Vol.17 不動産物件調査技術の基礎 ~役所調査編~
指定道路と建築基準法第42条の規定による道路


建築基準法(以下「建基法」という)第42条第1項第1号や第2号の道路は、建基法の中では代表的なものですが、不動産調査においては、建基法と道路法上の道路幅員等、混同しやすい箇所があるため、基本的な知識を、十分理解しておくことが大切です。

指定道路の定義

最初に、“指定道路”という言葉を、不動産調査の過程で耳にすることがありますが、どことなく理解しにくいですね。国土交通省は、「建築基準法道路関係規定運用指針(平成21年1月20日)」(以下「指針」という)を、全国の都道府県および政令指定都市の首長宛てに、技術的助言として通知しています。同指針によると、「指定道路とは、建築基準法第42条第1項第4号もしくは第5号、第2項もしくは第4項または法第68条の7第1項の規定による指定に係る道路」と定義しています。したがって、「1号道路」と呼ばれる建基法第42条第1項第1号道路や、2号、3号道路などは、この「指定道路」に含まれていません。

建基法第42条第1項第1号(1号道路)

この1号道路は、道路法による道路でもあり、道路法上の道路は、一般交通の用に供する道で、高速自動車国道、一般国道、都道府県道および市町村道をいいます。一方、建基法上の道路は、一般交通上の効用だけでなく、建築物の利用上支障がないことや非常時における防火、避難等安全上支障がないことを要件としています。このため、道路法による道路のうち、高速自動車国道は自動車専用道路ですので、建基法上の道路には含まれません(ポイント1)。

側溝や水路がある場合について

建基法第42条第1項においては、原則、道路の幅員が4m以上のものが建基法上の道路である旨を定めていて、この道路の幅員とは、一般交通の用に供される部分をいい、側溝はこれに含まれますが、法敷(のりじき)は含まれません(ポイント2)。ただし、指針においては、「道路法による道路と平行して水路等が存在する等の場合は、当該道路の幅員と当該水路等の幅の合計が4m以上であっても、当該道路のみの幅員が4m以上でなければ建基法上の道路ではない」としています。しかし、各地の行政機関では、この指針とは異なり、当該地域に適応した処理をしているところがあるのが現実です。このため、側溝や水路が存在する場合は、自己判断をせずに、建築確認の相談担当部署を訪ねて、直接確認することが必要です(ポイント3)。「水路幅員が2mを超えるときは、水路は道路幅員に含まれない」とする行政もあります。

建基法第42条第1項第2号(2号道路)

2号道路は、都市計画法、土地区画整理法、旧住宅地造成事業に関する法律、都市再開発法、新都市基盤整備法、大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法または密集市街地整備法による道路です。例えば、建基法第42条第1項第2号に規定する都市計画法による道路とは、都市計画事業として整備されたものや都市計画法第29条許可を受けて開発行為により整備された道路、また、土地区画整理事業によりできた道路などです。

ここで、注意したいことがあります。道路については、工事完了後は市に移管するという協定を締結しますが(建基法第42条第1項第1号道路になるということ)、都市計画法第29条許可の取得後、工事も事実上完了したところで、建基法第42条第1項第2号に該当したのに、後日、施工不備が発覚し、市に移管できない状態となり、建基法第42条第1項第1号にはならずに、時が経過してしまったという開発物件がありました。したがって、開発行為を伴う取引対象物件の売買では、市への移管等が行われることが確実であることを開発担当部署および道路維持管理担当課で確認することが、不動産調査では大切なことです。

ポイント1

建基法上の道路は、一般交通上の効用だけでなく、建築物の利用上支障がないことや非常時における防火、避難等安全上支障がないことを要件としています。したがって、自動車専用道路の高速自動車国道は、建基法上の道路には含まれません。

道路法上の道路の種類に含まれる「高速自動車国道」

ポイント2

建基法上の道路の幅員とは、一般交通の用に供される部分をいい、側溝はこれに含まれますが法敷は含まれません。下の図の場合、道路法上の道路幅員は4.5mですが、建基法上の道路幅員は、4.0mとなります。

ポイント3

指針では、「道路法による道路と平行して水路等が存在する等の場合は、当該道路の幅員と当該水路等の幅の合計が4m以上であっても、当該道路のみの幅員が4m以上でなければ建基法上の道路ではない」とされています。しかし、水路が暗渠(あんきょ)となっていれば建基法上の道路幅員とする、また、水路の幅員が2mを超えるなどの場合は建基法上の道路幅員に含まれないなど、行政機関により判断が一定していないため、建築確認担当課で、必ず確認が必要です。


不動産コンサルタント

津村 重行

昭和55年三井のリハウス入社。昭和59年に不動産物件調査業(デューデリジェンス業)に注目し、消費者保護を目的とした不動産売買取引の物件調査を主な事業とする有限会社津村事務所を設立。研修セミナーや執筆活動等を行っている。著書に『不動産調査入門基礎の基礎4訂版』(住宅新報出版)などがある。