まちの紹介
2026.06.12

「始まりの地」から100年先のくらしのために。
TAKANAWA GATEWAY CITY実験(イノベーション)リポート


高輪ゲートウェイ駅
高輪ゲートウェイ駅。デザインアーキテクトを務めたのは隈研吾建築都市設計事務所で、折り紙をモチーフにした構造と障子を想起させる幕屋根が特徴。構内には工房併設のスイーツショップなどが入るほか、エキナカDJイベントも不定期で開催される。

大規模な再開発でめまぐるしく表情を変える東京で、いまもっとも注目を集めているのが「TAKANAWA GATEWAY CITY(高輪ゲートウェイシティ)」だ。
“100年先の心豊かなくらしのための実験場”をテーマに、街全体を舞台にさまざまな実証実験が行われている。
豊かな緑と行き交う人々の間をロボットが走行し、収集したデータから多様なサービスが提供される──まさに近未来の街の姿だ。
ここで繰り広げられる実験がどのような結果をもたらすのかは、まだわからない。だが、未知だからこそ心が躍る。
われわれの好奇心が、100年先の街とくらしを創るのだ。さあ、出かけよう、イノベーションの始まりの地へ。

Innovation 01
江戸の玄関口から世界へのゲートウェイへ

山手線の30番目の駅として、2020年に開業した「高輪ゲートウェイ駅」。この駅に直結する約9.5haの広大な敷地に誕生したのがTAKANAWA GATEWAY CITYです。ここは、江戸時代には高輪大木戸として江戸への玄関口の役割を担い、明治5(1872)年には日本で最初に鉄道が走った「始まりの地」。また、鉄道開通の際には、日本と西洋の技術の融合で高輪築堤※1というイノベーションを生み出した地でもあります。

※1 海上に線路を敷設するために築かれた鉄道構造物。

「Global Gateway」をコンセプトにエキマチ一体のまちづくりを進めるのはJR東日本です。街には実験の舞台となる広場やホテル、オフィス、商業施設、クリニック、コンベンション・カンファレンスといった多様な施設がそろい、観光客や買い物客、地域住人、オフィスワーカーなど約10万人規模の来街者を対象に実験が展開されます。たとえば街を回遊するモビリティに乗ってみたり、食事や買い物をしたり、イベントに参加するだけで、実験に参画し、未来へ続くイノベーションの一端を担うことになるのです。そして、ここで生まれたイノベーションは、日本各地や世界各国の社会課題解決へとつながっていきます。

駅前に広がるGateway Park。街には5棟のビルが建ち、広場やデッキ、ビオトープなどの回遊空間が全体を一体化している。
駅前に広がるGateway Park。街には5棟のビルが建ち、広場やデッキ、ビオトープなどの回遊空間が全体を一体化している。

Innovation 02
実証実験の拠点「LiSH(リッシュ)」

街の実験の拠点となるのが、2025年5月に開業したビジネス創造施設「TAKANAWA GATEWAY Link Scholars’ Hub(LiSH)」。国内外のスタートアップや事業会社など、多様なプレイヤーが集い、世界中の社会課題に対して挑戦と共創が生まれています。LiSH内でさまざまな試行錯誤を繰り返し、それらを街で実証していくことで、開業から約1年の間に、視覚障害者向けの移動支援やデジタルインフラなど、約50件の実証実験が実施されました。

個室やコワーキングスペースに加え、水圏、植物、微生物などさまざまなシェアラボを備える。
個室やコワーキングスペースに加え、水圏、植物、微生物などさまざまなシェアラボを備える。(提供:JR東日本)

Innovation 03
街の実験を支える
TAKANAWA INNOVATION PLATFORM

TAKANAWA INNOVATION PLATFORMは、街独自のアプリ「TAKANAWA GATEWAY CITYアプリ(以下、アプリ)」と、さまざまなロボットを制御する「ロボットプラットフォーム」からなります。イノベーションのハブとしての役割を果たすTAKANAWAGATEWAY URBANOS(以下、都市OS)に街や鉄道に関するデータを集約し、そのデータをアプリやロボットプラットフォームで活用。

