今回のテーマである制限行為能力者の出題頻度は2~3年に1回程度ですが、未成年者については、法改正により令和4年4月1日から成年者になる年齢が20歳から18歳に引き下げられます。それゆえ、令和4年度の本試験では、制限行為能力者からの出題の可能性が高まっています。
制限行為能力者
1. 制限行為能力者の種類
2. 制限行為能力者の行為
未成年者の婚姻についても法改正がありました。法改正前は、①婚姻できるのは男18歳・女16歳以上、②20歳未満の未成年者が婚姻する場合は父母の同意が必要、③未成年者が婚姻したときは成年者とみなされるという規定がありましたが、改正後は、①婚姻できるのは男女とも18歳以上、18歳から成年者とされるので、②父母の同意に関する規定は削除され、③婚姻したら成年者とみなされる旨の規定も削除されました。
3. 相手方の保護
(1) 制限行為能力者の詐術
制限行為能力者が自己を能力者と信じさせるために詐術を用いた場合は、取消しを認めません。このような制限行為能力者まで保護するのは適当でないからです。
(2)相手方の催告権
制限行為能力者の相手方は、取り消しうる行為について、制限行為能力者側に対して1カ月以上の期間を定めて追認するか否かの催告ができます。制限行為能力者側が、取消しまたは追認をすれば決着がつきますが、期間内に確答を発しない場合は、次のようになります。
制限能力時の被保佐人と被補助人の本人に催告した場合だけ例外的に「取消し」とみなされ、それ以外はすべて「追認」とみなされます。取消し前の行為は一応有効です。催告されたのにそれを放置したということは、有効なままでよいと考えたからでしょう。それゆえ、催告に対して確答がない場合の効果は、原則として「追認」となるのです。
(3)法定追認
追認という行為がなくても、追認可能な状態で、契約が有効であることを前提とするような行為を行った場合、相手方としてはもはや取り消さないであろうと期待します。そこで、下記のような行為があった場合は、追認があったものとみなすことにしました。
①契約の履行(登記の移転に協力する等)
②履行の請求(代金の請求等)
③取り消しうる行為によって取得した権利の譲渡(代金債権の譲渡等)
④その他、更改、担保の供与、強制執行等
(4)取消権の消滅
追認することができる時より5年間、または行為の時より20年経過すると取消権は消滅します。
問題を解いてみよう!
知識の定着を
- 【Q1】営業を許された未成年者が、その営業に関するか否かにかかわらず、第三者から法定代理人の同意なく負担付贈与を受けた場合には、法定代理人は当該行為を取り消すことができない。(R3 問5)
- 【Q2】成年被後見人が第三者との間で建物の贈与を受ける契約をした場合には、成年後見人は、当該法律行為を取り消すことができない。(H26 問9)
こう考えよう!<解答と解き方>
Answer1
【解説】負担付贈与は、贈与を受ける者に負担があるため、単に権利を得る行為とはいえないので、許可された営業に関しない場合は、取り消すことができる。
Answer2
【解説】単に権利を得る行為に関する例外は、未成年者についてのみ定められており、成年被後見人については単に権利を得る行為も取消しの対象となる。
植杉 伸介
宅建士・行政書士・マンション管理士、管理業務主任者試験などの講師を30年以上務める。著書に『マンガはじめて建物区分所有法 改訂版』(住宅新報出版)、『ケータイ宅建士 2021』(三省堂)などがあるほか、多くの問題集の作成に携わり、受験勉強のノウハウを提供している。