宅建業者と宅建士には、それぞれ一定の届出義務が課されています。内容的には類似していますが、異なる点もあります。両者を別々に勉強すると、知識が混同して、本試験で解答ミスを犯しやすくなります。そこで、異同を正確に理解するため、両者を対比しつつ知識を整理したいと思います。
宅建業者と宅建士
1. 業者名簿と宅建士登録簿
業者名簿の記載事項
①免許証番号および免許年月日
②商号または名称
③法人業者の場合、その役員および政令で定める使用人の氏名
④個人業者の場合、その個人および政令で定める使用人の氏名
⑤事務所の名称および所在地
⑥事務所ごとに置かれる専任の宅建士の氏名
⑦指示または業務停止処分があったときは、その年月日および内容
⑧宅建業以外の兼業の種類
②商号または名称
③法人業者の場合、その役員および政令で定める使用人の氏名
④個人業者の場合、その個人および政令で定める使用人の氏名
⑤事務所の名称および所在地
⑥事務所ごとに置かれる専任の宅建士の氏名
⑦指示または業務停止処分があったときは、その年月日および内容
⑧宅建業以外の兼業の種類
宅建士登録簿の記載事項
①登録番号および登録年月日
②氏名、生年月日、住所
③本籍(外国人の場合は国籍)および性別
④試験の合格年月日および合格証書番号
⑤登録要件である2年以上の実務経験に関する事項
⑥勤務先宅建業者の商号または名称と免許証番号
⑦指示または事務禁止処分があったときは、その年月日および内容
⑧宅建士証の交付年月日、有効期間の満了日、発行番号
⑨登録の移転に関する事項
②氏名、生年月日、住所
③本籍(外国人の場合は国籍)および性別
④試験の合格年月日および合格証書番号
⑤登録要件である2年以上の実務経験に関する事項
⑥勤務先宅建業者の商号または名称と免許証番号
⑦指示または事務禁止処分があったときは、その年月日および内容
⑧宅建士証の交付年月日、有効期間の満了日、発行番号
⑨登録の移転に関する事項
<両者の比較ポイント>
①宅建士登録簿(以下、登録簿)には、住所や本籍まで記載されるが、業者名簿においては、役員等の住所までは記載されない。
②業者名簿に記載される「役員」には、監査役も含む。
③業者名簿に記載される宅建士は、「専任」の宅建士だけであり、一般の宅建士は記載されない。
④登録簿に記載する勤務先は、宅建業者だけであり、他業種に勤務している場合は記載されない。
⑤業者名簿は一般の閲覧に供されるが、登録簿は一般の閲覧に供されない。
2. 業者名簿の変更届出と変更の登録
業者名簿の記載事項に変更が生じたら、業者は業者名簿の変更届出をし、登録簿の記載事項について変更が生じたら、宅建士(資格者)は変更の登録を申請しなければならない。
<両者の比較ポイントおよび重要ポイント>
<業者名簿の変更届出>
・変更後【30日以内に】届出
・兼業の種類に変更があっても、届出義務なし
・変更後【30日以内に】届出
・兼業の種類に変更があっても、届出義務なし
<登録簿変更の登録>
・変更後【遅滞なく】届出
・変更後【遅滞なく】届出
3. 廃業、死亡等の届出
<業者の届出>
<宅建士の届出>
<両者の比較ポイント>
過去問を解いてみよう!
論点の確認と
知識の定着を
知識の定着を
- 【Q1】宅地建物取引業者個人A(甲県知事免許)が死亡した場合、Aの相続人は、Aの死亡の日から30日以内に、その旨を甲県知事に届け出なければならない。(H16 問32)
- 【Q2】宅地建物取引士の登録を受けている者が本籍を変更した場合、遅滞なく、登録をしている都道府県知事に変更の登録を申請しなければならない。(H21 問29)
こう考えよう!<解答と解き方>
Answer1
×
【解説】「死亡の日から」ではなく、死亡したことを相続人が「知った日から」30日以内に届け出なければならない。
Answer2
◯
【解説】本籍は、登録簿の記載事項になっているので、変更があった場合は、遅滞なく、登録を受けている都道府県知事に変更の登録を申請する必要がある。
植杉 伸介
宅建士・行政書士・マンション管理士、管理業務主任者試験などの講師を30年以上務める。著書に『マンガはじめて建物区分所有法 改訂版』(住宅新報出版)、『ケータイ宅建士 2021』(三省堂)などがあるほか、多くの問題集の作成に携わり、受験勉強のノウハウを提供している。