Vol.15 不動産物件調査技術の基礎 ~役所調査編~
道路の種類と管理者の調べ方


不動産物件調査では、道路調査を避けて通ることはできません。道路には様々な種類があり、ほとんどの場合、取引対象物件の敷地の前にあります。十分、その性質を知っておくことが、敷地と道路の関係を特定するうえで、重大なカギとなります。今号は、道路法上の道路の基本的なポイントについて述べます。

“公衆用道路”は“公道”とは限らない

道路調査の開始は、法務局で公図の道路部分に地番が付されている場合、道路部分の登記事項証明書を取得することから始めます。地番のない道路は、原則、国有地扱いとなるため、市に移譲済みかどうかは、道路管理の担当課で確認します。

登記事項証明書を取得してから最初に確認することは、所有者の欄です。「○○市」「○○県」「建設省(国土交通省)」などの公共の行政機関の名前が記載されているかどうかを見ます。公共機関であれば、いわゆる“公道”ということになります。一方で、表題部に“公衆用道路”と記載されていることがあります。登記事項証明書の表題部の地目の欄にそう書かれていることで、「前面道路は公衆用道路ですので『公道』です」とお客様に伝えてしまう人がいます。

ここに、大きな問題があります。登記官の事務手続きを規定するための不動産登記事務取扱手続準則第68条には、「次の各号に掲げる地目は、当該各号に定める土地について定めるものとする。この場合には、土地の現況及び利用目的に重点を置き、部分的にわずかな差異の存するときでも、土地全体としての状況を観察して定めるものとする」とあり、田から雑種地までの23個の地目について、用語の定義が定められています。同条第21号の“公衆用道路”は、「一般交通の用に供する道路(道路法による道路であるかどうかを問わない。)」とされています。つまり、道路法の高速自動車国道、一般国道、都道府県道、市町村道にこだわらないのです。このため、個人が所有する“私道”でも“公衆用道路”と登記されることもあります。そうすると、“公衆用道路”と表示されていたとしても、私道ならば“公道”とはいえません。このことが最初の大切なポイントです。

“認定公道”と“認定外公道”の違い

所有者が行政機関である場合の“公道”の場合、道路法から見ると、“道路である”場合と“道路ではない”場合があります。市道と呼ばれるものは、道路法上、路線名、起点、終点、重要な経過地道路などを定めて、議会の議決を得て、市道に認定されます。この市道は“認定公道“といいます。一方、行政機関が所有している“公道”であっても、いまだ、市道に認定されていない道路があります。これらは、“認定外公道”といいます。

将来、認定される道路と財産処分される道路

認定外公道には、「今はまだ、市道に認定されていないけれど、いずれ、将来、市が認定するかもしれない道路」があります。その中には、維持管理が可能な条例で定めた「条例指定道路」(ポイント1)があり、「市長は、条例により路線を指定したときは、その路線の名称、起点、終点、法定外道路の区域などの事項を告示しなければならない」(千葉市の例・法定外道路条例第3条第1項)などとされています。この道路は、市道認定されている道路に準ずる道路であるため、「認定はされてないが条例指定された道路」で、しっかりした道路です。

一方、認定外公道のうち、「道路は確かに存在するが、どこかの民家の下に入り込み、現況は、位置、形さえも確認できないなど、将来的にも市道に認定できる見込みが全くない道路」があり、これは道路の財産として市が保有しているものの、管理や利用の見込みがないなどの場合、「市が財産放棄する可能性」のある道路もあります(ポイント2・3・4)。

このように、道路の種類や性質を確認することは、道路調査の基本であり、敷地と道路の関係を特定するための重大な情報となります。

ポイント1

下の写真のように、目視では何の変哲もない普通の認定道路に見えますが、この道路は、市道に認定されていない「条例指定道路(認定外公道)」です。

ポイント1

ポイント2

この公図の地番「27-29」にはアパートが建築されていますが、この敷地には官有地という「認定外公道」が含まれています。将来的にも、道路になる見込みがない土地です。

ポイント2

ポイント3

ポイント2の公図の道路部分(官有地と記載された道路)は、おおむね下の写真の赤い点線部分の位置で、「認定外公道」のままアパートの敷地に利用されています。

ポイント3

ポイント4

ポイント2、3の認定外公道は、下の空中写真の部分に位置しており、現在のアパートの敷地に利用されています。

ポイント4

不動産コンサルタント

津村 重行

昭和55年三井のリハウス入社。昭和59年に不動産物件調査業(デューデリジェンス業)に注目し、消費者保護を目的とした不動産売買取引の物件調査を主な事業とする有限会社津村事務所を設立。研修セミナーや執筆活動等を行っている。著書に『不動産調査入門基礎の基礎4訂版』(住宅新報出版)などがある。