まちの紹介
2021.08.13

再開発地探訪② 北海道北広島市
新球場を核に広がるまちづくり構想


「北海道ボールパークFビレッジ」のイメージパース。
「北海道ボールパークFビレッジ」のイメージパース。32haの敷地に総工費およそ600億円をかけて建設が進む。球場を中心に様々なアクティビティが展開されるほか、災害時には防災拠点としても機能する。

2023年の北海道日本ハムファイターズの新球場開業と、それに伴う大規模なまちづくり構想に期待がふくらむ北海道北広島市。地価公示上昇率は全国2位となり、いま最も注目を集めているエリアとなっています。新球場の誕生と、そこから広がるまちの近未来図をレポートします。

広島県人が拓いた環境に恵まれたまち

札幌市に隣接し、新千歳空港から鉄道で約20分という好立地に広がる北広島市。その歴史は、1884(明治17)年に25戸103人の広島県人が入植し、開拓したことから始まりました。10年後の1894(明治27)年に広島村となり、1968(昭和43)年の町制施行により広島町に、そして1996(平成8)年に現在の北広島市となりました。

市内は大きく5つの地区に分かれ、それぞれ特色のあるまちづくりが進められています(図表1)。

図表1 北広島市のマップ

北広島市のマップ
  • ○JR北広島駅周辺を核として賑わう「東部地区」
  • ○自転車歩行者専用道路トリムコースや公園が多い「北広島団地地区」
  • ○寒地稲作この地に始まるの碑など、開拓の歴史を記す文化財が残る「西部地区」
  • ○国道36号沿いに大型商業施設などがあり、国内外から観光客が訪れる「大曲地区」
  • ○野幌森林公園に隣接する緑豊かな「西の里地区」

新球場をメインに広がる「北海道ボールパークFビレッジ」構想

なかでも東部地区は、2023年3月開業予定の「北海道ボールパークFビレッジ(以下、Fビレッジ)」の建設地として話題を呼んでいます。Fビレッジは、約35,000人を収容する新球場「エスコンフィールド HOKKAIDO」を核に、飲食施設やアクティビティ施設、様々な宿泊施設を備える“ビレッジ”。敷地内には北海道らしい自然を感じられる水辺や芝生エリアも広がり、まるでひとつの街のような空間になる予定です。2016年に北広島市がファイターズの新球場誘致に名乗りを上げ、2018年10月に建設地が正式決定し、開発がスタートしました。夏にはグランピングやキャンプ、冬にはアイススケートなど、四季折々のアクティビティが計画され、誰もが楽しめるまちづくりを目指しています。

構想はアクティビティだけではありません。Fビレッジとつながる拠点間輸送にEVバスを導入したり、商用車やチームの移動バスを徐々にクリーンエネルギー車両へと転換し、Fビレッジ内にEV自動車用の充電ステーションを設置するなど、持続可能な街づくりにも実践的に取り組みます。

また、Fビレッジ周辺では、札幌市方向からの自動車でのアクセス性をよくするため、北海道および北広島市による2本の新設道路の整備が進められています。さらに、Fビレッジ開業後の2027年度中には、Fビレッジに直結するJR新駅の設置も予定されています。

北海道ボールパークFビレッジ
新球場「エスコンフィールド HOKKAIDO」のイメージパース。地上6階、地下2階で高さは約70m。天然芝の開閉式屋根、全面ガラス張りの壁、世界最大級の大型ビジョンが設置されるほか、温浴施設や宿泊施設も設置予定。
新球場「エスコンフィールド HOKKAIDO」のイメージパース。地上6階、地下2階で高さは約70m。天然芝の開閉式屋根、全面ガラス張りの壁、世界最大級の大型ビジョンが設置されるほか、温浴施設や宿泊施設も設置予定。
2021年7月時点のボールパーク建設現場(2020年着工)。

新球場が地価を動かす

特筆すべきは、北広島市の地価の変動率です。Fビレッジの建設が開始された2020年頃から地価が上昇し始め、2021年に国土交通省が公示した「令和3年 地価変動率上位順位表」では、全国トップ5のうち、東部地区が2・3・4位にランクイン(図表2)。いずれもFビレッジから2㎞圏内に位置するエリアであることから、新球場およびFビレッジ全体の構想が地価に大きく影響していることがわかります。

図表2 令和3年 地価変動率上位順位表(全国)

地価変動率トップ10のうち、北広島市が2.3.4.6位にランクインしている。

JR北広島駅西口周辺エリアの土地利用でまちに賑わいと交流を

一方、新駅ができるまではFビレッジの最寄り駅となるJR北広島駅周辺も、大きな変貌を遂げようとしています。
駅西口周辺は北広島団地地区にあたり、今から50年ほど前に、札幌圏のベッドタウンとして整備されたエリアです。かつては子育て世帯が多く、活気にあふれていましたが、近年は少子高齢化や人口減少が進み、西口周辺エリアも閑散としており、点在する市有地も低未利用地になっていました。

そんなとき、ファイターズの球場移転というチャンスが巡ってきたのです。北広島市は新球場のネーミングライツも取得している不動産会社(日本エスコン)と協定を結び、駅西口周辺に広がる約2.5haの市有地に、地上18階建ての複合ビルやFビレッジと直結するシャトルバスの発着場を整備。シャトルバス発着場はFビレッジの開業と同じく2023年春の完成を、地域の飲食店等と連携する商業施設や150~200室のホテルが入る複合ビルは2023年度中の開業を予定しています。その他、周辺エリアでは分譲マンションや保育所の建設計画も進められ、多様な世代に対応する居住環境の整備や雇用の確保にも期待が高まります。

ちなみに、この北広島駅西口周辺エリアは、先述の「令和3年 地価変動率上位順位表」では全国6位にランク入りしています(図表2)。球場単体だけでなく、周囲のまちづくりと一体となって行う北広島市の構想が、いま、全国から注目されています。

再開発で変わる札幌市

北広島市に隣接する札幌市中心部でも様々な再開発が進んでいます。すすきの交差点にあった商業施設「ススキノラフィラ」は、2023年、映画館やホテル等が入る地上18階建ての大型複合施設へと生まれ変わる予定です。また札幌駅南口周辺では、地上35階建て、高さ約200mの超高層ビルが建設中。同駅北口エリアでも大型の再開発が進められています。2030年度には北海道新幹線の延伸も予定されている札幌市。5年後、10年後、その街並みは大きく変わりそうです。

ススキノラフィラ跡地
札幌駅南口周辺