Vol.55 売買重要事項の調査説明 ~法令調査編②~
都市計画街路等の関係法令の調べ方


都市計画街路等の関係法令について、顧客に説明すべき事項、法令の適用対象、そして許可の基準などについて、効率的に情報を集める必要があります。しかし、実務の場所では取り扱いが煩雑なため、調査の仕方がわかりにくいのが実情です。
本節では、都市計画街路等の関係法令を中心に調査の仕方について述べます。

都市計画街路の説明を怠ったら?

こんな事件がありました。

「買主は、永住する居宅の敷地として使用する目的で、そのことを表示して売主から買い受けたのであるが、本件土地の約8割が東京都市計画街路補助第54号の境域内に存するというのである。かかる事実関係のもとにおいては、本件土地が東京都市計画事業として施行される道路敷地に該当し、同地上に建物を建築しても、早晩その実施により建物の全部または一部を撤去しなければならない事情があるため、契約の目的を達することができないのであるから、本件土地に瑕疵があるものとした原判決の判断は正当であり、所論違法は存しない」(昭和41年4月14日最高裁)。

これは、都市計画街路の計画内容の説明をしなかったために起きた損害賠償の事件です。

計画街路内における建築行為の許可申請書の取得

都市計画街路や都市計画公園などが取引対象敷地に含まれている場合は、その名称、計画幅員、事業実施予定の有無、事業完了予定年月日などの聞き取り事項は、必須の調査項目です。

「都市計画施設の区域または市街地開発事業の施行区域内において建築物の建築をしようとする者は、都道府県知事等の許可を受けなければならない」(都市計画法第53条)として、許可が必要になるため、「法53条許可申請書」を取得します。

建築行為の許可基準の概要

建築物の建築の際に、許可基準として、「当該建築物が次に掲げる要件に該当し、かつ、容易に移転し、または除却することができるものであると認められること」(法第54条)が都市計画法において定められています。

イ 階数が2以下で、かつ、地階を有しないこと。
ロ 主要構造部が木造、鉄骨造、コンクリートブロック造、その他これらに類する構造であること。

そのほか、市区町村によっては、「高さを12m以下とする」「階数が3以下で、かつ、地下を有しないもの」など、それぞれ異なった定めをしているところもありますので、担当課では、必ず、許可基準の内容を確認して、顧客に説明できるようにすることが大切です。

計画決定での建築規制の概要

都市計画施設の計画決定の段階では、建ぺい率や容積率算出の敷地の範囲は、従来どおり、敷地全体を対象として確認申請ができます。また、斜線制限は既存道路においての適用となります。ただし、都市計画施設の区域内において、建築物の建築を計画する場合は、法53条許可申請が必要になります。

事業実施決定での用地買取り

都市計画施設の計画において、事業実施が決定されている場合は、「都道府県知事等は、事業予定地内の土地の所有者から、建築物の建築が許可されないときはその土地の利用に著しい支障を来すこととなることを理由として、当該土地を買い取るべき旨の申出があった場合においては、特別の事情がない限り、当該土地を時価で買い取るものとする」(法56条)としており、事業区域内での建築物の建築は、事実上制限され、買取価格の提示等が土地所有者に対して行われている可能性があるため、その際は、買取り交渉の進捗状況についても、売主からの情報として確認する必要があります。

事業実施決定後の建ぺい率

事業実施決定の段階では、建築物の建築の際、事業予定区域の部分は、敷地面積に算入できないため、建ぺい率や容積率の計算の際には、この部分を算入して計算することはできません。道路幅員は、計画街路等が前面道路として、斜線制限が適用されます。

事業実施決定後の基準法上の道路の該当規定

事業が実施決定された後は、計画街路の工事の進捗状況により、交付可能な範囲での計画街路の正確な図面を入手する必要があります。道路は、建築基準法第42条第1項第4号の道路に該当するようになりますが、現況の交通状況などにより決定されます。このため、建築確認の担当課で、「建築基準法上の該当道路はどこか、該当道路の範囲はどこからどこまでか」と照会して回答を得ることが大切です。その際は、現況の道路の状況がわかる写真をスマホ等に持参して照会すると、回答を得やすくなります(ポイント参照)。

ポイント

下記の都市計画街路は事業実施中で、事業完了予定年月が告示されています。担当課では、「現に利用されている道路と拡幅された道路を含めて、法第42条第1項第1号に該当する」としています。建築基準法上の道路の該当規定の調査は大切です。

都市計画街路

津村 重行

不動産コンサルタント

津村 重行

三井のリハウス勤務を経て有限会社津村事務所設立。2001年有限会社エスクローツムラに社名変更。消費者保護を目的とした不動産売買取引の物件調査を主な事業とし、不動産取引におけるトラブルリスク回避を目的に、宅建業法のグレーゾーン解消のための開発文書の発表を行い、研修セミナーや執筆活動等により普及活動を行う。著書に『不動産物件調査入門 実務編』『不動産物件調査入門 取引直前編』(ともに住宅新報出版)など。