宅建士講座
2021.02.12
宅建士試験合格のコツ

Vol.23 権利関係
~借地借家法~


本試験では借地借家法に関する問題が、借地1問・借家1問という内訳で合計2問出題されるのが基本パターンです。借地も借家も借主保護が主な目的であり、共通点が多いのですが、異なっている点もあります。今月は、その異なっている点にスポットを当てて学習していきます。

借地と借家の違い

1. 一時使用目的の借地・借家

借地・借家の目的が一時使用のためであることが明らかな場合、借地借家法の適用はどうなるかという問題です。

借地
借地借家法の大部分の規定は適用されないが、建物登記による借地権の対抗など一部の規定は適用される
借家
借地借家法の規定が全面的に適用されない
(民法の適用となる)

2. 存続期間の定め

借地・借家の存続期間の定めが一定の数字より短い場合、その存続期間はどうなるかという問題です。

借地
地当初の契約が30年未満の定め→30年
1回目の更新が20年未満の定め→20年
2回目以降の更新が10年未満の定め→10年
借家
1年未満の定め→「期間の定めなし」となる

3. 法定更新

「法定更新」とは、当事者間の合意によらず、一定の要件に該当する場合に法律の規定により自動的に契約が更新される制度をいいます。借地・借家いずれも法定更新の制度が二段構えで用意されていますが、借地では借主(借地権者)の側から更新を請求するというアクションが求められているのに対し、借家では借主側のアクションは不要です(貸主(賃貸人)の側から更新拒絶の通知をして法定更新を阻止することが求められている)。

借地
①請求による更新
借地権者が請求し、これに対して借地権設定者が遅滞なく異議を述べなかったときは、建物が存在する場合に限り、前契約と同一条件で契約を更新したものとみなされる
②使用継続による更新
存続期間満了後も借地権者が土地の使用を継続し、これに対して借地権設定者が遅滞なく異議を述べなかったときは、建物が存在する場合に限り、前契約と同一条件で契約を更新したものとみなされる
借家
①期間の定めがある場合
賃貸人が、期間満了の1年前から6カ月前までに、更新しない旨の通知をしなければ、前契約と同一条件で更新したものとみなされる
②使用継続による更新
期間満了後も賃借人が建物の使用を継続し、これに対して賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときは、前契約と同一条件で契約を更新したものとみなされる

※上記いずれの場合も、貸主からの異議および更新しない旨の通知には、正当事由が必要である。
※更新後の契約は前契約と同一条件となるが、その「条件」の中に存続期間は含まれない。借地の場合は、1回目の更新が20年、2回目以降の更新が10年の存続期間となり、借家の場合は期間の定めなしとなる。

4. 第三者に対する借地権・借家権の対抗

次のいずれかがあれば、借地権・借家権を第三者に対抗することができます。

借地
①借地権(地上権または賃借権)の登記
②借地上の建物の登記
 (借地権者本人名義のものに限る)
借家
①借家権(賃借権)の登記
②賃借人への建物の引渡し

5. 賃借権の譲渡・転貸

民法上、賃借権の譲渡または転貸をするには、賃貸人の承諾が必要とされていますが、その承諾が得られない場合の救済策が借地について定められています。

借地
①借地上の建物をこれから譲渡しようとする場合
→借地権設定者の承諾に代わる許可を裁判所に求めることができる
②既に建物の譲渡が行われた場合
→借地権設定者に建物の買取りを請求することができる
③建物を競売で取得した場合
→承諾に代わる許可を求めることもできるし、建物買取請求をすることもできる
借家
民法の原則どおり、賃貸人の承諾がないと賃借権の譲渡または転貸をすることはできない

過去問を解いてみよう!

論点の確認と
知識の定着を
  • 【Q1】仮設建物を建築するために土地を一時使用として1年間賃借し、借地権の存続期間が満了した場合には、借地権者は、借地権設定者に対し、建物を時価で買い取るように請求することができる。(H24 問11)
  • 【Q2】AがBに対し、A所有の甲建物を3年間賃貸する旨の契約をした。AがBに対して、期間満了の3月前までに更新しない旨の通知をしなければ、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされるが、その期間は定めがないものとなる。(R1 問12)

ic_kaisetsuこう考えよう!<解答と解き方>

Answer1
×

【解説】一時使用のために設定されたことが明らかな借地権には、存続期間や建物買取請求権などの借地借家法の規定は適用されない。したがって、約定どおり期間1年で借地契約は満了し、建物買取請求権の行使は認められない。

Answer2
×

【解説】法定更新を阻止するためには、期間の満了の1年前から6カ月前までの間に更新拒絶通知をしなければならない。3カ月前ではない。


植杉 伸介

早稲田大学法学部卒業。宅建士、行政書士、マンション管理士・管理業務主任者試験等の講師として30年以上の実績がある。『マンガはじめて建物区分所有法 改訂版』(住宅新報出版)など、これまでに多くのテキストや問題集の作成に携わり、受験勉強のノウハウを提供している。