まちの紹介
2023.01.13

2023年大河ドラマ放送に沸く
徳川家康生誕の地を巡る
~愛知県岡崎市~


岡崎城(岡崎公園内)
岡崎城(岡崎公園内)

大河ドラマ「どうする家康」の放送を機に、徳川家康公生誕の地である岡崎市(愛知県)が盛り上がりを見せています。
そして、偶然にも同じタイミングで同市の玄関口である東岡崎駅周辺では再整備が進み、中心地の姿も刻々と変化を続けています。
そこで今回の特集では、この2つ視点で岡崎市の“いま”をリポートしていきます。

2019年、家康公ひろばに建てられた家康公の騎馬像。
2019年、家康公ひろばに建てられた家康公の騎馬像。市の新たなシンボルに(制作者:神戸峰男 かんべ みねお)。

40年ぶりとなる家康公単独の大河ドラマ

古くは中世から鎌倉街道矢作東宿として集落が整い始めたといわれ、それ以降、岡崎城の城下町、東海道五十三次の宿場町、多くの寺院・神社の門前町として発展してきた岡崎市。たどれば、1889年の町村制施行により岡崎町となり、その頃から水力(水車)による綿紡績を主産業として繁栄し、1916年に岡崎市となります。その後、1945年には戦災による大被害を受けましたが、焦土からの復興に努め、1971年には市街地再開発組合の認可(全国第1号)を受けて再開発を施行します。2003年には中核市に移行、2016年に市制100周年を迎え、2018年、内閣府より中枢中核都市の指定を受けます。そして、800年もの長きにわたり発展を遂げてきた岡崎市に、にぎわいを創出させる知らせが届きます。それが大河ドラマ「どうする家康」の放送決定です(2021年1月19日に制作発表記者会見を実施)。 

これを機に岡崎市は2021年4月1日に「どうする家康」活用推進室を市役所内部組織として設置。翌月には市長を本部長とする岡崎市「どうする家康」活用推進本部を立ち上げ、“徳川家康公生誕の地・岡崎”をキーワードに、公民一体となったPR活動に乗り出します。この件に関して「どうする家康」活用推進課の高橋氏は「NHKの大河ドラマで徳川家康公が主人公として描かれるのは40年ぶりのことです。岡崎市が家康公の生誕地であることの周知は無論、幼少期、そして19歳から29歳の若かりし頃の家康公の足跡を多くの方に知っていただきたいという一心でPRに取り組んでいます」と話します。続けて同氏は「家康公を嵐の松本潤さんが演じることも大きな話題です。大河ドラマの初回が放送される1月8日、岡崎市民会館でパブリックビューイングを行い、松本さんをはじめ出演者のトークショーなどを企画しているのですが、定員900人の枠に対して17万人超の申し込みがありました。倍率にして196倍です。人気俳優たちが岡崎市に来るということで、たくさんの応募がくることは予期していましたが、ここまでの数になるとは正直驚きです」と話します。

大河ドラマ特化のプロジェクトチームとして誕生した「どうする家康」活用推進課の風景。
大河ドラマ特化のプロジェクトチームとして誕生した「どうする家康」活用推進課の風景。

“家康公”一色に染まる岡崎市内の各所

まちを歩けば“もっと岡崎、きっと家康”というキャッチコピー&オリジナルロゴマークを使用したポスターとのぼり旗を至る所で目にします。これは岡崎市と市の商工会、観光協会等の団体代表者によって設立された岡崎市徳川家康公顕彰推進協議会が制作したPRツールで、岡崎=「徳川家康公」を広く知らしめること、市民機運の醸成、歴史の再認識、徳川家康公の顕彰など、地域及び経済の活性化につなげることを目的としています。高橋氏は「市内各所の事業者様に協力をいただいて、ポスターとのぼり旗を活用してもらっています。また、商工労政課では、家康公にちなんだスイーツを提供している和・洋菓子店、カフェ、甘味処などの店舗をまとめた冊子を作成したり、大河ドラマ放送を機に大勢の観光客が来ることを想定して、市内の店舗や事業所をサポートする『岡崎市地域店舗ファンづくり推進事業』を立ち上げるなど、公民一体となってまちを盛り上げています」とのこと。

高橋氏が所属する「どうする家康」活用推進課は、「どうする家康 岡崎 ドラマ館」を整備する大役を担います。同館は岡崎公園内にある三河武士のやかた家康館の一部を改装し、大河ドラマの世界観を味わえるエリアと史実に基づいた展示物を見学できる施設としてオープンします(1月21日~2024年1月8日)。高橋氏は最後に「来館者数は70万人を目標に掲げています。ドラマ館がある岡崎公園には岡崎城もありますし、市内各所に家康公ゆかりの地が点在しています。大河ドラマを機に、全国から多くの人が訪れ、家康公が生まれ育った地を皆さんに見て、感じてもらいたいと思っています」と期待を寄せます。

大河ドラマで出演者が着た衣装や小道具を展示するほか、出演者のサイン色紙も掲示されるという。
大河ドラマで出演者が着た衣装や小道具を展示するほか、出演者のサイン色紙も掲示されるという。

