税務相談
2021.12.14

Vol.41 店舗用建物の借主・貸主における消費税の『インボイス制度』の概要


Question

店舗用建物の借主・貸主における、消費税の「インボイス制度(適格請求書等保存方式)」の概要について、あらためて教えてください。

Answer

令和5年10月1日以降、借主は支払った家賃に係る消費税につき仕入税額控除の適用を受けるためには、貸主から交付を受けた「適格請求書」(「インボイス」・下記2.参照)等の保存が必要とされます。一方、適格請求書発行事業者である貸主は、借主からの求めに応じて適格請求書を交付する等の義務を負います。

1. 借主における適格請求書等保存方式の概要

(1)消費税の税額計算のしくみ

消費税の納付税額は、課税期間(個人事業者は原則、その年1月1日~12月31日、法人はその事業年度)中の消費税が課税される取引(課税売上)に係る消費税額から、事業に係る資産の取得やサービスの提供を受けること(課税仕入れ等)に係る消費税額を控除(仕入税額控除)して計算します。この計算により求めた額がプラスの場合は、その額の消費税を納付し、マイナスの場合は、その額の消費税が還付されます。

(2)適格請求書等保存方式による仕入税額控除

令和5年10月1日から、複数税率に対応した消費税の仕入税額控除の方式として、「適格請求書等保存方式」が導入されます。適格請求書等保存方式では、事業者による下記(3)の適格請求書等の保存が、仕入税額控除の要件となります。したがって店舗用建物を賃借する借主が、支払家賃に係る消費税について仕入税額控除を行うためには、適格請求書の保存が必要になります。

(3)適格請求書の概要

適格請求書とは、以下の事項が記載された請求書や納品書、領収書その他これらに類する書類をいいます。

  • ①適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
  • ②取引年月日
  • ③取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
  • ④税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率
  • ⑤税率ごとに区分した消費税額等
  • ⑥書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

(4)口座振替等による店舗家賃等の支払いと適格請求書等保存方式

店舗や事務所の家賃のように、口座振替等により毎月、定額の代金決済が行われ、その都度、請求書や領収書の交付が行われない場合であっても、前記(2)より仕入税額控除を行うためには適格請求書等の保存が必要となります。この場合、複数の書類等で適格請求書として必要な記載事項を満たしていれば、それらの書類全体で適格請求書の記載事項を満たすこととされます。具体的には、[1]前記(3)の適格請求書の記載事項①〜⑥のうち②取引年月日(=家賃の支払日)以外の事項が記載された契約書および[2]通帳又は銀行が発行した振込金受取書(家賃の支払日=②取引年月日を示すもの)を合わせて記載事項を満たしていればよいこととされます。

令和5年9月30日以前からの賃貸借契約については、契約書に登録番号等の適格請求書として必要な事項の記載が不足していますが、この場合は借家人が別途、貸主から登録番号等の記載が不足していた事項の通知を受け、契約書とともに保存すればよいとされています(国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」問76参照)。

(5)免税事業者等からの課税仕入れに係る仕入税額控除の不適用

令和5年10月1日の適格請求書等保存方式の開始後は、免税事業者や消費者など適格請求書発行事業者以外の者から行った課税仕入れは、原則として仕入税額控除の適用を受けることができません。したがって貸主が適格請求書発行事業者ではない場合、借主が支払った店舗建物の家賃は、消費税の計算上、仕入税額控除の対象とはなりません。

2. 貸主における適格請求書等保存方式の概要

(1)適格請求書発行事業者の登録

適格請求書を交付できるのは、「適格請求書発行事業者」に限られます。店舗建物の貸主が適格請求書発行事業者となるためには、税務署長に申請して登録を受ける必要があります。この適格請求書発行事業者の登録ができるのは、課税事業者のみです。したがって、免税事業者が適格請求書発行事業者の登録を受けるためには、「消費税課税事業者選択届出書」を提出し、課税事業者となる必要があります。

(2)登録申請のスケジュール

上記(1)の登録をするための申請書は、令和3年10月1日から提出することができます。適格請求書等保存方式が導入される令和5年10月1日から登録を受けるためには、原則として、令和5年3月31日まで(ただし困難な事情がある場合には、令和5年9月30日まで)に登録申請書を提出する必要があります(国税庁「消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式が導入されます」を参照)。

(3)適格請求書発行事業者の義務

適格請求書発行事業者は、原則として、取引の相手方(課税事業者に限る)の求めに応じて、適格請求書を交付する義務および交付した適格請求書の写しを保存する義務があります。したがって適格請求書発行事業者の登録をした貸主は、取引の相手方である借主の求めに応じて適格請求書を交付し、かつ適格請求書の写しを保存する必要があります。

(4)適格請求書発行事業者における納税義務の免除の不適用

適格請求書発行事業者については、納税義務の免除制度が適用されません。このため適格請求書発行事業者は、その基準期間における課税売上高が1,000万円以下となっても、免税事業者にはなりません。

今回のポイント

  • 前記1.(5)のとおり、適格請求書等保存方式の開始後は、免税事業者等の適格請求書発行事業者以外の者から行った課税仕入れは、原則として仕入税額控除の適用を受けることができない。ただし、制度開始後6年間は、免税事業者等からの課税仕入れについても、一定額を仕入控除税額として控除できる経過措置が設けられている。
  • 前記2.(4)より、適格請求書発行事業者は消費税の納税義務の免除制度が適用されない。このため、上記2.(1)より免税事業者が課税事業者の選択をして適格請求書発行事業者の登録をした後、免税事業者に戻るためには、適格請求書発行事業者をやめる必要がある。そのためには「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を「消費税課税事業者選択不適用届出書」にあわせて税務署長宛に提出する必要がある。

山崎 信義

税理士法人タクトコンサルティング
情報企画部部長 税理士

山崎 信義

2001年タクトコンサルティング入社。相続、譲渡、事業承継から企業組織再編まで、資産税を機軸にコンサルティングを行う。中小企業庁「『事業引継ぎガイドライン』改訂検討会」委員などを歴任。著書に『不動産組替えの税務Q&A』(大蔵財務協会)、『事業承継 実務全書』(日本法令)など。