Vol.6 銀行への情報提供による関係強化は、実施目的や中身についてあらかじめよく協議し、合意しておくことが重要です
地方銀行との関係を構築・強化する手段には、取引の範囲を広げて量を増やすだけでなく、情報のやり取りを増やすことが挙げられます。「(ただ)話し合っただけ/(確か)電子メールは送ったはずだけど」としないためには、事前の協議・合意が有効です。今回は、そのためのポイントを解説します。
価値ある情報とは何か
不動産業界にも同じような実情がみられるかもしれませんが、銀行員は、業績(※名称を「目標」などにしている銀行もあります)に結び付かない活動に、総じて消極的です。それゆえに、情報のやり取りを増やすことで関係を構築・強化するためには、行員側が「前向き・積極的に取り上げたくなる情報」を取り扱う必要があります。
行員は、事業所・個人宅や店頭での顧客などとの面談時に得た情報を行内コンピュータ・システム上の「渉外(応対)記録」などに入力します。入力後には、役員や本部を含む行内関係者が内容を閲覧できるようになっているため、「これは使える」と受け止められた情報が、部門などをまたいで幅広く活用されます。したがって、やり取りする情報が価値あるものであれば、担当行員や取引店舗のみならず、銀行全体に「あそこ(あの会社)は協力的だ」と評価される可能性があるわけです。
自主目標型が主流に
そうした情報とは、具体的にどのようなものでしょうか。それは、ⓐ地域への貢献、ⓑ顧客の本業への支援、ⓒ銀行自身の収益、などにつながる情報です。少しだけややこしいところがあるため、順を追って説明させてもらいます。
前世紀までの銀行の教科書には、「『借りたい』と希望する属性の事業者の返済能力には疑義があるため、十二分に警戒して消極的に応じよ」「金融支援以外は専門外なので、口を出すな」と書かれていました。それが現在では「融資の際、担保・保証に必要以上に依存せず、顧客の本業への支援に代表される『どうしたら貢献できるか』に意識を切り替えよ」と書かれています。銀行の活動を紹介するディスクロージャー誌などでも、本業支援実績などが盛んに喧伝(けんでん)されています。
そうした中での最近の地方銀行の業績評価制度は、(業務推進部などの)本部側から一方的に「これをこなせ」等のノルマを割り当てる方式がすっかり減りました。従事幅広くみられた割当て・通知型に、各店舗が自身で目標を作成・提出する形態が取って代わるようになったのです。
移行理由は、地域の事情を一番よく理解しているのは店舗自身なのだから、そこから導き出される期待値(=目標)を自身で考案したほうが納得感を得られるはずだ、というものです。そんな自主目標には、「預金や融資を幾ら獲得する・伸ばす」等の数値のみならず、「地域や顧客の満足度向上などをもたらす・助ける」等の情報を含める銀行が大宗(たいそう)を占めています。
あらためて言うまでもなく、事業者のニーズはその数だけ異なり、環境の変遷などに応じて刻一刻と変化し続けます。よって、それらをとらえて全体像を俯瞰(ふかん)した上で優先順に沿って計画化するだけでも、対応する店舗にとってはかなりの負担になります[図表]。
図表 地方銀行での業績目標の策定[イメージ/例示]
![図表 地方銀行での業績目標の策定[イメージ/例示]](https://magazine.zennichi.or.jp/wp-content/uploads/2026/02/202602_maruhi1.webp)
それゆえに、計画化自体を助けることができれば、地方銀行との接点強化につながります。単に「不動産を売りたい(買いたい)希望者がいる」という情報ではなく、先に挙げた、ⓐ地域への貢献、ⓑ顧客の本業への支援、ⓒ銀行自身の収益、につながる不動産情報のやり取りが求められるわけです。同一の不動産情報であっても、「特定の切り口(つまりは銀行の捉え方)に該当する」と受け取られることで、情報自体にも、それをもたらした相手方の評価が大きく高まる可能性があるのです。
具体的言及が有効
そのためには、情報のやり取りに先んじて、銀行側が欲する情報の切り口を具体的に把握することが有効です。そうした一方で、行員の能力にも大幅な差異が認められ、「情報=銀行が取り扱っている(預金や融資などの)商品に対する関心・販売見込み」としか認識できない低水準の行員も珍しくありません。目標の背景や意図を読み込んで理解するのにも、読解力が必要となりますが、銀行ではそこまで細かい教育は実施していません。
対応能力が不十分な行員と情報の切り口を協議しても、短時間で生産的な結論には至りませんが、あからさまな批判も角が立ちます。よって実務上では、必要に応じ、渉外の責任者(役席者)など一定の権限者の同席を求めた面談を求めることが現実的です。小型店舗などでは、支店長の同席を求めてもよいでしょう。
面談時には、駆け引きを行わず、「情報のやり取りを活発化させることで銀行に協力し、もって関係の強化を図りたい」と明言されることが一案となります。その上で、銀行側が(特に)求めている情報と、過去の(他社等との)やり取りで特に評価した実例などを照会しておくとよいでしょう。
面談時には一方的に照会だけを行うのではなく、不動産事業者各位側の希望や、その理由をできるだけ具体的に伝えることにもご留意ください。それにより、銀行・行員側が「事業者側が求めている情報を提供する=本業支援に寄与する」実績余地あり、と受け止める可能性があるためです。
年明け以降は、来年度の業績目標設定が本格化しますので、面談に適した時期となる可能性があります。特定の担当者や店舗だけでなく、地方銀行全体との関係の構築・強化を図る上では、近隣にこだわらず、あえて遠隔地の情報などをやり取りすることも一案となります。


オペレーショナルデザイン㈱
取締役デザイナー/データアナリスト
佐々木 城夛(じょうた)
1990年信金中央金庫入庫。欧州系証券会社(在英国)Associate Director、信用金庫部上席審議役兼コンサルティング室長、静岡支店長、地域・中小企業研究所主席研究員等を経て2021年4月に独立。「ダイヤモンド・オンライン」(ダイヤモンド社)、「金融財政ビジネス」(時事通信社)ほか連載多数。著書に「いちばんやさしい金融リスク管理」(近代セールス社)ほか。 https://jota-sasaki.jimdosite.com/