全国不動産会議目前企画
福井、時空をめぐる旅
─ 恐竜、奇岩、大仏、そして旬の味覚へ ─

約1億2,000万年前の生命を伝える化石、火山と荒波が彫り上げた断崖、現代に生まれた巨大な祈りの空間。
福井県には、異なる時代が刻んだ風景が折り重なっています。
2024年の北陸新幹線延伸によって、福井はぐっと身近な旅先になりました。
今年11月に開催される全国不動産会議 福井県大会を前に、太古から続く大地の記憶や人が育んだ文化、冬ならではの味覚を通して、福井の多彩な魅力を紹介します。
北陸新幹線の延伸と再開発で新たな姿を見せる福井
2024年3月、北陸新幹線の金沢・敦賀間が延伸開業し、福井県内に芦原温泉、福井、越前たけふ、敦賀の4駅に新幹線が停車します。東京から福井まで乗り換えなしで結ばれ、福井はぐっと身近な旅先になりました。
新幹線の延伸は、県内観光にも大きな変化をもたらしています。開業1年目となった2024年、福井県の観光客入込数は前年比17.6%増の2,069万人、観光消費額は同23.5%増の1,513億円となり、いずれも過去最高を記録しました。特に関東地区から訪れた県外客は41.8%増加しています。新幹線が縮めたのは移動時間だけではありません。福井は、首都圏から訪れやすい、より身近な旅先になりました。
県都の玄関口である福井駅周辺も、大きく姿を変えてきました。駅西口では、北陸新幹線の開業を見据え、商業、文化、住宅などの機能を集めた再開発が進められ、2016年には複合施設「ハピリン〈ふくいジュラモール〉」が開業しました。さらに2024年には、駅前電車通り北地区A街区の再開発によって、地上28階建ての複合施設「FUKUMACHI BLOCK」が誕生しました。福井県初の外資系ホテル「コートヤード・バイ・マリオット福井」をはじめ、分譲住宅「ザ・福井タワー」、オフィス、商業施設などが入り、1階には福井の食を集めたフードホール「MINIE」も設けられ、新たなにぎわいが生まれています。


新幹線開業で動き始めた地価と空き家活用という課題
福井の変化は、地価にも表れています。2026年の地価公示では、県内の全用途平均が2年連続、商業地が3年連続で上昇しました。なかでも福井市の商業地は、新幹線開業と再開発事業の効果により、駅周辺を中心に地価の上昇が続いています。福井駅に近い大手2丁目の標準地では前年比6.0%、中央1丁目では5.1%上昇した地点もあり、人の流れや都市機能の集積に対する期待が地価を押し上げていることがうかがえます。
一方、県内全体に目を向けると、異なる課題も見えてきます。2023年の住宅・土地統計調査によると、福井県の空き家は5万3,100戸、空き家率は15.6%でした。持ち家率は73.5%、一戸建て率は74.7%と高く、広い持ち家に暮らす地域性がある一方、人口減少や世代交代に伴って、使われなくなった住宅をどう次代へ引き継ぐかが問われています。駅前への投資を地域全体へ波及させるとともに、空き家の流通や活用を進めることも、これからの福井のまちづくりを考える重要な視点です。
さて、その新しい駅前で、ひときわ目を引くのが、動いて鳴く恐竜のモニュメントです。駅舎の壁面や広場、ベンチにも恐竜が姿を現し、新幹線を降りたところから「恐竜王国・福井」の物語が始まります。では、なぜ福井は恐竜王国になったのでしょうか。その答えを求めて、勝山市へ向かいます。
駅前の恐竜を入り口に、1億2,000万年前の福井を訪ねる
勝山市の丘陵地に立つ福井県立恐竜博物館は、銀色のドームが印象的な建物です。館内には恐竜の全身骨格や復元模型、実物の化石などが並び、恐竜が生きた時代から生命の進化、地球の歴史までを紹介しています。
福井県で本格的な恐竜化石の発掘調査が始まったのは1989年です。勝山市北谷町には、約1億2,000万年前の前期白亜紀に形成された手取層群北谷層が分布しています。
ここから恐竜の骨や歯をはじめ、カメ、ワニ、魚類、哺乳類、植物など、当時の生態系を伝える多様な化石が発見されてきました。
発掘調査は現在も続いています。地中に残された小さな骨や歯、植物の痕跡が新たに見つかるたびに、当時の生態系や恐竜の姿が少しずつ明らかになっています。
研究が進むにつれ、福井で見つかった化石をもとに、新たな恐竜が次々と新種として認定されてきました。肉食恐竜のフクイラプトル、植物食恐竜のフクイサウルス、首と尾の長い竜脚類フクイティタン、小型の植物食恐竜コシサウルス、獣脚類のフクイベナートルです。さらに2023年には、鳥に似た体つきを持つティラノミムスが新属新種として発表され、福井県で発見された新種の恐竜は6種となりました。
化石は、見つけた瞬間にすべてを語ってくれるわけではありません。岩石の中から慎重に取り出し、骨の形や構造を調べ、国内外の標本と比較します。そうした長い研究の末、名前のなかった骨が、新しい生物の存在を物語り始めるのです。
恐竜博物館は、過去を保存して見せるだけでなく、地域に眠る資料から新たな知見を生み出し、その成果を展示や教育へ還元しています。
さらに勝山市では、駅や道路、公園、商店など、まちの各所で恐竜に出会えます。地中から掘り出された化石が博物館を生み、まちのイメージとなり、県を代表する観光資源へと成長しました。地域に眠っていた資源を研究、教育、観光へとつないだ点でも、興味深い取り組みといえるでしょう。
今年11月12日に福井市のフェニックス・プラザで開催される第62回全国不動産会議 福井県大会では、福井県立恐竜博物館の谷川由美子館長による基調講演が予定されています。大会の前後に博物館を訪ねれば、講演で語られる「恐竜王国・福井」の背景が、より立体的に見えてくるはずです。