たとえば、後述のデリバリーロボット「DeliRo(デリオ)」は、都市OSに集約されたデータを活用して最適なルートを選択して走行します。

また、街に設置されているデジタルサイネージでは、都市OSで収集した鉄道の運行状況を表示するほか、街のカメラ映像を解析して混雑度を数値化し、「エリアの賑わい度」として各エリアの状況を可視化。来街者が街を楽しむサポートをしています。

デジタルサイネージ
デジタルサイネージ

Innovation 04
回遊するモビリティ・ロボ

街では、警備、清掃、配送、点検など多種多様なロボットが働いています。特に自動走行モビリティ「iino(イイノ)」は、見かけるとつい乗ってみたくなる愛嬌のあるロボ。街の南北をつなぐデッキ上を時速5km以下で走行し、3名まで乗車可能。乗りたいときは近づけば止まり、降りたいときは手を触れると減速する手軽さも人気の理由です。燃料となるエネルギーの一部は、再生可能エネルギー由来の水素を純水素燃料電池システムに供給して発電しているため、環境にやさしいモビリティでもあります。

一方、目と音声による人のようなコミュニケーション機能を持ち、建物の内外を自由に動くのはデリバリーロボットの「DeliRo(デリロ)」。公道を走行することができ、最大100kgまで積載可能な配送ロボットとして、さまざまなシーンや配送ニーズに対応していきます。

自動走行モビリティ iino
自動走行モビリティ iino
デリバリーロボット DeliRo
デリバリーロボット DeliRo(提供:JR東日本)

Innovation 05
陸・海・空から移動の未来を拓く
「立体MaaS構想」

立体MaaSは、都市循環の構築のために行われる移動の実証実験です。自動運転バスや環境負荷の少ないエネルギーを採用した水素バス、移動すること自体が観光資源となる水上交通、空飛ぶクルマの実装推進への取り組みなど、陸・海・空の移動に関する実験が行われています。

期間限定でKDDIと行われた自動運転バス「Minibus 2.0※2」の実証実験では実際に公道を走行。ドライバーは自動運転が可能な場所ではハンドルから手を離し、自動運転技術に任せます。その運転は驚くほどスムーズで、これが当たり前になる近未来が待ち遠しくなります。

一方、桜の季節には、東京湾から目黒川へ向かう特別航路により、水辺から花見を楽しむエンターテインメントな移動体験が提供されました。そのほか、羽田空港と竹芝地区を結ぶ「羽田空港アクセス船」の実証実験も行われています。

※2 長距離・短距離LiDAR、物体検出カメラ、信号機検知カメラ、全地球航法衛星システム等を搭載した自動運転レベル4(ドライバーが不在でも運行可能な技術)の車両。ただし、実験では自動運転レベル2(特定条件下でシステムが加速・操舵・制動を支援する。運転の主体は運転者にある運転支援段階)で走行。

自動運転バス
自動運転バス

Innovation 06
100年先へつなぐ文化を実験するミュージアム
MoN Takanawa(モン タカナワ): The Museum of Narratives

地上6階・地下3階からなる「モン タカナワ:ザ ミュージアム オブ ナラティブズ」には、最大2,000人収容のライブ・パフォーマンス空間や展示室、約100畳の畳スペースなどのほか、風情のある花見テラスや足湯テラス、月見テラスなどが備わっています。

総合プロデューサーは小山薫堂氏。

2026年7月中旬から9月上旬にかけては、大阪・関西万博のシグネチャーパビリオンが再演され、「もし、アンドロイドに記憶を引き継げるとしたら?」をテーマに、テクノロジーが進化し人間とロボットが共存する50年後、そして人間が身体の制約から解放される1000年後の未来を、リアルなロボットと映像が混ざり合う物語(ナラティブズ)として体験できます。

もし、アンドロイドに記憶を引き継げるとしたら?
©FUTURE OF LIFE
もし、アンドロイドに記憶を引き継げるとしたら?
©FUTURE OF LIFE