本試験において、債務の弁済に関する問題の出題頻度はあまり高くありませんが、ここ数年間出題されていないので、そろそろ出題されるころかもしれません。そこで、今回は債務の弁済に関する基礎知識と重要論点のポイントを押さえることにします。
❶弁済とは
弁済とは、債務者が債務の内容である給付を実現し、債権者を満足させることをいいます。たとえば、A所有の土地を1,000万円でBに売却する契約を締結した場合、BがAに代金1,000万円を支払うこと、およびAがBに土地を引き渡すことが「弁済」です。
債務の弁済は、弁済の準備→弁済の提供→受領というプロセスを経ることによって終了し、債務が消滅することになります。弁済の提供の段階では、まだ債務は消滅しません。
弁済の準備
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弁済の提供
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受 領
❷弁済
(1)弁済の提供とは
弁済の提供とは、債務者が単独で完了することのできない給付について、その給付に必要な準備をして債権者の協力を求めることをいいます。
(2)弁済の提供の効果
弁済の提供をすれば、債権者が受領していなくても、債務者は債務不履行責任を免れます。
原則として、弁済の提供は、債務の本旨に従って現実に行う必要がありますが、債権者があらかじめ受領を拒んでいる場合や、債権者の行為がないと履行ができない場合は、弁済の準備をして債権者に受領を催告すること(口頭の提供)だけで、債務不履行責任を免れることができます。
❸弁済の場所等
(1)弁済場所
特約がなければ下記のとおりとなります。
| 特定物の引渡し | 債権発生時にその物が存在した場所 |
|---|---|
| その他の弁済 | 債権者の現住所(住所を変更した場合は新住所 ← 増加費用は債権者が負担) |
(2)弁済の費用
弁済の費用(代金を支払う際の銀行振込手数料など)は、特約のない限り、債務者が負担します。ただし、債権者が債務の履行を受けることを拒み、または受けることができないことによって生じた増加費用は、債権者の負担になります。
❹弁済の受領権限のない者への弁済
弁済の受領権限のない者への弁済は原則として無効ですが、次の場合は例外的に有効となります。
弁済者が善意・無過失で、取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有する者に弁済した場合
❺代物弁済
代物弁済とは、本来の給付とは異なる代わりの物によって弁済することをいいます。代物弁済を行う場合は、債権者の承諾が必要であり、代わりの給付が現実になされてはじめて代物弁済の効力(債務消滅の効力)が生じます。
❻第三者の弁済
原則として、債務の弁済は、債務者以外の第三者も行うことができます。しかし、次の場合は、弁済できません。
①債務の性質上、第三者が弁済できない場合
②当事者が第三者の弁済を禁止・制限する意思表示をした場合
③弁済について正当な利益を有しない第三者は、債務者の意思に反して弁済できない
(ただし、債務者の意思に反することを債権者が知らなかったときは、有効に弁済できる)
④弁済について正当な利益を有しない第三者は、債権者の意思に反して弁済できない
(ただし、その第三者の弁済が債務者の委託を受けての弁済であることを債権者が知っていたときは、有効に弁済できる)
物上保証人などは弁済について正当な利益がありますが、単に債務者の親族である者は正当な利益を有しません。
問題を解いてみよう!
- 【Q1】 債権の目的が特定物の引渡しである場合、債権者が目的物の引渡しを受けることを理由なく拒否したため、その後の履行の費用が増加したときは、その増加額について、債権者と債務者はそれぞれ半額ずつ負担しなければならない。(R2・12月 問4)
- 【Q2】 Aを売主、Bを買主として甲建物の売買契約が締結された。Bが、Aの代理人と称するDに対して本件代金債務を弁済した場合、Dに受領権限がないことにつきBが善意かつ無過失であれば、Bの弁済は有効となる。(R1 問7)
こう考えよう!<解答と解説>
Answer1
【解説】債権者の受領拒否による履行費用の増加額は、債権者が負担しなければなりません。
Answer2
【解説】債権者の代理人と称して債権を行使するものは、取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有するものに該当します。したがって、弁済者が善意無過失であれば、有効な弁済となります。

植杉 伸介
宅建士・行政書士・マンション管理士、管理業務主任者試験などの講師を35年以上務める。著書に『マンガはじめてマンション管理士・管理業務主任者』(住宅新報出版)、『ケータイ宅建士 2025』(三省堂)などがあるほか、多くの問題集の作成に携わり、受験勉強のノウハウを提供している。