https://www.dinosaur.pref.fukui.jp/
長い年月と荒波が刻んだ、海にそそり立つ東尋坊(とうじんぼう)の断崖
恐竜が生きた白亜紀から時計の針を進め、次は坂井市三国町の東尋坊へ向かいます。
東尋坊では、日本海に面して柱のような岩が連なっています。火山活動によってできた岩が柱のように連なり、長い年月をかけて波に削られて生まれた景観です。このような岩の割れ方は「柱状節理(ちゅうじょうせつり)」と呼ばれ、東尋坊は周辺の岩礁や雄島などとともに、国の名勝・天然記念物に指定されています。
その基礎となる岩石は、約1,200万~1,300万年前の火山活動によって形成されたとされています。地下から上昇したマグマが冷えて固まる際、体積の収縮によって規則的な割れ目が生じました。やがて地殻変動によって地表に現れ、日本海の風や波に削られて、現在の断崖がつくられたのです。
岩場を歩けば、五角形や六角形の柱を束ねたような構造を間近に見ることができます。
崖の上から日本海を眺めるだけでなく、遊覧船に乗って海側から岩壁を見上げるのも、東尋坊の楽しみ方のひとつです。
上からは、入り組んだ岩場の広がりが見渡せます。海上から見上げると、巨大な石柱の群れが海面から立ち上がっているように映ります。同じ場所でも、見る位置が変われば地形の印象は大きく変わります。大地と海が長い時間をかけてつくり上げた造形を、異なる2つの視点から楽しめる場所です。
恐竜化石が地中に残された生命の記録だとすれば、東尋坊は、大地そのものに刻まれた悠久の時間の記録といえるでしょう。

高さ17メートルの大仏と1,281体の仏像が見守る祈りの空間
福井をめぐると、恐竜の全身骨格、東尋坊の断崖、そして巨大な大仏と、日常の尺度を超えるものに次々と出会います。勝山市の大師山清大寺に鎮座する越前大仏は、高さ17メートル。奈良・東大寺の大仏を上回る大きさで、広い大仏殿の中央から訪れる人を見下ろしています。
その姿だけでも圧倒的ですが、この場所をさらに印象深いものにしているのが、周囲の壁面に並ぶ仏像です。大仏を囲む三方の壁には、大小合わせて1,281体の石仏と金仏が納められています。巨大な一体の大仏と、壁一面に連なる無数の仏像。その対照が、唯一無二の壮大な景観を生み出しています。
越前大仏は、古代や中世から伝わる文化財ではありません。1980年代に建立された、比較的新しい寺院です。歴史の古さではなく、現代の人間が生み出した圧倒的なスケールによって、日常から切り離されたような空間がつくられているのです。
福井県立恐竜博物館と越前大仏は、同じ勝山市にあります。太古の生命を伝える巨大な恐竜の骨格と、現代につくられた巨大な仏像。一見まったく異なる2つの施設ですが、どちらも人間の大きさをはるかに超える存在と向き合い、時間や空間の感覚を揺さぶられる場所です。時代も成り立ちも異なる2つの施設を一度に巡れることも、勝山観光の大きな魅力です。

