税務相談
2024.08.14
不動産お役立ちQ&A

Vol.57 令和6年度税制改正:住宅取得等資金贈与に係る贈与税の非課税制度の見直し


Question

いま戸建ての購入を考えており、父から購入資金を少し援助してもらう予定です。それにともない、「住宅取得等資金の贈与に係る贈与税の非課税制度」の令和6(2024)年度税制改正による見直しについて教えてください。

Answer

非課税限度額が1,000万円とされる「質の高い住宅」(省エネ等住宅)の要件の見直しが行われたうえで、適用期限が令和8(2026)年12月31日まで延長されました。

1.住宅取得等資金の非課税制度の概要

その年の1月1日において一定の要件を満たす個人が、父母または祖父母等の直系尊属から自己の住宅用家屋の新築、取得または一定の増改築等の対価に充てるための金銭(以下「住宅取得等資金」)の贈与を受け、贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅取得等資金の全額を自己の居住用に供する一定の家屋の取得等の対価に充て、同日までに自己の居住用に供した等の場合は、贈与税の申告を要件に、住宅取得等資金のうち一定額(「質の高い住宅」は1,000万円、「一般住宅」は500万円)に係る贈与税が非課税とされます(租税特別措置法70条の2)。

2.適用要件

(1)対象となる受贈者

贈与を受けた時に日本国内に住所を有する等の一定の個人で、住宅取得等資金の贈与を受けた日の属する年の1月1日時点で18歳以上であって、贈与を受けた年の年分の所得税に係る合計所得金額が2,000万円以下(新築等をする住宅用の家屋の床面積が40㎡以上50㎡未満の場合は、1,000万円以下)である者(「特定受贈者」という)が対象です。

(2)住宅用家屋の要件

①日本国内にある家屋で、床面積が40㎡以上240㎡以下であること。

②その家屋が、次のいずれかに該当すること。

イ.建築後使用されたことのない住宅用の家屋

ロ.建築後使用されたことのある住宅用の家屋で、昭和57(1982)年以降に建築されたもの

ハ.建築後使用されたことのある住宅用の家屋で、地震に対する安全性に係る基準に適合するものであることにつき、一定の書類により証明されたもの

ニ.上記ロおよびハのいずれにも該当しない建築後使用されたことのある住宅用の家屋で、その住宅用の家屋の取得の日までに、同日以後その住宅用の家屋の耐震改修を行うことにつき、一定の申請書等に基づいて都道府県知事などに申請をし、かつ、贈与を受けた翌年3月15日までにその耐震改修によりその住宅用の家屋が耐震基準に適合することとなったことにつき一定の証明書等により証明がされたもの

③床面積の2分の1以上に相当する部分が専ら居住の用に供されるものであること。

(3)増改築等の要件

増改築等の工事に要した費用が100万円以上で、居住用部分の工事費が全体の工事費の2分の1以上であること等が要件とされます。

3.相続等により財産を取得した個人が、相続等の開始前7年以内(原則)に住宅取得等資金の贈与を受けた場合の住宅取得等資金に係る相続税の取扱い

相続等により財産を取得した個人が、相続等の開始前7年以内(経過措置あり)に、その相続等に係る被相続人等から住宅取得等資金の贈与を受け、かつ特定受贈者に該当する場合で、前述1.の適用を受けて贈与税の課税価格に算入されなかった金額については、その被相続人(贈与者)に係る相続税の計算上、課税価格に加算されません(つまり、贈与税が非課税とされた金額については、相続税も非課税とされる)。

4.令和6年度税制改正の概要

下記の見直しを行ったうえで、適用期限が令和8(2026)年12月31日まで延長されました。

(1)非課税限度額が1,000万円とされる「質の高い住宅」の見直し

非課税限度額を1,000万円とする上乗せ措置の適用対象となる「質の高い住宅」の要件について、その住宅用家屋の新築または建築後使用されたことのない住宅用家屋の取得をする場合は、原則、住宅用家屋の省エネ性能が断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上(改正前:断熱等性能等級4以上または一次エネルギー消費量等級4以上)であることとされました。

ただし、令和6(2024)年1月1日以後に、住宅取得等資金の贈与を受けて住宅用家屋の新築または建築後使用されたことのない住宅用家屋の取得をする場合、その住宅用家屋の省エネ性能が断熱等性能等級4以上または一次エネルギー消費量等級4以上であり、かつ、その住宅用家屋が次の①または②のいずれかに該当するものであるときは、その住宅用家屋は「質の高い住宅」とみなされます。

①令和5(2023)年12月31日以前に建築確認を受けているもの

②令和6(2024)年6月30日以前に建築されたもの

上記の改正に伴い、令和6(2024)年以降の「質の高い住宅」の要件は図表のとおりとなります。

図表 令和6年以降の「質の高い住宅」の要件

図表 令和6年以降の「質の高い住宅」の要件

(2)適用時期

前記4.(1)の改正は、令和6(2024)年1月1日以後に、贈与により取得する住宅取得等資金に係る贈与税について適用されます。

(3)適用除外

平成21(2009)年分から令和5(2023)年分までの贈与税の申告において、「住宅取得等資金の贈与に係る贈与税の非課税制度」の適用を受けたことがある個人(その個人が非課税制度の適用を受けて新築等をした住宅用の家屋が一定の自然災害により滅失した場合で、一定の要件を満たすときを除く)は、この非課税制度の適用を受けることができません。


山崎 信義

税理士法人タクトコンサルティング
情報企画部部長 税理士

山崎 信義

2001年タクトコンサルティング入社。相続、譲渡、事業承継から企業組織再編まで、資産税を機軸にコンサルティングを行う。中小企業庁「『事業引継ぎガイドライン』改訂検討会」委員などを歴任。著書に『不動産組替えの税務Q&A』(大蔵財務協会)、『事業承継 実務全書』(日本法令)など。