Vol.80
従業員が知りたい不動産調査基礎編⑰
動産譲渡の登記記録の調べ方とは!
“動産譲渡登記”は、あまり知られていませんが、法務省発表の「2024年登記事件の件数及び個数」を見ると、全国で約82,000個の動産譲渡登記が行われています。動産譲渡登記は、通常の不動産の一部に属しているにもかかわらず、目視では確認できないため、見落とせば契約不適合のトラブルに発展します。
店舗や工場・倉庫内にある機械設備が第三者に譲渡?
以下のようなケースが想定されます。法人企業が所有する店舗・喫茶店の売買契約が締結され、所有権移転登記も実施され、引き渡しも行われたところ、第三者がやってきて、「店舗内にある冷蔵庫、喫茶道具、コップ、食器などの全ての設備は、私の所有物ですので、勝手に触らないでください」と、苦情が出されるというもの。
こんな事件に遭ったら大変ですが、土地建物の登記事項証明書には、一切、そのような表示はないため、通常の不動産売買のための不動産調査では発覚しません。
このため、これらの事実を確認するためには、「動産譲渡登記事項概要ファイル」の申請をする必要があります。
動産譲渡登記制度とは?
法務省では、”動産譲渡登記制度”について、次のように述べています。
「動産を活用した資金調達の具体的な方法としては、企業が動産を譲渡担保に供して金融機関等から融資を受ける方法と、動産を流動化・証券化目的で譲渡し、譲渡代金として資金を取得する方法とがありますが、いずれの方法においても、動産自体は、譲渡後も企業の直接占有下に置かれたままとされるのが通常です。このような場合、本制度創設前は、占有改定(民法第183条)という外形的には判然としない公示方法によって対抗要件を具備するしかなかったため、後日、占有改定の有無・先後をめぐって紛争を生ずるおそれがありました。そこで、このようなおそれを極力解消し、動産を活用した企業の資金調達の円滑化を図るため、平成16年11月25日に「債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律の一部を改正する法律」が成立し、「法人が動産を譲渡した場合において、当該動産の譲渡につき動産譲渡登記ファイルに譲渡の登記がされたときは、当該動産について、民法第178条の引渡しがあったものとみなす」(第3条・動産の譲渡の対抗要件の特例等)とし、平成17年10月3日、「動産・債権譲渡登記規則」(第16条・登記の方法)は、「登記をするには、動産譲渡登記ファイル又は債権譲渡登記ファイルに記録しなければならない」として、動産譲渡登記制度の運用が開始されました」。
動産譲渡登記の有無の調べ方とは?
動産譲渡の登記記録の有無が問題となる場合とは、「法人が所有する店舗・事務所・工場・倉庫等の室内に存在する機械・設備等の動産類が存在する場合の不動産取引に該当する場合」です。
動産譲渡登記の記録の有無を確認するためには、「動産譲渡登記事項概要ファイル」の申請をしなければ、情報を知ることができません。
申請方法は、法務局の受付カウンターに置かれている「会社法人用」の「青い色の登記事項証明書交付申請書」の用紙で、会社の名称、会社の所在地などを記載し、①の全部事項証明書では、「現在事項証明書」にチェックを入れ、請求通数を1通等とし、一番下の⑤の概要記録事項証明書では、「動産譲渡登記事項概要ファイル」にチェックを入れ、請求通数を1通等としてポイント1の見本のように申請します。
会社の現在事項証明書は600円、動産譲渡登記事項概要ファイルは300円の費用です。
記録がない場合は、ポイント2の見本のように「動産譲渡登記事項のないこと証明」が交付されます。
一方、記録がある場合は、ポイント3の見本のように、動産譲渡登記の譲受人の氏名などの情報が記載されます。
このような情報については、不動産取引における重大なリスク情報として、宅建業者は理解しておくことが大切です。

不動産コンサルタント
津村 重行
三井のリハウス勤務を経て有限会社津村事務所設立。2001年有限会社エスクローツムラに社名変更。消費者保護を目的とした不動産売買取引の物件調査を主な事業とし、不動産取引におけるトラブルリスク回避を目的に、宅建業法のグレーゾーン解消のための開発文書の発表を行い、研修セミナーや執筆活動等により普及活動を行う。著書に『不動産物件調査入門 実務編』『不動産物件調査入門 取引直前編』(ともに住宅新報出版)など。


