Vol.8 収益物件の修繕資金の借入れ方法にも、さまざまな選択肢があります
銀行と銀行グループ会社が取り扱う商品は順次拡大しており、条件など細かい部分も変化し続けています。一方、個々の行員には「今はこれを売れ」という指示・命令が出されており、利用者側が気を遣って取引を増やしても、全て喜ばれるとは限りません。よって、関係を強化しようとする目線では、時として「欲しているものに応じて貸しを作る」ことも有効となります。
今回は、修繕資金の借入れをめぐる”銀行との関係強化術”について述べます。
厳格化するマネー・ローンダリング対策
現在の地方銀行が、取引時に最も留意している事項の1つに、マネー・ローンダリング対策が挙げられます。マネー・ローンダリング自体は、銀行取引を含む資金のやり取りを偽装することで、敵国・テロリスト・犯罪者などに活動資金が供給されることです。銀行は、金融当局から何としてもそれを排除するよう繰り返し指示・命令されています。
2018年には、愛媛銀行でのマネー・ローンダリングによって5億円超が香港経由で北朝鮮に流れた事件が報じられており、同行が監督当局から厳しい叱責を受けたことが想像に難くありません。地方銀行側の目線では、明日はわが身なのです。
筆者も小さな会社の経営陣に名を連ねているため、利用者として簡単な事務手続きや照会を行うべく、取引銀行の店舗を訪れることがあります。こうした際に、待たされたくないため開店前に並ぶと、待機中の人の列の中に、身なりの整った外国人来店者を見ることが珍しくありません。そうした来店者は、9時の開店後に一目散に上階へ向かうため、外国為替等の依頼とそれに伴うマネー・ローンダリングの審査を受けていると見込まれます。
マネー・ローンダリングは、融資・預金・為替取引の際に使途などの真実を申告せず、取引相手の銀行を欺いて実行されます。よって銀行としては、申告された資金使途が本当にそのとおりなのかを確認する必要があり、近年はそれがより厳格化しているわけです。
読者各位が収益物件の資金使途違反で思い出されるのは、住宅金融支援機構(以下「支援機構」)の個人向け商品の不適正利用ではないでしょうか[図表1]。2025年にも不適正利用関与者の逮捕がみられており、問題の根深さがうかがえます。
図表1 近年の支援機構を巡る不適正利用[抜粋]
![近年の支援機構を巡る不適正利用[抜粋]](https://magazine.zennichi.or.jp/wp-content/uploads/2026/06/202606_maruhi.webp)
資金使途には曖昧さあり
銀行は、一度でも相手に覚えた不信感は忘れず、その後も極めて長期にわたって相手方を疑い続け、後任者にもそれを引き継ぎ続けます。たとえ確証をつかみ切れずとも、疑わしいだけで取引を打ち切ることもあるため、不信感を与えることは得策ではありません。
そうした一方で資金使途には曖昧さもあり、外部からはややわかりにくいところがあります。商品・サービスと資金使途は、「特定の商品・サービスを利用できる資金使途には(一定の)制限があるものの、特定の資金使途に応じた商品・サービスには選択余地がある」という関係です[図表2]。これらを念頭に置いた上で、銀行との面談に備えてください。
図表2 商品・サービスと資金使途

収益物件の修繕についても、商品に選択肢があり、おのおのに長所と短所があります[図表3]。利用者目線では、資金調達希望時期・修繕規模と調達所要金額・利益水準から見た損金算入限度額(≒支払金利)等があるため、それらに沿った選択が求められます。
図表3 収益物件の修繕時に利用可能な融資商品[概要]
![図表3 収益物件の修繕時に利用可能な融資商品[概要]](https://magazine.zennichi.or.jp/wp-content/uploads/2026/06/202606_maruhi3.webp)
時には損して得を取る
こうした際にも、取引である以上は銀行側と関係を強化する余地があります。㋐自己資金だけで対応できるところ、あえて少額を借り入れて銀行側に「貸し」を作るほか、㋑融資取引のない銀行との取引のきっかけとする、ことなどが代表的です。
前者㋐では、いかに貸し(=善意の協力)であると認識させ、刷り込めるかがポイントになります。担当者だけに感謝されても、その事実を都合よく報告されてしまえばそれだけで終わりかねないため、①どの商品の取引が欲しいか・売れなくて困っているのかを聞き、その上で、②あえて店舗に行って支店長等を含む複数で契約する演出が有効です。
後者㋑では、過去に取引を打診された銀行等に「話を聞いてみたい」と声掛けすることが有効です。条件が極めて良い場合には、「現在利用中の設備資金融資+修繕費」の合計額で借り換えて、全体の金利水準などを引き下げる余地もあります。
行員の本音は、マネー・ローンダリング審査が「嫌で嫌でしょうがない」というものです。それゆえに、わずかでも疑われず、手間を掛けさせないだけで「信頼できる相手」と距離が縮まります。

オペレーショナルデザイン㈱
取締役デザイナー/データアナリスト
佐々木 城夛(じょうた)
1990年信金中央金庫入庫。欧州系証券会社(在英国)Associate Director、信用金庫部上席審議役兼コンサルティング室長、静岡支店長、地域・中小企業研究所主席研究員等を経て2021年4月に独立。「ダイヤモンド・オンライン」(ダイヤモンド社)、「金融財政ビジネス」(時事通信社)ほか連載多数。著書に「いちばんやさしい金融リスク管理」(近代セールス社)ほか。 https://jota-sasaki.jimdosite.com/