Vol.81
従業員が知りたい不動産調査基礎編⑱
大規模盛土造成地は全国に51,306カ所!
安全に居住するためには安定した宅地地盤に居宅を建築することが大切ですが、地盤が崩落や滑動の恐れがあるといわれている「大規模盛土造成地」は、全国に51,306カ所も存在しています。宅建業法に定める「造成宅地防災区域」と併せて、対応が必要です。本節では、この「造成宅地防災区域」と「大規模盛土造成地」について述べます。
造成宅地防災区域とその指定基準とは
「造成宅地防災区域」は、宅建業法第35条の「宅地建物取引業者の相手方等の利益の保護に資する事項」として、「当該宅地又は建物が宅地造成及び特定盛土等規制法により指定された造成宅地防災区域内にあるときは、その旨」(宅建業法施行規則第16条の4の3)の定めがあり、重要事項の説明義務の対象となっています。「都道府県知事は、基本方針に基づき、かつ、基礎調査の結果を踏まえ、この法律の目的を達成するために必要があると認めるときは、宅地造成又は特定盛土等に伴う災害で相当数の居住者等に危害を生ずるものの発生のおそれが大きい一団の造成宅地(宅地造成等工事規制区域内の土地を除く)の区域であって政令で定める基準に該当するものを、造成宅地防災区域として指定することができる」(宅地造成及び特定盛土等規制法第45条)としています。
そしてその基準は、「安定計算によって、地震力及びその盛土の自重による当該盛土の滑り出す力がその滑り面に対する最大摩擦抵抗力その他の抵抗力を上回ることが確かめられたもの」として、「盛土をした土地の面積が3,000㎡以上であり、かつ、盛土をしたことにより、当該盛土をした土地の地下水位が盛土をする前の地盤面の高さを超え、盛土の内部に浸入しているもの」または「盛土をする前の地盤面が水平面に対し20度以上の角度をなし、かつ、盛土の高さが5m以上であるもの」(宅地造成及び特定盛土等規制法施行令第35条)のいずれかに該当する区域です。
造成宅地防災区域の指定状況
令和3年4月1日、国土交通省は、「造成宅地防災区域の指定状況」および「造成宅地防災区域の解除状況」について、指定カ所は全国で165カ所、指定解除カ所は388カ所と公表しています。造成宅地防災区域は、「宅地造成又は特定盛土等に伴う災害で相当数の居住者等に危害を生ずるものの発生のおそれが大きい一団の造成宅地」であるため、不動産売買の際は、特に注意が必要です。
ポイントは、この造成宅地防災区域は、「宅地造成等工事規制区域外」において指定されることです。
大規模盛土造成地は全国に51,306カ所!
国土交通省は、大規模盛土造成地の安全性の把握を進める第一段階として、地方公共団体へ令和2年3月までに大規模盛土造成地マップを公表するよう取り組みを進めてきた結果、令和2年3月30日をもってすべての地方公共団体で「大規模盛土造成地の有無の公表」が完了した、としています。
大規模盛土造成地は、すべてが直ちに危険ではありませんが、全国において、51,306カ所(面積約10万ha)存在することが明らかになりました。
大規模盛土造成地とは
盛土による宅地造成地には、「谷埋め型盛土」や「腹付け型盛土」があり、谷埋め型盛土造成地は、「谷や沢を埋めたてていることから、盛土内に水の浸入を受けやすく形状的に盛土側面に谷部の斜面が存在することが多いという特徴」があり、一方、腹付け型盛土造成地は、「傾斜地盤上の高さが高いという特徴」があります。「谷埋め型大規模盛土造成地」は、「盛土の面積が3,000㎡以上」のものをいい(ポイント1-①)、「腹付け型大規模盛土造成地」は「盛土をする前の地盤面の水平面に対する角度が20度以上で、かつ、盛土の高さが5m以上」のものとしています(ポイント1-②)。これらの造成地は、先に述べた「造成宅地防災区域」の該当基準と同じ側面をもつことから、造成宅地防災区域と大規模盛土造成地とは密接な関係にあります。
ポイント1
谷埋め型盛土造成地と腹付け型盛土造成地
①谷埋め型大規模盛土造成地のイメージ(盛土の面積が3,000㎡以上)

②腹付け型大規模盛土造成地のイメージ(盛土をする面の地盤面の水平面に対する角度が20度以上、かつ、盛土の高さが5m以上)

出典:国土交通省「大規模盛土造成地の滑動崩落対策について」
「大規模盛土造成地は、主として地震時に宅地造成前の谷底付近や盛土内部を滑り面として、盛土造成地全体、または、大部分が斜面下部方向へ移動するという特徴がある」ため、不動産リスク情報として不動産売買の際に重要な情報になります。
大規模盛土造成地マップで不動産リスク情報をチェック
現在、「現地でボーリングによる地盤調査等を実施の上、地震時に盛土に滑りが発生する可能性を計算する安定計算に着手した市区町村は、令和8年3月末で、96.3%ですが、安定計算が完了した大規模盛土造成地は、32.5%にとどまります。国土交通省は、令和7年3月31日、5万件あるといわれる大規模盛土造成地マップの公表は全国の992市区町村で完了した、と公表しました。749市区町村は大規模盛土造成地が存在しない旨を公表しています。造成宅地防災区域とは違い、「大規模盛土造成地の有無」は、宅建業法上の説明義務ではありませんが、消費者にとっては地震の影響を受けやすい大規模な造成地というリスク情報であるため、今後、不動産業界においても、これらのリスク情報の提供は、重要事項として求められることになるかもしれません。国土交通省防災課が監修する「全国の大規模盛土造成地の分布」Webから全国市区町村の詳細な地図情報を得ることができます(ポイント2)。

不動産コンサルタント
津村 重行
三井のリハウス勤務を経て有限会社津村事務所設立。2001年有限会社エスクローツムラに社名変更。消費者保護を目的とした不動産売買取引の物件調査を主な事業とし、不動産取引におけるトラブルリスク回避を目的に、宅建業法のグレーゾーン解消のための啓発文書の発表を行い、研修セミナーや執筆活動等により普及活動を行う。著書に『不動産物件調査入門 実務編』『不動産物件調査入門 取引直前編』(ともに住宅新報出版)など。
