宅建業法は、免許制度の実施により業務の適正な運営と宅地建物の取引の公正を確保することを目的としています(宅建業法1条)。今回の学習内容は、免許制度に関する基本的な知識です。すでにご存じの内容かもしれませんが、もう一度基本に立ち返って、知識を再確認してください。
「免許制度」に関する重要ポイント
❶免許制度の種類
宅地建物取引業の免許には、都道府県知事免許と国土交通大臣免許とがありますが、両者の区別は、事務所の設置場所で決まります。
都道府県知事免許→1つの都道府県の区域内のみに事務所
国土交通大臣免許→2つ以上の都道府県の区域内に事務所
ここでいう「事務所」は、そこで宅建業を営んでいることが当然の前提となります。たとえば、本業が建設業の会社で、一部の支店のみで宅建業を営んでいる場合、建設業しか行っていない支店は宅建業法上の「事務所」ではありません。しかし、このような会社でも本店は、常に「事務所」として扱われます。
❷免許の効力
(1)場所的効力
免許の効力は、全国に及びます。知事免許であれ大臣免許であれ、日本全国で営業ができます。
(2)人的効力
個人の宅建業者が死亡したり、法人の宅建業者が合併で消滅した場合、それ以前の免許の効力は失効します。
免許は特定の人格を持つ業者自身に与えられるものなので、個人業者が死亡すれば免許は失効し、相続人が免許を相続することはできません。会社組織にしている業者が、合併によって消滅した場合も、同様に免許は失効し、合併後の会社が免許を承継することはできません。
ただし、死亡または合併前に、業者が締結していた契約に基づく取引を終了させる範囲内では、相続人または合併会社も宅建業者とみなされます(有効期間の満了、廃業等の届出、免許取消しにより免許が失効し宅建業者でなくなった者も同様)。そうでないと、契約の後始末もできず、取引の相手方が迷惑を受けるからです。
❸免許の有効期間と更新
従前の免許の有効期間の満了日までに、更新申請についての処分がなされないときは、その処分がなされるまで従前の免許は有効です。この場合、免許の更新がなされたら、その新免許の有効期間は、従前の免許の有効期間の満了の日の翌日から起算されます。
有効期間 | 5年 |
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更新 | 有効期間満了の日の90日前から30日前までに免許の申請書を提出 |
❹免許換え
免許を受けた後に、事務所の増設・廃止・移転などがあり、免許を受けるべき者(免許権者)が変更になった場合は、免許換えが必要となります。下図に示した3つのパターンがあります。事務所の設置場所と免許権者の関係さえわかっていれば、容易に理解できるでしょう。
免許換えによる免許の有効期間は、新免許交付の日から5年です。
なお、免許換えの申請も、全く新規に免許を受ける場合と基本的には同じ手続きで行われます。
問題を解いてみよう!
- 【Q1】 宅地建物取引業者Aは、免許の更新を申請したが、免許権者である甲県知事の申請に対する処分がなされないまま、免許の有効期間が満了した。この場合、Aは、当該処分がなされるまで、宅地建物取引業を営むことができない。(H29 問36)
- 【Q2】 宅地建物取引業者(甲県知事免許)は、乙県内で一団の建物の分譲を行う案内所を設置し、当該案内所において建物の売買の契約を締結し、又は契約の申込みを受ける場合、国土交通大臣に免許換えの申請をしなければならない。(R2・12月 問29)
こう考えよう!<解答と解説>
Answer1
【解説】免許の更新を申請したのに、従前の免許の有効期間満了日までに新免許が交付されない場合、新免許の処分があるまで従前の免許の効力が持続します。
Answer2
【解説】乙県内に「事務所」を設置する場合は、大臣免許への免許換えが必要ですが、「案内所」を設置するに過ぎない場合は、免許換えの必要はありません。
植杉 伸介
宅建士・行政書士・マンション管理士、管理業務主任者試験などの講師を35年以上務める。著書に『マンガはじめてマンション管理士・管理業務主任者』(住宅新報出版)、『ケータイ宅建士 2024』(三省堂)などがあるほか、多くの問題集の作成に携わり、受験勉強のノウハウを提供している。