Vol.24 無免許者の宅地建物取引の媒介を行い幇助(ほうじょ)罪が認定されたトラブル


無免許者の宅地建物取引に、免許を有する宅建業者が媒介等で関与することは、宅建業法が禁ずる無免許営業という犯罪行為を手助けすることになります。宅建業者においては、うっかり無免許営業に関与してしまうことがないよう、取引者の行為が宅地建物取引に該当しないことについて注意をしておく必要があります。

トラブル事例から考えよう

売主の無免許営業による転売取引の媒介を行った宅建業者代表者に無免許営業の幇助罪が認定された
【名古屋高判 令4・9・15】

事案の概要

(1)宅建業免許を有しないB社(卸売業等・代表者A)およびC社(不動産賃貸業等、実質的経営者A)(以下、本件各社)は、P土地区画整理事業の区域内の土地(仮換地)について、Y(被告・宅建業者y社の代表者)や第三者から、土地の所有者が売却を希望しているので購入してもらえないかと言われて購入し、その取得から数年の間にB社は4物件の売却を、C社は2物件の売却を行い、各取引においてy社は媒介業者として関与し、買主より媒介手数料を受領した。
(2)Yは、この一連の取引に関し、Aによる本件各社の本件各取引は宅建業法12条1項の無免許営業に該当し、Yには無免許営業罪の共同正犯が成立するとして起訴された。

事案の図

【国土交通省 宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(ガイドライン)】

1 「宅地建物取引業」について
(1)本号にいう「業として行なう」とは、宅地建物の取引を社会通念上事業の遂行とみることができる程度に行う状態を指すものであり、その判断は次の事項を参考に諸要因を勘案して総合的に行われるものとする。
(2)判断基準
①取引の対象者
広く一般の者を対象に取引を行おうとするものは事業性が高く、取引の当事者に特定の関係が認められるものは事業性が低い。
(注)…略…
②取引の目的
利益を目的とするものは事業性が高く、特定の資金需要の充足を目的とするものは事業性が低い。
(注)…略…
③取引対象物件の取得経緯
転売するために取得した物件の取引は事業性が高く、相続または自ら使用するために取得した物件の取引は事業性が低い。
(注)…略…
④取引の態様
自ら購入者を募り一般消費者に直接販売しようとするものは事業性が高く、宅地建物取引業者に代理又は媒介を依頼して販売しようとするものは事業性が低い。
⑤取引の反復継続性
反復継続的に取引を行おうとするものは事業性が高く、一回限りの取引として行おうとするものは事業性が低い。
(注)…略…

01無免許営業とその幇助罪

無免許者の宅地建物取引に、宅建業者が媒介等により関与することは、宅建業法が目的とする「不動産取引の公正の確保・悪質な不動産業者の排除」を脅かす、無免許営業という犯罪行為を、免許を持つ宅建業者が手助けするということであり、宅建業法においては、宅建業法12条1項の違反行為に不当に関与した(同65条2項5号)等として行政処分の、刑法においては幇助犯(刑法62条1項)として刑事処分の対象となります。

本件では、「軽微とはいえないAの無免許営業の事情を知った上で媒介を行い、Aの無免許営業を幇助したYの刑事責任は軽視できない」として罰金刑が言い渡されています。

なお、Yは、本件Aの無免許営業取引に関与したのに起訴されていない他の媒介業者がいることから、「他の媒介業者は起訴されていないのに、Yが起訴されるのは公訴権の濫用である」と主張しています。しかし、本件裁判所は「審判の対象になっていない他の事件は犯罪の情状等の事情が明らかでなく、他事件の公訴権の発動の状況と対比することのみによって、本件公訴提起が検察官の裁量権を逸脱したとはいえない」としてその主張を棄却しています。

02無免許営業幇助に対する行政処分

宅建業法における無免許営業の幇助行為に関する行政処分は、刑事事件として起訴されたか否かにかかわらず、行政庁の基準に従って、違反行為の認定・処分等が行われます。

「無免許営業幇助」に関する行政処分事例では、

①媒介業者が売主に、土地を数区画に分割し売却する提案を行い、分割後の土地の媒介を行った。
②無免許である売主が、区画割り等をして売却している土地について、媒介を行った。
③売主または買主が無免許で反復継続して不動産売買を行う者であることを知りながら、売買または媒介を行った。
④宅建業者が、宅建業免許を持たない関連会社に、転売目的で不動産の購入・売却を行わせ、自らは媒介業者として関与した。

のパターンが見られます。

うっかり無免許営業の幇助をしてしまわないよう、これらについては、特に気をつけておく必要があります。

03無免許営業に関与しないために

取引において、売主・買主が、宅建業の無免許営業にあたることを知らずに、転売等の取引を行おうとする場合があります。

宅建業者においては、取引に際して、売主には不動産の取得経緯や売却理由等の確認を、買主には購入目的等の確認を行うことが重要であり、当該取引が「国土交通省のガイドライン」に照らして、無免許営業が疑われるような場合には、慎重な対応を行う必要があります。


一般財団法人不動産適正取引推進機構
調査研究部 上席研究員
不動産鑑定士

中戸 康文

一般財団法人不動産適正取引推進機構(RETIO)は、「不動産取引に関する紛争の未然防止と迅速な解決の推進」を目的に、1984(昭和59)年財団法人として設立。不動産取引に関する紛争事例や行政処分事例等の調査研究を行っており、これらの成果を機関誌『RETIO』やホームページなどによって情報提供している。
HP:https://www.retio.or.jp/