宅建士講座
2021.01.14

Vol.22 権利関係
~相続~


今月は、相続について法改正点を中心に出題ポイントを見ていきます。本試験において相続に関する問題は、ほぼ毎年1問ずつ出題されています。通常の学習では歯が立たないような難問は出題されないので、しっかりと準備をして、相続の問題で1点を確保できるようにしたいところです。

自筆証書遺言に関する改正

従来、自筆遺言証書は、遺言をする者が、その全文、日付および氏名を自書(手書き)する必要がありましたが、改正法では、自筆証書遺言をする場合において、遺言事項(遺言書の本文)と添付書類である財産目録とを分け、次のように作成することが認められるようになりました。

遺言事項の部分従来どおり自書によることが必要
財産目録の部分自書によらずパソコン等で作成したものや、不動産の登記事項証明書、預金通帳のコピー等を添付し、それを目録として使用してもよい

※自書によらない財産目録の部分には、毎葉(1枚ごと)に署名し、印を押さなければならない(自書によらない記載が両面にある場合には、その両面に署名・押印が必要)

配偶者居住権

配偶者居住権という制度が新設されました。

(1) 配偶者居住権とは

配偶者居住権とは、相続開始時(=被相続人死亡時)に被相続人の財産である建物(住宅)に居住していた配偶者の居住権を保護するため、配偶者にその建物を無償で使用・収益する権利を認める制度であり、下の2種類があります。

配偶者居住権
(長期居住権)
配偶者が亡くなるまで居住を認めるもの
配偶者
短期居住権
遺産分割が終了するまでの間等の短期間の居住を認めるもの

(2) 配偶者居住権(長期居住権)

配偶者が亡くなるまで(終身の間)、建物の全部に対して認められる配偶者居住権は、①遺産分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき、②配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき、③被相続人と配偶者との間に、配偶者に配偶者居住権を取得させる旨の死因贈与契約があるときのいずれかに該当する場合でなければ認められません。

たとえば、被相続人甲が、配偶者Aと同居していた時価2,000万円の住宅と預金3,000万円を残して死亡した場合において、配偶者Aと子Bが相続人であるとき、相続分は2分の1ずつなので、配偶者居住権の制度によらず配偶者Aが住宅を取得すると、配偶者Aは2,000万円の住宅と預金500万円、子Bは預金2,500万円を取得することになります。しかし、これでは、配偶者Aの老後資金が500万円しかなく不安です。

これに対し配偶者が配偶者居住権を取得する場合は、その居住権を財産的に評価した額を相続したものとして扱います。すなわち、住宅の価値を「居住権」と「所有権」に分けて、たとえば、時価2,000万円の住宅の価値を、所有はしないが居住し続けることができる権利である「居住権」1,000万円と、居住はしないが所有する権利である「所有権」1,000万円に分け、配偶者Aは1,000万円の「居住権」を相続し、子Bは1,000万円の「所有権」を相続したものと考えるのです。これならば、配偶者Aは、預金を1,500万円(3,000万円の2分の1)取得することができます。

配偶者居住権は、配偶者自身の居住を保護するための権利ですから、譲渡することはできません。また、配偶者居住権は、登記することができ、登記したときは第三者に居住権を対抗することができます。

(3)配偶者短期居住権

配偶者は、被相続人の財産である建物に相続開始の時に無償で居住していた場合には、一定期間、その住宅に無償で住み続けることができます。配偶者短期居住権は、相続開始により当然に発生します。長期居住権のように、遺言等で定めておく必要はありません。

配偶者短期居住権は、原則として遺産分割により居住建物の帰属が確定した日、または相続開始時から6カ月を経過する日のいずれか遅い日まで存続します。

配偶者短期居住権は、長期居住権と同じく譲渡することはできませんが、長期居住権と異なり登記することは認められていません。

遺留分侵害額請求

従来、遺留分を侵害された者は、相続財産の現物の返還を遺留分の割合に応じて求めることができるとされていましたが、法改正により、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを求めることができるが、遺贈された財産そのものの返還(現物返還)を請求することはできないこととなりました。

問題を解いてみよう!

論点の確認と
知識の定着を
  • 【Q1】遺産分割協議により配偶者居住権を取得した配偶者は、配偶者居住権を登記することができるが、当該居住権を第三者に譲渡することはできない。(予想問題)
  • 【Q2】配偶者短期居住権により居住できる期間は、居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産分割をすべき場合には、遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日、又は相続開始の日から6カ月を経過する日のいずれか早い日までの間である。(予想問題)

ic_kaisetsuこう考えよう!<解答と解き方>

Answer1

【解説】配偶者居住権を登記することはできるが、譲渡することはできない。

Answer2
×

【解説】配偶者短期居住権により居住できる期間は、遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日、又は相続開始の日から6カ月を経過する日のいずれか「遅い日」までの間である。


植杉 伸介

早稲田大学法学部卒業。宅建士、行政書士、マンション管理士・管理業務主任者試験等の講師として30年以上の実績がある。『マンガはじめて建物区分所有法 改訂版』(住宅新報出版)など、これまでに多くのテキストや問題集の作成に携わり、受験勉強のノウハウを提供している。