http://etizendaibutsu.com/index.html
Column1
世界に誇る、鯖江のめがね
福井市や鯖江市を中心とする福井県は、日本製めがねフレームの約95%を生産する国内最大の産地です。鯖江のめがねづくりは、1905年、農閑期の副業として技術を導入したことから始まりました。その後、分業による生産体制を築き、1983年には世界で初めてチタン製めがねフレームの開発・量産化に成功。軽さ、丈夫さ、精密な加工技術によって、世界的な産地へ成長しました。
市内の「めがねミュージアム」では、めがねづくりの歴史や製造工程を紹介するほか、福井県産フレームの販売、オリジナルめがねやストラップづくりも体験できます。めがねで培われたチタン加工などの技術は、医療器具やアクセサリーといった新分野にも生かされています。地域の小さな手仕事が、100年以上をかけて世界へ通じる産業へ育ったのです。

https://www.megane.gr.jp/museum/
旅の締めくくりは、11月に解禁される「越前がに」
時空をめぐる旅の最後は、現在の福井へ戻ります。全国不動産会議が開かれる11月は、越前がにの漁が始まる季節です。越前がにとは、福井県内の漁港に水揚げされる雄のズワイガニのことです。漁は毎年11月6日に解禁され、福井県産であることを示す黄色いタグを付けて出荷されます。1997年には、他県産と区別するため、全国に先駆けて産地証明タグが導入されました。現在は地理的表示(GI)保護制度にも登録され、福井を代表する地域ブランドとして管理されています。
福井県沖の漁場は港から比較的近く、漁を終えた船が短時間で帰港できます。鮮度を保ったまま水揚げできることが、引き締まった身と豊かな甘みを支えています。ゆでがにでは、殻の中に詰まった身の甘さをじっくりと味わえます。刺身にすれば繊細な食感が際立ち、焼けば香ばしさが加わります。甲羅の中の濃厚なカニミソも、冬を目前にした福井ならではの楽しみです。
ちなみに、雌のズワイガニは、福井では「せいこがに」と呼ばれているのをご存じでしょうか。雄より小ぶりですが、濃厚な内子と、プチプチとした食感の外子を味わえることから、地元では冬の味として親しまれてきました。漁期が短く、限られた時期にしか出会えないことも、その魅力を深めています。
第62回全国不動産会議 福井県大会は11月12日に開催されます。越前がに漁の解禁から、わずか6日後です。駅前で新しくなったまちに出会い、約1億2,000万年前の生命を知り、長い年月が刻んだ断崖を眺め、巨大な大仏と向き合う。そして夜には、冬の日本海から届いた旬を味わってみてはいかがでしょうか。

幸福度日本一を支える福井の暮らしと住まい
福井県は、「全47都道府県幸福度ランキング2024年版」で総合1位となり、2014年版から6回連続、12年にわたって「幸福度日本一」に選ばれています。ランキングは、健康、文化、仕事、生活、教育など85の指標をもとに算出されたものです。評価の背景にあるのは、安定した雇用環境、子育てや教育の充実、家族や地域のつながり、そしてゆとりある住環境です。共働き率や女性の就業率が高く、持ち家の広さも全国上位。通勤・通学時間が比較的短いことも、暮らしやすさを支えています。幸福度は、観光名所のように目に見えるものではありません。しかし福井を歩けば、豊かな自然と都市の利便性、働く場と生活の場が無理なく結びついていることに気づきます。北陸新幹線の延伸で訪れやすくなった今、福井の旅は、名所や味覚を楽しむだけでなく、「この土地で暮らす」という視点から地域を見る機会にもなります。全国不動産会議を機に、幸福度日本一を支える住まいとまちのあり方にも目を向けてみることをおすすめします。
Column2
まだある、福井の味
越前おろしそば

ソースカツ丼
薄めのカツを甘辛いソースにくぐらせ、ご飯にのせた福井の定番料理です。
羽二重餅
絹織物「羽二重」を思わせる、やわらかくなめらかな口当たりの銘菓です。
焼き鯖寿司
香ばしく焼いた鯖を酢飯にのせた、福井らしい海の幸の一品です。
水ようかん
福井では寒い冬に食べる習慣があります。薄い箱に流し固めた、みずみずしくあっさりした甘さが特徴です。