Vol.78
従業員が知りたい不動産調査基礎編⑮
現地照合調査が必要な添付書類について!
不動産売買契約締結が間近になり、入手した書類を現地照合すると、契約不適合の事実が判明する場合があります。この不動産の「現地照合調査の方法や業務範囲」は、ガイドラインもなく、あいまいなままです。本章では、この「現地照合調査業務」について述べたいと思います。
現地照合調査で大幅な敷地後退義務が発覚!
こんな事件がありました。
不動産実務においては、「法務局や管轄の役所が交付した書類だから、無条件で信用できる」と、誰もが考えてしまうかもしれません。しかし、「道路境界確定図の書類を現地照合したところ、道路との境に設置されているブロック塀の所在位置が大きく道路側に出ており、現在の所有権として使用している敷地部分は、実際には、約40cmも大幅に敷地後退をしなければならないこと」がわかったという契約不適合事例があります。仲介業者が、このような情報を重要事項説明しなかった売買では、説明義務違反を問われることになります(下記、ポイント参照)。
法務局の交付書類の現地照合調査とは!
「地図」は、「登記所備付地図がある場合には、右地図と現地の状況を方位や道路、隣地との位置関係等から照合して土地の特定を行うのが通常の調査方法と考えられる」(平成9年7月15日最高裁)ため、現地照合は必須業務です。
- 「確定地積測量図」は、現況と相違している場合は、「現況の土地には契約不適合あり」となるため、現地照合は必須業務です。
- 「登記所建物図面」は、建物外壁からの実測値などを基に作成された図面のため、現況と相違している場合は、増築や改築の可能性が高く、現地照合は必須業務です。
- 「登記事項証明書」は、「公正証書原本の写し」として、「登記された事実を証明する書類」のため、「これを信用して取引することに、取引当事者に過失がない」とされています。
現況検査を経ていない役所交付書類とは!
役所交付の書類には、大きく分類すると、「許可申請の際の添付書類」や「届出の際の添付書類」があります。
「現況の許認可の審査を経ていない書類」や「申請人が記述した届出書類」は、現況と書類とが照合一致しているという確証はありません。現地照合をして相違を発見したときに間違っているのは、「物件側か書類側か」は不明のため、現地照合は必須業務とはなりません。
現況検査を経た役所交付書類の現地照合とは!
現況の審査、検査の合格証を取得した土地、建物の位置、形状等については、現況と照合一致していることが前提のため、現地照合は必須業務です。
たとえば、「建物の検査済み証付き建物配置図、設計図」「工事完了検査済み開発計画図面」「区画整理換地処分後の換地図」等が該当します。ここでのポイントは、「敷地図面に座標値が掲載されていない時期のもの」は、現況と相違していることが多いため、現地照合の調査は参考程度にとどまります。
役所交付の法規制の証明情報書類がある!
法規制の証明情報としては、「都市計画街路証明書」「計画街路計画図」「市街化区域証明書」「公有地拡大推進法に基づく行政が買取をしない旨の通知書」「国土利用計画法に基づく土地売買届出書」「農地転用受理通知書」「緑化確約書」などがあります。
これらの書類は、現地照合をするまでもなく、法規制の状況について、書面で重要事項説明をするために必要な添付書類です。
電気・ガス・給排水施設の埋設図面の現地照合とは!
電気、ガス、水道、排水施設の埋設図面は、工事の申請人の設計図面が管轄部署に保管されており、交付図面には、「現況と相違している場合があるため、現地の施設を必ず確認してください」と注釈を付加されます。
しかし、宅建業者は、目視で現地調査をしているため、水道局の量水器、止水栓、ガス埋設位置を示すポール、汚水公設桝(ます)、雨水桝などの所在を確認できた場合、現地照合は必須業務です。
たとえば、「下水道埋設図面には公設桝の所在位置が記載されているのに、現地では、公設桝を目視で確認することができない」という場合、下水道維持管理担当課に、「実際はどういう状況になっているか」と、照会をして、「調査結果を重要事項説明すること」が大切です。
宅建業法に定める「敷地と道路の関係調査」とは!
宅建業法施行令第3条に定める「敷地と道路との関係」(建築基準法第43条)は、「現況において、建築物の敷地が道路に接していること」を求める法令であるため、「敷地と道路の関係」は、重要事項説明書書式の必須項目としています。しかもこの法令は、現況において、再建築をする際に、条件を満たしていることが必須要件であるため、事実上、「現地調査を義務付け」ています。このため、敷地や道路に関する図面が、一切、発見できない場合においても、現地調査は必須業務となります。
以上のことから、“現地照合調査”が必要な書類とは、「地図」「境界確定済みの敷地や道路の地積測量図」「登記建物図面」「検査済みの設計図書類」「工事完了検査済みの開発計画図面」などの物件情報が確定した書類が、その主な書類と考えられます。
ポイント
写真の物件は、「敷地と道路の関係」で道路境界線が確定しており、現地照合調査をすると、写真のように、約40cmも敷地後退した境界線が道路境界となるため、再建築の際、道路内に所在することとなったブロック塀や玄関シャッター等を撤去する必要が生じています。


赤い点線が道路境界線になります。

不動産コンサルタント
津村 重行
三井のリハウス勤務を経て有限会社津村事務所設立。2001年有限会社エスクローツムラに社名変更。消費者保護を目的とした不動産売買取引の物件調査を主な事業とし、不動産取引におけるトラブルリスク回避を目的に、宅建業法のグレーゾーン解消のための開発文書の発表を行い、研修セミナーや執筆活動等により普及活動を行う。著書に『不動産物件調査入門 実務編』『不動産物件調査入門 取引直前編』(ともに住宅新報出版)など。