磁的方法により提供することもできる)して説明しなければならず、説明しなかったときは、更新がない旨の定めは無効となる。
②期間1年以上の契約の場合、賃貸人は、期間満了の1年前から6カ月前までの間に、賃借人に対して、期間満了により契約が終了する旨の通知をしなければ、その終了を対抗できない。ただし、この期間内に通知をし忘れても、その後賃貸人が通知をすることで、その日から6カ月後に賃貸借が終了する。
③居住用建物(床面積200㎡未満のものに限る)の定期建物賃貸借において、賃借人が転勤・療養・親族の介護等のやむを得ない事情で、自己の生活の本拠としての使用が困難になったときは、賃借人から1カ月の予告期間で中途解約することが認められている。
問題を解いてみよう!
- 【Q1】 Aは、その所有する甲建物をBに3年間賃貸する契約をした。AがBに対し、甲建物の賃貸借契約の期間満了の1年前に更新しない旨の通知をしていれば、AB間の賃貸借契約は期間満了によって当然に終了し、更新されない。(H29 問12)
- 【Q2】 定期借家契約は、公正証書によってしなければ、効力を生じない。(H15 問14)
こう考えよう!<解答と解説>
Answer1
【解説】賃貸人からの更新拒絶通知には正当事由が必要です。単に通知しただけでは、更新を阻止できません。
Answer2
【解説】書面または電磁的記録によって契約すればよく、公正証書を用いることまでは要求されていません。
植杉 伸介
宅建士・行政書士・マンション管理士、管理業務主任者試験などの講師を35年以上務める。著書に『マンガはじめてマンション管理士・管理業務主任者』(住宅新報出版)、『ケータイ宅建士 2024』(三省堂)などがあるほか、多くの問題集の作成に携わり、受験勉強のノウハウを提供している。