税務相談
2026.08.14
不動産お役立ちQ&A

Vol.69 自宅の所有者とその敷地の所有者が異なる場合に、自宅を取り壊して敷地のみを譲渡したときの譲渡所得の3,000万円控除の適用


Question

甲さんは、自身が所有する土地に夫が平成10年1月に新築した自宅(夫所有)で、夫とともに継続して住んでいました。令和8年6月に夫が自宅を取り壊した後、甲さんはただちに乙株式会社(上場会社)とその敷地の譲渡契約を締結し、同年7月に引き渡しました。
この場合において、甲さんは、その土地の譲渡に係る所得税の譲渡所得の金額の計算上、租税特別措置法(措法)35条1項の特別控除(以下「3,000万円控除」)の適用を受けることができますか。

図表 甲夫妻の自宅家屋とその敷地の利用状況等

図表 甲夫妻の自宅家屋とその敷地の利用状況等

Answer

甲さんは措法通達35-4(後記1)および同通達35-2(同2)の要件をすべて満たしているので、3,000万円控除の適用を受けることができると考えられます。

1.自宅と敷地の所有者が異なる場合の3,000万円控除の適用

3,000万円控除は、個人が自己の居住用財産(自宅家屋と敷地)を譲渡した場合は、一定の要件を満たすことにより、譲渡所得の金額の計算上、最高3,000万円を譲渡所得から控除できる特例です。3,000万円控除は、個人が居住の用に供している家屋(自宅家屋)を譲渡することを核として設けられた特例であり、譲渡した家屋の所有者とその敷地の用に供されている土地等の所有者が異なる場合には、その土地等の譲渡については適用されないのが原則です。ただし、譲渡した自宅家屋の所有者とその敷地の所有者とが異なる場合であっても、次の①〜③の要件のすべてを満たす土地等の所有者の譲渡所得の計算においては、緩和措置として3,000万円控除の適用が認められています(措法通達35-4)。

  • ①その家屋とともにその敷地の用に供されている土地等の譲渡があったこと。
  • ②その家屋の所有者とその土地等の所有者とが親族関係を有し、かつ、生計を一にしていること。
  • ③その土地等の所有者は、その家屋の所有者とともにその家屋を居住用として使用していること。

上記②および③の要件に該当するかどうかは、その家屋の譲渡の時の状況により判定します。ただし、その家屋が、その所有者の居住の用に供されなくなった日から、同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に譲渡された場合は、②に該当するかどうかは、その家屋がその所有者の居住の用に供されなくなった時から、その家屋の譲渡の時までの間の状況により判定し、③の要件に該当するかどうかは、その家屋がその所有者の居住の用に供されなくなった時の直前の状況により判定します。

2.自宅家屋の取壊し後にその敷地の譲渡契約を締結した場合の3,000万円控除の適用

3,000万円控除は、個人が自宅家屋(居住の用に供されなくなった家屋も含む)を譲渡することを前提として設けられている特例であり、居住の用に供していた土地等のみの譲渡に対して適用することは、原則として認められていません。

ただし、所有者が自宅家屋(または居住の用に供されなくなった家屋)を取り壊し、その敷地の用に供されていた土地等を譲渡した場合に、その土地等の譲渡(家屋の取壊し後、その土地等にその土地等の所有者が建物等を建築し、当該建物等とともに譲渡する場合を除く)が次に掲げる④と⑤の要件のすべてを満たすときは、緩和措置として3,000万円控除の適用が認められています(措法通達35-2)。

  • ④その土地等の譲渡契約が、その家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、その家屋を居住の用に使用しなくなった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡したものであること。
  • ⑤その家屋の取壊し後、譲渡契約の締結日まで、貸付けその他の用に使用していないその土地等の譲渡であること。

3.本問における3,000万円控除の適用要件

前記2のとおり、売主が任意に自宅家屋を取り壊し、その敷地の用に供されていた土地だけを譲渡した場合であっても、その譲渡が2の④と⑤の要件をすべて満たしているときは、その土地のみの譲渡について、自宅家屋をその敷地の用に供されている土地とともに譲渡した場合に準じて3,000万円控除の適用を受けることができます。この取扱いの趣旨からすれば、前記1の①の「その家屋とともにその敷地の用に供されている土地等の譲渡があったこと」との要件は、家屋が現存する場合を前提とした要件と考えられるものの、2の④と⑤のすべてを満たす土地等のみの譲渡については、1の①の要件を満たすものとして取り扱うべきと考えられます。よって、自宅家屋の所有者とその敷地の所有者が異なる場合に、家屋所有者がその家屋を取り壊した後、敷地所有者が土地のみを譲渡したときであっても、前記2の要件に該当すれば1の①の要件を満たし、1の②と③の要件を満たすことにより、3,000万円控除の適用を受けることができると考えられます。

4.結論

甲さんは、敷地譲渡契約を家屋の取り壊し後ただちに締結し、その翌月には敷地を引き渡しており、その間、貸付等の用に供しておらず(前記2の④と⑤の要件に該当し、したがって、1の①の要件を満たしている)、また、甲さんと家屋の所有者である夫とは親族関係で、生計を一にしており(1の②の要件)、家屋が取り壊されるまで、夫と共にその家屋を居住用として使用しています(1の③の要件)。以上により、甲さんは、前記3に掲げる要件を満たすことから、旧自宅の敷地の用に供されていた土地の譲渡に係る譲渡所得の金額の計算上、3,000万円控除の適用を受けることができます(参考:平成22年6月29日高松国税局文書回答事例)。


山崎 信義

税理士法人タクトコンサルティング
情報企画部部長 税理士

山崎 信義

2001年タクトコンサルティング入社。相続、譲渡、事業承継から企業組織再編まで、資産税を機軸にコンサルティングを行う。中小企業庁「『事業引継ぎガイドライン』改訂検討会」委員などを歴任。著書に『不動産組替えの税務Q&A』(大蔵財務協会)など。