宅建士講座
2025.01.15
宅建士試験合格のコツ

Vol.70 宅建業法業務上の規制


今回は、事務所や案内所等に関する業務上の規制について学習します。少し細かい知識もありますが、本試験においてほぼ毎年出題されている論点なので、しっかりと押さえておく必要があります。

❶標識の掲示

宅建業者は、下記の場所ごとに、公衆の見やすい場所に、国土交通省令で定める標識(宅地建物取引業者票)を掲示しなければなりません。

① 事務所
② 継続的に業務を行うことができる施設を有する場所で事務所以外のもの(営業所、出張所等)
③ 一団(10区画以上または10戸以上)の宅地建物の分譲を行う場合の案内所
④ 他の業者が行う一団の宅地建物の分譲を代理・媒介する場合に設置する案内所
⑤ 業務に関し、展示会その他これに類する催しを実施する場所
⑥ 一団の宅地建物を分譲する場合における当該宅地建物の所在する場所

②~⑤について、その場所で契約行為(申込みの受付けまたは契約締結)を行う予定があるかどうかは関係ありません。契約行為の予定がなくても、標識を掲示する必要があります。また、案内所がテント張りかどうかも関係ありません。

⑥は、要するに、一団の宅地建物の分譲をする場所で案内所を設置しない場合でも、標識が必要になることを意味します。

<事務所の標識>

<事務所の標識>
※専任の宅建士に関する記載は、これまで宅建士の「氏名」が記載されることになっていましたが、法改正(令和7年4月1日施行)により、宅建士の「数」が記載されることになりました。

❷事務所ごとに必要なもの

(1)事務所に必要なもの

宅建業者の事務所には、次の5つのものが必ず必要となります。

① 専任の宅建士
② 報酬額の掲示
③ 従業者名簿の備付け
④ 帳簿の備付け
⑤ 標識の掲示

※従業者名簿には、これまで「生年月日」も記載されていましたが、法改正(令和7年4月1日施行)により、生年月日は記載されないことになりました。

語呂合わせ

(2)案内所等に必要なもの

案内所等では、常に必要なのは、上記⑤の標識の掲示だけです。さらにその案内所等で契約行為を行う予定があるときは、①の専任の宅建士も必要となりますが、②~④は一切必要ありません。

(3)従業者名簿と帳簿の保存期間

従業者名簿宅建業者は、従業者名簿に最終の記載をした日から10年間保存しなければならない
帳   簿宅建業者は、業務に関する帳簿を各事業年度の末日に閉鎖し、その後5年間(宅建業者が自ら売主となる新築住宅に係る帳簿は10年間)保存しなければならない

※従業者名簿の保存期間については、従(じゅう)業者名簿だから10(じゅう)年と覚えましょう。帳簿の保存期間「5年」は、免許の有効期間と同じです。5年ごとの免許の更新の際に、過去5年間の業務内容を帳簿でチェックする必要があるからです。

❸案内所等の届出

宅建業者は、事務所以外の専任の宅建士を設置する義務がある場所について、一定事項を業務開始の10日前までに、免許権者およびその業務を行う場所の所在地を管轄する都道府県知事に届け出なければなりません。届出義務がある場所は、次のとおりです。

下記の場所で1人以上の専任の宅建士の設置義務があるもの

① 継続的に業務を行うことができる施設を有する場所で事務所以外のもの(営業所、出張所等)
② 一団(10区画以上または10戸以上)の宅地建物の分譲を行う場合の案内所
③ 他の業者が行う一団の宅地建物の分譲を代理・媒介する場合に設置する案内所
④ 業務に関し、展示会その他これに類する催しを実施する場所

問題を解いてみよう!

  • 【Q1】 宅地建物取引業者A(甲県知事免許)が甲県に建築した一棟100戸建てのマンションを、宅地建物取引業者B(国土交通大臣)に販売代理を依頼し、Bが当該マンションの隣地(甲県内)に案内所を設置して契約を締結する場合、A及びBは当該マンションの所在する場所について、宅地建物取引業法第50条第1項に規定する標識をそれぞれ掲示しなければならない。(H16・問43)
  • 【Q2】 宅地建物取引業者G(丁県知事免許)が、その業務に関し展示会を丁県内で実施する場合、展示会を実施する場所において売買契約の締結(予約を含む。)又は売買契約の申込みの受付を行うときは、Gは展示会での業務を開始する日の5日前までに展示会を実施する場所について丁県知事に届け出なければならない。(R5・問32)

ic_kaisetsuこう考えよう!<解答と解説>

Answer1
×

【解説】宅地建物の所在する場所に標識の掲示義務を追うのは、売主である宅建業者Aです。宅建業者Bは、隣地の案内所に標識を掲示する義務を負います。

Answer2
×

【解説】契約行為を行う展示会場には専任の宅建士を設置する義務があり、その展示会場につき案内所等の届出をしなければなりませんが、届出は業務開始の10日前までに行う必要があります。


植杉 伸介

植杉 伸介

宅建士・行政書士・マンション管理士、管理業務主任者試験などの講師を35年以上務める。著書に『マンガはじめてマンション管理士・管理業務主任者』(住宅新報出版)、『ケータイ宅建士 2024』(三省堂)などがあるほか、多くの問題集の作成に携わり、受験勉強のノウハウを提供している。