宅建士講座
2025.06.13
宅建士試験合格のコツ

Vol.74 法律上の制限
~都市計画法(都市計画制限)~


都市計画制限は、内容がわかりにくく苦手にする受験生が多い項目です。出題頻度は低いので、完全マスターまで目指す必要はありませんが、基礎知識を押さえ、正解率50%以上を確保できる程度の準備はしておくべきです。

❶都市施設、市街地開発事業に関連する建築等の制限

(1)都市施設、市街地開発事業の時間の流れ

都市施設または市街地開発事業に関する都市計画は、原則として、次のような手順で行われます。

手順

事業の認可を受ける前と後(事業の計画段階と実行段階)とでは、工事が開始されているかどうかという重要な違いがあるので、そこに課せられる制限の中身も当然に違ってきます。なお、都市計画事業の対象区域は、事業の認可を受ける前の計画段階においては「都市計画施設の区域」または「市街地開発事業の施行区域」と呼ばれ、事業の認可を受けた後の実行段階においては「都市計画事業の事業地」と呼ばれるようになります。

(2)都市計画施設の区域内または市街地開発事業の施行区域内の制限

都市施設または市街地開発事業の計画が決定され、事業認可を受ける前、すなわち工事着手前の段階での制限です。

建築物の建設
※建築物の建築のみが制限され、工作物の建設や土地の形質の変更などは規制されない点がポイントです。

(3)市街地開発事業等予定区域内の制限

大規模な都市施設や都市計画事業を行う場合は、都市計画が決定される前の段階から、用地確保等のため、とりあえず区域と施行予定者等の基本的事項だけを都市計画として決定し(予定区域の決定)、その後、詳細な計画を煮詰めた段階で都市計画の本計画を決定するという手順が踏まれます。

市街地開発事業など予定区域の制限

この段階での制限を市街地開発事業等予定区域内の制限といいます。この制限の内容は、事業の認可(または承認)の告示があるまで続きます。

規制内容は、次のとおりです。

規定内容
※都市計画施設の区域内または市街地開発事業の施行区域内の制限では、規制対象となっていなかった工作物の建設と土地の形質の変更も規制対象となっています。

(4)都市計画事業の事業地内の制限

この段階では、都市計画事業が「実行段階」になり、実際に工事が始まります。実際に工事が始まる以上、工事の妨げになるような行為を制限することは、まさに現実的です。それゆえ、この段階では、計画段階に比べて厳しい規制が課されることになります。

都市計画事業

問題を解いてみよう!

  • 【Q1】 市街地開発事業の施行区域内においては、非常災害のために必要な応急措置として行う建築物の建築であっても、都道府県知事(市の区域内にあっては、当該市の長)の許可を受けなければならない。(H21・問16)
  • 【Q2】 都市計画事業の認可の告示があった後においては、当該事業地内において、当該都市計画事業の施行の妨げとなるおそれがある土地の形質の変更又は建築部の建築その他工作物の建設を行おうとする者は、都道府県知事(市の区域内にあっては、当該市の長)の許可を受けなければならない。(H25・問15)

ic_kaisetsuこう考えよう!<解答と解説>

Answer1
×

【解説】市街地開発事業の施行区域内で建築物を建築する場合、知事等の許可を受けなければならないのが原則ですが、非常災害のため必要な応急措置は例外的に許可不要となります。

Answer2

【解説】事業地内においては、土地の形質変更や建築物の建築、その他工作物の建設について知事等の許可が必要になります。


植杉 伸介

植杉 伸介

宅建士・行政書士・マンション管理士、管理業務主任者試験などの講師を35年以上務める。著書に『マンガはじめてマンション管理士・管理業務主任者』(住宅新報出版)、『ケータイ宅建士 2025』(三省堂)などがあるほか、多くの問題集の作成に携わり、受験勉強のノウハウを提供している。