徳川家康公ゆかりの地

【大樹寺】
【大樹寺】 桶狭間の戦いで敗れた家康公が逃げ帰り、自害を試みた際、住職からの教えでとどまった場所。
【伊賀八幡宮】
【伊賀八幡宮】 家康公も大きな合戦の時には必ず参詣したといわれ、徳川家の武運長久・子孫繁栄の守護神。
【法蔵寺】
【法蔵寺】 家康公が幼少のころ、手習いや漢籍などの学問に励んだと伝えられる寺院。
【天恩寺】
【天恩寺】 臨済宗妙心寺派の寺院。長篠の戦いに出向く徳川家康が泊まった寺院として知られる。
【東照公産湯の井戸】
【東照公産湯の井戸】 岡崎城内で誕生した竹千代君(家康公)の産湯に、この井戸の水が用いられた。
【瀧山寺・瀧山東照宮】
【瀧山寺・瀧山東照宮】 天下の奇祭・鬼祭りが開かれる、家康公ゆかりの古刹。

駅周辺の再活性化は市民すべての願い

大河ドラマの放送を控えて活気づく岡崎市ですが、一方で都市機能の一端を担う東岡崎駅周辺の衰退が懸念されていることも事実です。その要因を岡崎市都市基盤部拠点整備課の宇野氏は「本市は急速な人口増加や経済成長を背景とした都市化への対応の中で、モータリゼーションの進展も相まって、人口や都市機能が郊外部へ拡大し、市街地の外延化が進行しました。その後も過度な自動車依存により、都市構造は、日常生活、コミュニティ、都市活力そのものの維持の面で問題を引き起こしてきました。

名鉄東岡崎駅は1日の乗降客約 38,000人(年間約 1,400万人)が利用する駅でありながら、メインとなる北口広場は非常に狭く、タクシー、一般車、バス等の交通が輻輳しており、混雑しています。また、駅舎のバリアフリー化が一部にとどまり、駅ビルは老朽化が進んでおり、入居店舗も減少しているなど、商業地域でありながら、かつてのにぎわいは見られない状況です。これらを課題と踏まえ、中核市岡崎の玄関口にふさわしく、多くの来訪者をもてなし、誰もが使いやすく、地域のにぎわいを生む駅へ再整備することを目的に、2010年2月に東岡崎駅北口駅前広場整備計画を策定しました」と語ります。計画の発端となったのは、2005年に東岡崎駅周辺の商業の中核を担った大型商業施設の撤退だったといいます。その後、地域商店街、事業者、住民の間で東岡崎駅周辺地区の再生について検討したいという機運が高まり、何度も議論を重ね整備計画は誕生したのです。明るみになった課題の一例を見ると、「駅舎、バスターミナルが集中しているため、歩行者動線が交錯している」「東方面からの駅利用者にとっては改札までの距離が長い」などが挙がっています。また、駅利用者にもアンケートを採った際は「駅ビルが老朽化しており、駅舎と一体的な整備を望む」などの声があがっています。

宇野氏の話によると「すでに第1期整備は終わり、現在は第2期整備が進行している」といいます。前述にある「改札までの距離が長い」の課題解決に市は東改札口を設置(2013年)、東改札口から歩行用のデッキを整備し、駅周辺の空間拡張を実現させています。歩行用デッキを使用すれば、徳川家康公の騎馬像が設置された「家康公ひろば」や複合施設「オト リバーサイドテラス」へ直接往来することができ、すでに多くの人が集まる新たなスポットとしてにぎわいを見せています。

最後に宇野氏は「2023年度からは橋上駅舎の建設着工が予定されています。それ以降、バスターミナルの再整備、駅ビルの解体・建て替え工事など大がかりな整備が徐々にスタートし、2029年度には新駅ビル完成を予定しています。まだ先の話になりますが、リニア中央新幹線の名古屋駅開通に伴い、名古屋駅周辺での大規模再開発が予定されています。本市はそのオフィスビルや商業ビルに勤務する若年世帯の居住を誘導できる可能性を有しています。そのためにも、拠点となる東岡崎駅の再整備が必要になると考えます」と話します。

公民が長い年月をかけて論じ合い、作成した「東岡崎駅北口駅前広場整備計画」は折り返し地点を迎え、これから本格化していきます。

東岡崎駅北口駅前広場整備計画の概要

公民連携の検討会で挙がった課題を踏まえた整備方針に基づき「東岡崎駅前広場」「東岡崎駅交通広場」「明大寺交通広場」「歩行者空間の整備」「関連都市基盤の整備」の5つの事業が実施される。

