宅建士講座
2024.12.13
宅建士試験合格のコツ

Vol.69 宅建業法監督


宅建業者および宅建士に対する監督処分等に関する学習は手薄になりがちですが、意外に出題頻度は高くなっています(過去12年間で出題されなかったのは、令和2年~令和4年の3年間のみ)。今回は、監督処分等の基礎知識および出題ポイントを押さえます。

❶宅建業者に対する監督処分

(1)指示処分

指示処分は、免許権者のほか、都道府県知事は、その都道府県の区域内で業務を行うすべての業者に対して行うことができます。

① 業務に関し宅建業法・住宅瑕疵担保履行法以外の法令に違反し、宅建業者として不適当と認められるとき
② 宅建士の受けた監督処分につき、宅建業者に帰責事由があるとき
③ 宅建業法・住宅瑕疵担保履行法に違反したとき

(2)業務停止処分

業務停止処分も、指示処分と同様に、免許権者のほか、業務を行っている場所の都道府県知事も行うことができます。業務停止処分の期間は、最長で1年です。

①②は、指示処分事由と同じ
③宅建業法・住宅瑕疵担保履行法のうち、一定の重要な規定に違反したとき
④指示処分に従わないとき

(3)免許取消処分

免許取消処分は、免許権者のみが行うことができます。免許取消処分該当事由には、必要的取消事由と任意的取消事由があります。必要的取消事由に該当した場合は、必ず免許取消をしなければなりません。

<必要的取消事由>

①免許欠格事由に該当することになったとき
②免許換えをしなければならない事由に該当しながら、新たな免許を受けていないことが判明したとき
③免許を受けてから1年以内に事業を開始せず、または引き続いて1年以上事業を休止したとき(事業不開始・休止に正当な事由がある場合でも免許取消となる)
④廃業の事実等が判明したとき

<任意的取消事由>

①免許の発行に際して付された条件に、業者が違反したとき
②宅建業者の事務所の所在地が確知できないとき、または宅建業者(法人の場合はその役員)の所在を確知できないときで、公告後30日経過しても当該宅建業者からの申出がないとき
③免許取得後3カ月以内に営業保証金を供託した旨の届出がないために、免許権者から催告を受けた後、さらに1カ月以内に供託した旨の届出をしなかったとき

❷宅建士に対する監督処分

(1)指示処分

登録を受けた知事のほか、宅建士が事務を行った場所の知事も指示処分ができます。

(2)事務禁止処分

登録権者のほか、宅建士が事務を行った場所の知事も事務禁止処分ができます。事務禁止期間は最長で1年です。

(3)登録消除処分

登録消除処分は、登録権者しかできません。登録消除処分事由は、すべて必要的消除事由です。

免許取消のように、任意的事由はありません。

①宅建士または宅建士資格者が登録欠格事由の一つに該当するに至ったとき
②宅建士または宅建士資格者が不正手段により登録を受けたとき
③宅建士が不正手段により宅建士証の交付を受けたとき
④宅建士が事務禁止処分事由に該当し情状が特に重いとき、または事務禁止処分に違反したとき
⑤宅建士資格者が宅建士としてなすべき事務を行い、情状が特に重いとき

❸監督処分の手続き

宅建業者・宅建士に対する監督処分をする場合(任意的免許取消事由②の場合を除く)には、公開による聴聞を行わなければなりません。

宅建業者に対する業務停止処分・免許取消処分をした場合(任意的免許取消事由②の場合を除く)には、その旨を公告しなければなりませんが、宅建業者に対する指示処分および宅建士に対する監督処分の場合には、公告をする必要がありません。

❹指導・助言・勧告

国土交通大臣はすべての宅建業者に対して、都道府県知事は当該都道府県の区域内で宅建業を営む宅建業者に対して、宅建業の適正な運営を確保し、または宅建業の健全な発達を図るため必要な指導・助言・勧告をすることができます。

問題を解いてみよう!

  • 【Q1】 宅地建物取引業者A(甲県知事免許)は、甲県知事から指示処分を受けたが、その指示に従わなかった。この場合、甲県知事は、Aに対し、1年を超える期間を定めて、業務停止を命ずることができる。(H28・問26)
  • 【Q2】 宅地建物取引士A(甲県知事登録)は、乙県内の業務に関し、乙県知事から宅地建物取引士として行う事務の禁止の処分を受け、当該処分に違反したとしても、甲県知事から登録を消除されることはない。(H25・問42)

ic_kaisetsuこう考えよう!<解答と解説>

Answer1
×

【解説】指示処分に従わなかった場合、業務停止処分の対象になりますが、停止期間は最長で1年です。

Answer2
×

【解説】事務禁止処分に違反した場合、登録権者である甲県知事から登録消除処分を受けます。


植杉 伸介

植杉 伸介

宅建士・行政書士・マンション管理士、管理業務主任者試験などの講師を35年以上務める。著書に『マンガはじめてマンション管理士・管理業務主任者』(住宅新報出版)、『ケータイ宅建士 2024』(三省堂)などがあるほか、多くの問題集の作成に携わり、受験勉強のノウハウを提供している。