Vol.22 不動産物件調査技術の基礎 ~役所調査編~
区画整理の賦課金調査の仕方


土地区画整理事業中の不動産売買では、賦課金に関する重要事項説明をめぐる紛争が目立っています。今号では、最高裁判例を参考にして、重要事項の調査方法について述べます。

賦課金付加の可能性は瑕疵ではない・最高裁

こんな事件がありました。組合施行による土地区画整理事業中の仮換地に指定された土地の売買が、平成10年に行われました。買主(複数)は、仲介業者を通して2,400万円前後で購入し、引渡しを受けたところ、平成14年の組合総代会において、組合員である者を付加対象者とすることなどを内容とする賦課金徴収細則を定める旨を決議しました。その後、組合は買主の1人(A)に対して約276万円の賦課金額通知書を送付したため、買主らは損害を被ったと主張して、仲介業者らに対し、瑕疵担保責任に基づく賦課金相当額の損害賠償等を求める事件が発生しました。

判決では、「組合が組合員に賦課金を課する旨決議するに至ったのは、保留地の分譲が芳しくなかったためであるところ、本件売買の当時は、保留地の分譲はまだ開始されていなかったのであり、組合において組合員に賦課金を課することが具体的に予定されていたことは全くうかがわれない。そうすると、上記決議が本件売買から数年も経過した後にされたことも併せ考慮すると、本件売買の当時においては、賦課金を課される可能性が具体性を帯びていたとはいえず、その可能性は飽くまで一般的・抽象的なものにとどまっていたことは明らかである。したがって、本件各売買の当時、買主らが賦課金を課される可能性が存在していたことをもって、本件各土地が本件各売買において予定されていた品質・性能を欠いていたということはできず、本件各土地に民法570条にいう瑕疵があるということはできない」(平成25年3月22日、最高裁裁判長・千葉勝美)としました。

具体性のある賦課金は告知義務!

「賦課金の付加される可能性の有無の調査」では「賦課金が課される可能性はあくまで一般的・抽象的なものか否か」、それとも「組合の総代会の決議が実際に行われていて、賦課金を課される可能性が具体性を帯びているか否か」を組合に聞き取り調査をして、その調査結果を買主に告知することが大切です。

また、仮換地指定中の区画整理事業物件の売買重要事項説明書においては「換地処分の公告後、当該事業の施行者から換地処分の公告の日の翌日における土地所有者及び借地人に対して清算金の徴収又は交付が行われることがある」(宅建業法の解釈・運用の考え方35条1項関係2)と、されていますが、このような事件があるため、「精算金の徴収又は交付」の後に、「及び賦課金の徴収」という文言を挿入することが大切です。

造成履歴書なども入手できることがある!

区画整理担当課では、土地区画整理法第76条許可申請書と許可要件、仮換地証明書、仮換地図、座標計算書、底地証明書、底地重ね図、造成履歴書などが、工事進捗状況に応じて取得できる場合があります。また、区画整理事業が換地処分公告されている場合でも、仮換地図、座標計算書などの有無を尋ねて、保存記録がある場合は取得します。区画整理事業に関する保存期間は「換地処分後5年間」としている行政もあります。また、底地重ね図や造成履歴書などからは、該当地の底地は40mの盛土だったということもあるので、注意が必要です。

ポイント1

下記の「底地重ね図、造成履歴書」のように、過去の造成履歴がわかる図面を入手できる場合があります。この図面では、該当地(四角内)は、旧道がそばを通り抜けていることがわかります。また、底地の旧地番や海抜も記載されています。

図表1 底地重ね図、造成履歴書

ポイント2

下記の「底地証明書」では、従前地番と街区番号を記す仮換地指定通知書とは異なり、その区画が現に存在する底地の地番が記されているので、底地地番の閉鎖登記簿謄本を取得すれば、その土地が昔、田・畑・沼・墓地などであったかどうか確認することができます。

図表2 底地証明書


不動産コンサルタント

津村 重行

昭和55年三井のリハウス入社。昭和59年に不動産物件調査業(デューデリジェンス業)に注目し、消費者保護を目的とした不動産売買取引の物件調査を主な事業とする有限会社津村事務所を設立。研修セミナーや執筆活動等を行っている。著書に『不動産調査入門基礎の基礎4訂版』(住宅新報出版)などがある。