宅建士講座
2024.10.11
宅建士試験合格のコツ

Vol.67 宅建業法
~37条書面の交付~


37条書面へ記名することは、法律で定められた宅建士の職務の1つです。したがって、宅建士になるためには、37条書面に関する規制内容は必ず押さえる必要があります。37条書面に関する問題は、本試験において毎年2問以上出題されています。しっかりとマスターしてください。

❶37条書面の交付

(1)交付義務

宅建業者は、宅地建物の売買・交換・貸借契約が成立したときは、遅滞なく、契約内容を書面化して、契約当事者に交付しなければなりません。この書面を37条書面と呼びます。なお、交付の相手方の承諾があれば、書面の交付に代えて、電磁的方法により提供することができます。

(2)交付の相手方

37条書面を交付する相手方は、契約の両当事者です。契約に関するトラブルは、契約の両当事者の間で生じることだからです。重要事項説明のように、買主・借主だけということにはなりません。ただし、宅建業者自身が契約の当事者になるときは、自分自身に対して書面を交付する義務があるというのもおかしな話ですから、契約の相手方だけに37条書面を交付すれば済みます。

(3)宅建士の記名

37条書面には、宅建士の記名が必要です。記名する宅建士は、専任の宅建士以外の者でもかまいません。

(4)複数の宅建業者が関与する場合

1つの取引に複数の宅建業者が関わった場合、それぞれの宅建業者が37条書面の交付義務を負います。なお、この場合でも、それぞれの宅建業者が重複して同一内容の37条書面を作成・交付する必要はありません。いずれかの宅建業者が代表して、契約当事者に対して各1通の37条書面を作成・交付すればよいとされています。ただし、その37条書面には、関与するすべての宅建業者の宅建士の記名が必要です。

❷37条書面の記載事項

(1)必要的記載事項

必ず記載しなければならない事項です。

① 当事者の氏名・住所

② 物件を特定するために必要な表示

③ 取引対象物件が既存の建物であるときは、建物の構造耐力上主要な部分等の状況について、当事者双方が確認した事項

④ 代金・交換差金・借賃の額およびその支払いの時期・方法

⑤ 物件の引渡しの時期

⑥ 移転登記の申請時期

※貸借契約の場合は、③⑥不要。また、③は、取引物件が既存建物である場合にのみ記載する事項であることに注意。

(2)任意的記載事項

契約において定めがあるときは記載するが、定めがないときは全く記載しなくてもよい事項です。

① 代金・交換差金・借賃以外の金銭(手付金・権利金・敷金等)の授受の定めがあるときは、その額、授受の時期、目的

② 契約の解除に関する定めがあるときは、その内容

③ 損害賠償額の予定・違約金の定めがあるときは、その内容

④ 代金・交換差金についての金銭の貸借(ローン)のあっせんに関する定めがあるときは、そのあっせんによる金銭の貸借が成立しないときの措置

⑤ 天災その他不可抗力による損害の負担(危険負担)に関する定めがあるときは、その内容

⑥ 契約不適合責任(担保責任)についての定め、またはその責任の履行に関し保証保険契約の締結その他の措置についての定めがあるときは、その内容

⑦ 取引物件に係る租税その他の公課の負担に関する定めがあるときは、その内容

※貸借契約の場合は、④⑥⑦不要。

記載事項に関しては、まず優先的に必要的記載事項を覚えるようにしましょう。覚える際には、次のような考え方も頭に入れておくとよいと思います。

必要的記載事項は、いずれも契約で決めるしかない事項です。仮にトラブルになった場合、どんな法律を調べても答えは出ません。ですから、どうしても契約で決めておいて、それを書面に書いておく必要があるのです。

これに対し、任意的記載事項は、契約に特に定めがなければ、それで済む問題です。たとえば、代金以外の金銭の授受の定めがなければ、代金以外に何も払わなくてもよいということですし、危険負担や契約不適合責任は民法等に規定があるので、契約に定めがない場合は、民法等の法律で解決可能です。しかし、契約で特に定めをした場合は、書面に残しておかないと「そんな定めをした覚えはない」などと主張されてトラブルになるおそれがあります。

❸他の書面との比較

37条書面について学習する際は、他の書面と対比しながら規制内容を押さえることをおすすめします。媒介契約書面、重要事項説明書面(35条書面)、37条書面の異同について、まとめておきます。

書面のまとめ一覧

問題を解いてみよう!

  • 【Q1】 宅地建物取引業者である売主Aは、宅地建物取引業者であるBの媒介により、宅地建物取引業者ではないCと宅地の売買契約を締結した。AとBが共同で作成した37条書面にBの宅地建物取引士の記名がなされていれば、Aは37条書面にAの宅地建物取引士をして記名させる必要はない。(R4 問32)
  • 【Q2】 宅地建物取引業者は、その媒介により建物の貸借の契約を成立させた場合において、当該建物が既存の建物であるときは、建物の構造耐力上主要な部分等の状況について当事者の双方が確認した事項を37条書面に記載し、当該契約の各当事者に交付しなければならない。(R3・12月 問26)

ic_kaisetsuこう考えよう!<解答と解説>

Answer1
×

【解説】複数の宅建業者が取引に関与した場合、それぞれの宅建業者が37条書面の作成義務を負い、それぞれの宅建業者の宅建士が37条書面に記名しなければなりません。

Answer2
×

【解説】既存建物構造耐力上主要な部分等の状況について当事者双方が確認した事項は、売買・交換の場合の必要的記載事項です。貸借の場合は、記載する必要がありません。


植杉 伸介

植杉 伸介

宅建士・行政書士・マンション管理士、管理業務主任者試験などの講師を35年以上務める。著書に『マンガはじめてマンション管理士・管理業務主任者』(住宅新報出版)、『ケータイ宅建士 2024』(三省堂)などがあるほか、多くの問題集の作成に携わり、受験勉強のノウハウを提供している。