宅建士講座
2020.07.14

Vol.16 代理
権利関係2~民法2~


今月は「代理」がテーマです。「代理」について、今回の民法改正で大きく変更された点はありませんが、宅建試験での出題頻度が高い項目なので、合格するためには必ずマスターしておきたいところです。法改正との関連で本年度試験に出題される可能性が高い論点を中心に学習ポイントを示していきます。

代理(代理人が本人になり代わって契約を結ぶこと)

(1)代理権の濫用

代理権の濫用とは、代理人が代理権の範囲内の行為をしたが、本人のためにする意図ではなく、自己または第三者の利益を図る目的であった場合をいいます。たとえば、本人から土地の売却を依頼された代理人が、売買代金を着服する意図で、依頼された土地の売買契約を締結したような場合です。

代理権が濫用された場合でも、代理権の範囲内の行為である以上、有効な代理行為となるのが原則ですが、代理人の目的を相手方が知り、または知ることができたとき(濫用目的について相手方が悪意または善意有過失であるとき)は、無権代理(代理権を有しない者による代理行為として無効)とみなされます。

※法改正前は判例により同様の結論が認められていたが、法改正により条文化された。

(2) 自己契約・双方代理の禁止

自己契約(たとえば、売主Aから土地の売買代理権を与えられたBが自ら買主となり売買契約を締結)と双方代理(たとえば、売主、買主双方の代理人となって契約を締結)は、無権代理となります。ただし、債務の履行および本人があらかじめ許諾した行為は、無権代理とはなりません

これに加えて、代理人と本人との利益が相反する行為も、無権代理とみなされる(これも、本人があらかじめ許諾した行為は有効)旨の規定が法改正により新たに定められました。

(3) 無権代理人の責任

無権代理行為について善意無過失(ただし、無権代理人が悪意のときは相手方に過失があってもよいする規定が、法改正により定められた)の相手方は、無権代理行為を行った張本人である無権代理人に対し責任追及することができます。

原則相手方は無権代理人に対し契約の履行または損害賠償請求ができる
例外無権代理人が制限行為能力者の場合は責任追及できない

(4) 表見代理

表見代理とは、無権代理であるにもかかわらず、正当の代理権があるように見える特別な事情があり、代理権の不存在につき相手方が善意無過失である場合に、有効な代理行為があったのと同じ効果を認める制度のことで、①代理権授与の表示による表見代理、②権限外の行為の表見代理、③代理権消滅後の表見代理の3種類があります。

法改正により、①の代理権授与の表示による表見代理と②の権限外の行為の表見代理をプラスしたパターン(賃貸の代理権を授与する表示で売買をしたような場合)や、③の代理権消滅後の表見代理と②の権限外の行為の表見代理をプラスしたパターン(賃貸の代理権が消滅した後に売買をしたような場合)の表見代理も認められることが条文に明記されました。

(5) 復代理人を選任できる場合と代理人の責任

復代理人を選任できる場合復代理人の行為に対する代理人の責任
任意代理人

復代理人を選任できる場合

①本人の許諾を得たとき
やむを得ない事由があるとき

復代理人の行為に対する代理人の責任

復代理人の行為により本人に不利益が生じたときは、代理人は、本人に対して、本人・代理人間の事務処理契約(代理を依頼された契約)の違反を理由として債務不履行の責任を負う。
法定代理人

復代理人を選任できる場合

いつでも自由に復代理人を選任できる。

復代理人の行為に対する代理人の責任

原則→復代理人の代理行為に関する全責任を負う。
例外→やむを得ない事由により復代理人を選任したときは、選任・監督責任のみを負う。

ポイント復代理人の行為に対する「任意」代理人の責任について、法改正前は選任・監督責任のみを負うのが原則とされていたが、法改正により上記表のとおりの責任を負うことになった。

過去問を解いてみよう!

論点の確認と
知識の定着を
  • 【Q1】Aが、所有する甲土地の売却に関する代理権をBに授与し、BがCとの間で、Aを売主、Cを買主とする甲土地の売買契約を締結した。Bが売買代金を着服する意図で本件契約を締結し、Cが本件契約の締結時点でこのことを知っていた場合であっても、本件契約の効果はAに帰属する。(H30年 問2)
  • 【Q2】委任による代理人は、本人の許諾を得たときのほか、やむを得ない事由があるときにも、復代理人を選任することができる。(H29年 問1)

ic_kaisetsuこう考えよう!<解答と解き方>

Answer1
×

【解説】代理人が自己または第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合、相手方が代理人の意図を知り、または知ることができたときは、その行為は無権代理行為とみなされ、代理行為の効果は本人に帰属しない。

Answer2

【解説】任意代理の場合、復代理人を選任することができるのは、本人の許諾を得たとき、または、やむを得ない事由があるときである。


植杉 伸介

早稲田大学法学部卒業。宅建士、行政書士、マンション管理士・管理業務主任者試験等の講師として30年以上の実績がある。『マンガはじめて建物区分所有法 改訂版』(住宅新報出版)など、これまでに多くのテキストや問題集の作成に携わり、受験勉強のノウハウを提供している。