誰もが使いやすい にぎわいの交流拠点

東岡崎駅を核に交通、商業、生活支援、観光、情報などの都市機能を連係させ、市民が、来訪者が使いやすい個性的な交流・生活空間の創出を目指す

〔誰もが使いやすい にぎわいの交流拠点の機能構成〕

〔誰もが使いやすい にぎわいの交流拠点の機能構成〕

〔2029年完成予定を目指す東岡崎駅の姿〕

【駅舎】
中核市岡崎の玄関口にふさわしい、開放感のあるアクセシビリティの高い橋上駅舎を名古屋鉄道株式会社と連携し整備。駅利用者の利便性を考慮し、現在地下にある西側改札口を橋上に改め、東改札口と併せ東西2箇所の橋上改札口を有する橋上駅舎とする。
【自由通路】
橋上改札とつながり、北口と南口を24時間往来可能な通路を整備。
【にぎわい広場】
良好な景観形成に配慮し、周辺地域の活性化や待合のできる広場空間をビル内部に整備する。
【駅ビル】
バリアフリー化を促進し、観光案内所等の公共サービス機能を整備する。
【立体横断施設】
駅の橋上化に合わせ、駅前道路を跨ぐ、屋根付きの立体横断施設を整備する。

築60年が経過し、老朽化が進む東岡崎駅ビル(岡ビル)
築60年が経過し、老朽化が進む東岡崎駅ビル(岡ビル)
2013年に東改札口を設置。橋上改札とし利便性が向上
2013年に東改札口を設置。橋上改札とし利便性が向上
東改札口と家康公ひろばなどをつなぐ歩行デッキ。
東改札口と家康公ひろばなどをつなぐ歩行デッキ。

誠実さをもって初めてできる地域と地元の人々への貢献

不動産売買・開発、建築など幅広い事業を展開するグッドハウス・プロ。
わずか数名の設計事務所からスタートした会社が成長した秘訣とは。
経営者の萩原幸二愛知県本部長に話を聞きました。

岡崎市徳川家康公顕彰推進協議会の一員でもある萩原幸二愛知県本部長
岡崎市徳川家康公顕彰推進協議会の一員でもある萩原幸二愛知県本部長

トラブルは悲観せず楽しむことが大事

―1990年の創業時から会社は躍進を遂げています。創業以降、大切にしてきたこととは何でしょうか。

月並みな答えになりますが、周囲の人たちを大切にすることです。もっとかみ砕いて言えば、人に対して“誠実であれ”ということです。対人で誠実さを欠かさなければ、おのずと恩恵を受けることができます。当社が重んじる「地域貢献」「業界や地元の人への貢献」といった理念も誠実さを持ち合わせていなければ実現できません。周りの協力があってできることですから常に人を大切にする気持ちを持ち続けることが大切です。あとは、トラブルを楽しむ気持ちを持ち続けることも必要でしょう。

―そのような時期があったのですか。

むしろトラブル続きだったように思います(笑)。会社を立ち上げて30年弱が経過しますが、その間、逃げ出したいと思うことが多々ありました。ただ、その時にマイナス思考に陥らずに、トラブルを楽しむという前向きな気持ちがあったからこそ、商機につながるアイデアが生まれることもあったのです。例えば、当社の事業となっているガレージハウスや賃貸物件のネーミング等のように。

ユニークなネーミングで居住者にインパクトを与えた「しあわせ夢ハウス」。絶えず満室続きだという。
ユニークなネーミングで居住者にインパクトを与えた「しあわせ夢ハウス」。絶えず満室続きだという。
岡崎市の花火大会を自宅に居ながらにして見物できるといった名目でネーミングされた「ビューハウス22」
岡崎市の花火大会を自宅に居ながらにして見物できるといった名目でネーミングされた「ビューハウス22」

行政と共に広い視野でまちづくりに着手したい

―御社はSDGsにも取り組まれています。

いくつか開発目標を掲げて、取り組んでいますが、私が重んじているのはやはり「地域貢献」です。私たちの商売が成り立っているのは、地域のおかげですから。実施している内容は、社員全員で行う町内清掃です。地域貢献といっても決して大きなことをする必要ありません。決めたことを継続して行うことに価値が生まれ、周囲の方から感謝されるものだと考えています。

―今後、不動産事業を通してどのように地域に貢献したいと考えていますか。

「不動産開発を通じて、地域の人々を幸せにするまちづくりを目指す」。これが当社のモットーです。ただ今後、会社の事業等は若い世代にバトンタッチして、特に力を入れて取り組んでいきたいと思っているのが、行政と共に広い視点で行うまちづくりです。私は、地元の商工会の会長や岡崎市徳川家康公顕彰推進協議会にも名を連ねています。「どうする家康」の放送を機に、岡崎市を全国にPRすることはもちろん、地元の六ツ美地区のにぎわいをどのようにして創出するか。そのことを常に模索しています。

また、先ほど、会社経営、事業は若い世代にバトンタッチすると話しましたが、不動産業界全体もそうなるべきだと私は思っています。では、一線を退いた経営者は何をするべきなのか。私の立場でいえば、それは全日本不動産協会、そして愛知県本部の仕事に注力し、若い世代のサポート役に徹することだと考えています。


株式会社グッドハウス・プロ
住所:愛知県岡崎市上青野町字城屋敷37-3
電話:0564-43-6628
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