Vol.45 売買重要事項の調査説明 ~現地照合確認調査編⑤~
売買重要事項の地中埋設物調査の仕方


過去に中古住宅の敷地として利用されてきた土地の品質や性能に関する不動産トラブルを抱えている業者は、少なくありません。本編では、「地中埋設物に関する宅地の品質や性能」に関する現地照合確認の方法について述べます。

地中埋設物の確認調査について

「地中に埋設されていたものがどのようなものであったか」などについて、取引対象地の現場を見ただけでは、わからない場合が多いというのが実感です。そこで、売主から、しっかりと聞き取りを行うことが必要になります。その際、過去に存在した建物の種類や用途によって、地中埋設物が異なってきます。

例えば、調査対象地が「過去にドライクリーニング店があって営業をしていた」という場合には、工業用の浄化槽が地中に埋設されており、通常の汚水のための浄化槽と異なって規模が大きいため、そのまま残置していることがあります。そうすると、完全な地中埋設物となります。また、「旅館やホテルが建っていて、営業をしていた土地」という場合には、「地中に貯水槽や重油・灯油などのための地下タンクを埋設していた」ということが想定されます。このように、売主から過去の土地の利用状況を聞き出せるときは、地中埋設物の可能性を知ることは容易です。しかし、売主がその土地のことについて、ほとんど知らされていない人の場合は、「建物の履歴調査」をする方法があります。

建物の履歴調査の仕方とは

法務局において、「建物の底地上の閉鎖登記簿謄本」を入手します(図表1)。この場合の「底地」とは、「建物の所在した土地」のことですので、黒い色の帯のある申請書に、「土地の所在地番」を記載し、「建物の家屋番号」はわからないので空欄にし、その箇所を○で囲んで、下に線を引き、( )を記入して、「閉鎖された底地建物すべて」と記載をして、「建物の区分」にレ印を記入します。そして、一番下の位置の「合筆、滅失などの閉鎖登記簿」にチェックを入れて提出します。提出の際、「コンピュータ内の探索だけではなく、コンピュータ外もお願いします」と依頼します。この方法により、過去にあった建物の用途は、「ホテル、旅館、店舗、工場、居宅」などということがわかります。住宅であっても、建物の構造が「地下1階」が付属していれば、「地下室の撤去が行われたか否か」ということが重要な事項となります。これを「建物の履歴調査」といいます。もちろん、宅建業者の通常の不動産業務では、過去の履歴調査までも求められてはいませんので、オプション調査扱いとなるでしょう。しかし、少なくとも売主からの聞き取りは必要でしょう。この調査は、重要な事項ですが、聞き取りをうっかり忘れることがあるため、「売主の不動産情報告知書」に、あらかじめ「過去にあった建物の用途を知っているか」などの項目を追加しておくことが大切です。

図表:1 登記簿謄本・抄本交付申請書の例

登記簿謄本・抄本交付申請書の例

旧建物の残置物の混入した土壌

過去に、住宅、ビル、店舗、工場などが存在し、利用されてきた土地の土壌には、さまざまな生活用品や日常で使用されてきた道具などが混入しているものです。一見、きれいに外見が整っている宅地の売買などでは、一般消費者は、「宅地の土壌には異物などは混入していない。きれいな土壌である」と、思い込んでいる場合があります。このようなときに限って、不動産トラブルが発生します。買主は、購入した敷地の庭先付近で、「植樹のために穴を掘ったら、建物の廃材やがれきが大量に出てきた。撤去するのに60万円支出した。この損害は宅建業者が支払ってください」という争いに発展します。

中古住宅における契約の内容に適合する土地の品質・性能を有する土地とは

このようなトラブルの防止対策のために、売買契約書の特約に、以下のような特約条項を追記しておき、取引当事者間で土地の品質・性能に関する合意を得ておくことは、ひとつの有効な対策です。

「“中古住宅における契約の内容に適合する品質・性能を有する土地”とは、建物解体時における建築部材の破片、断片、敷地利用者が使用した小石・レンガ等の類似品、生活用品の一部等の異物が含まれており、均一な粒子の土砂ではないという状況にあるものをいいます」。

ポイント

地中埋設物には、現地調査ですぐに判別できる場合がありますが、このビジネスホテルの事例では、写真1のように、よく観察しなければ見落としてしまいそうな位置に給油タンクの給油口が隠れるようにありました。
写真2は、灯油の給油口ですが、見落とさないように注意深く観察します。

地中埋設物
(写真1)
地中埋設物
(写真2)

津村 重行

不動産コンサルタント

津村 重行

三井のリハウス勤務を経て有限会社津村事務所設立。2001年有限会社エスクローツムラに社名変更。消費者保護を目的とした不動産売買取引の物件調査を主な事業とし、不動産取引におけるトラブルリスク回避を目的に、宅建業法のグレーゾーン解消のための開発文書の発表を行い、研修セミナーや執筆活動等により普及活動を行う。著書に『不動産物件調査入門 実務編』『不動産物件調査入門 取引直前編』(ともに住宅新報出版)など。