保証は、最近はやや出題が減る傾向にありますが、以前は2年に1回程度出題される重要論点でしたので、学習をおろそかにすることはできません。そこで、今回は、保証に関する知識のうち、必ずマスターしておいてほしい基礎的な事項をまとめてみました。
保証債務
1. 保証契約
保証債務は、債権者と保証人との契約によって成立し、この契約は主たる債務者の意思に反しても締結できます。ただし、保証契約は、書面または電磁的記録によってされなければ効力を生じません。

2. 保証債務の性質
(1) 随伴性
主たる債務が債権譲渡などにより移転したときは、これに伴って保証債務も移転します。したがって、主たる債務者に対して債権譲渡の通知をすれば、保証人に対しても債権譲渡を対抗できます。
(2) 付従性
主たる債務者に生じた事由の効力は、原則として保証人にも及びます(ただし、時効の援用や時効利益の放棄は本人の意思に任せるべき事柄なので、主たる債務者が時効の援用や放棄をしても、その効力は保証人に及びません)。逆に保証人に生じた事由は、原則として主たる債務者には及びません(ただし、保証人が弁済または弁済に準じる行為を行った場合は、その効果が主たる債務者にも及びます)。
①成立における付従性 | 主たる債務が不成立→保証債務も不成立 主たる債務の目的・態様≧保証債務の目的・態様 |
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②存続における付従性 | 主たる債務者の主張できる抗弁→保証人も主張できる 主たる債務者が反対債権を有する→保証人は履行を拒める |
③消滅における付従性 | 主たる債務が消滅→保証債務も消滅 |
<①について>

保証債務の目的・態様が主たる債務より重いときは、主たる債務の限度に減縮されます。なお、主たる債務を後から重くした場合は、保証人にその効果は及びません。
<②について>

BがAに対し50万円の反対債権を有するとき、保証人Cは、Bの当該反対債権(50万円)の限度で履行を拒むことができます。

しかし、保証人CがAに対して50万の金銭債権を有するときに、BがCのこの50万円の債権の限度で履行を拒むことはできません。
(3) 補充性
①催告の抗弁権
債権者がいきなり保証人に請求してきたときは、保証人は、まず主たる債務者に請求せよと主張することができます。
②検索の抗弁権
債権者がまず主たる債務者に請求したうえで、保証人に請求してきた場合でも、保証人は、主たる債務者に弁済の資力があり、かつ、強制執行が容易にできることを証明して、まず主たる債務者の財産に強制執行せよと主張することができます。
3. 保証債務の範囲
①保証債務には、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償なども含む。
②保証人は、保証債務についてのみ、違約金や損害賠償額の予定をすることができる。
4. 分別の利益
共同保証の場合(1つの債務のために複数の保証人がつく場合)の各保証人は、債権額を保証人の頭数で割った額のみの保証債務を負担します。
5. 連帯保証
連帯保証も保証の1つですから、ここまでの保証に関する説明が、原則として、そのまま当てはまります。ただし、次の3点のみ、ふつうの保証と異なります。
①連帯保証人には、催告の抗弁権・検索の抗弁権がない。
②連帯保証人には、分別の利益がない。
③債権者と連帯保証人との間に更改・混同があった場合は、主たる債務も消滅する。
問題を解いてみよう!
知識の定着を
- 【Q1】主たる債務の目的が保証契約の締結後に加重されたときは、保証人の負担も加重され、主たる債務者が時効の利益を放棄すれば、その効力は保証人に及ぶ。(R2 問7)
- 【Q2】Aは、Aの所有する土地をBに売却し、Bの売買代金の支払債務についてCがAとの間で保証契約を締結した。Cの保証債務がBとの連帯保証債務である場合、Cに対する履行の請求による時効の完成猶予の効力は、Bに対してもその効力を生ずる。(H15 問7)
こう考えよう!<解答と解き方>
Answer1
【解説】主たる債務が保証契約締結後に加重されても、その効力は保証人には及びません。また、主たる債務者による時効利益の放棄も、その効力は保証人には及びません。
Answer2
【解説】連帯保証人に対する「請求」の効力は、主たる債務者には及びません。したがって、主たる債務者について、請求による時効完成猶予の効力は生じません。

植杉 伸介
宅建士・行政書士・マンション管理士、管理業務主任者試験などの講師を30年以上務める。著書に『マンガはじめて建物区分所有法 改訂版』(住宅新報出版)、『ケータイ宅建士 2021』(三省堂)などがあるほか、多くの問題集の作成に携わり、受験勉強のノウハウを提供している。