Vol.29 賃貸住宅におけるLPガス料金問題のトラブル回避のために


LPガス事業者が賃貸住宅の貸主に、給湯器やエアコンといった設備等を無償貸与し、その費用を入居者のLPガス料金に上乗せして回収している問題の是正のため、液石法改正省令が今年4月2日に公布されました。仲介業者においては、入居者がLPガス料金トラブルに巻き込まれることがないよう、改正内容の理解と適切な対応が必要と思われます。

液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律

液石法改正省令と仲介業者のトラブル懸念

不透明なLPガス料金問題と、是正に向けた改正省令の概要

【不透明なLPガス料金問題】(図1参照)

図1

不透明なLPガス料金問題

〇 一部の賃貸住宅で、LPガス事業者が貸主に無償で設備等を貸与し、その費用を入居者に不透明なかたちでLPガス料金に上乗せして回収する(いわゆる「無償貸与」の商慣行)という、消費者保護の観点から問題のある状況が発生しています。

【問題是正のため、液石法改正省令(令和6年4月2日公布)

(1)令和6年7月2日施行

〇ガス事業者のLPガス料金等の情報提供義務(図2参照)

図2:LPガス事業者のLPガス料金等資料提供義務

LPガス事業者のLPガス料金等資料提供義務

①入居希望者に対して、事前提示の努力義務
②入居希望者から事業者に直接要請があった場合は提供義務

(2)令和7年4月2日施行

<A:新規契約・既存契約において>

〇ガス料金表の基本料金、従量料金、設備料金からなる三部料金制(設備費用の外出し表示)の徹底(図3参照)

図3:設備費用の外出し表示

設備費用の外出し表示

<B:新規契約・既存契約において

〇電気エアコン、Wi-Fi 機器等、LPガス消費と関係のない設備費用のLPガス料金への計上禁止(賃貸住宅向けLPガス料金においては、ガス器具等の消費設備費用についても計上禁止)

既存契約は早期移行努力義務

LPガス供給の賃貸住宅仲介において、設備等料金の上乗せ問題に巻き込まれないために

〇 入居後に、設備等料金の上乗せがあるためLPガス料金が高いことを知った入居者は、料金に不満があっても他の業者に切り替えることができず受け入れるしかありません。そのため、契約前に当該説明がなかったことについて、貸主や仲介業者との間でトラブルになることが考えられます (図4参照)。

図4:賃貸住宅仲介におけるトラブル懸念

賃貸住宅仲介におけるトラブル懸念

賃貸仲介における仲介業者の対応

〇 貸主・管理会社に、当該物件に係る「LPガス料金表」等の提供を求め※1、入居希望者に情報提供を行う(この時、機器設備等料金がLPガス料金に含まれていないかの確認を行い、機器設備等料金がLPガス料金に含まれている場合、入居希望者にその旨の説明を行う※2)。

(注) 経済産業省・国土交通省は各業界団体に対し、上記対応・説明等を行う旨の依頼をしている(下記の参考HP参照)

※1 液石法改正省令により、LPガス事業者は、入居希望者に対して事前提示の努力義務が、また、入居希望者から事業者に直接要請があった場合は提供義務がある(図2参照)。
※2 LPガス料金表の設備料金外出し表示(図3参照)の徹底は、令和7年4月2日からであることに注意。

【参考HP】 全日本不動産協会HP > 協会からのお知らせ 内

2024.5.20 経済産業省「LPガスの商慣行是正に向けた制度見直しについて」
https://www.zennichi.or.jp/topics_category/より上記タイトルを検索


国土交通省事務連絡 2024.5.17 「LPガスの商慣行是正に向けた制度見直しの周知について(依頼)」
https://www.zennichi.or.jp/wp-content/uploads/2024/05/8b7c4b555c1881918eac383c6fe236b8.pdf


国土交通省事務連絡 2024.2.29 「賃貸集合住宅におけるLPガス料金の情報提供について(再周知依頼)」
https://www.zennichi.or.jp/topics_category/より上記タイトルを検索


01LPガスの無償貸与の商慣行問題

LPガス供給の一部賃貸住宅において、LPガス事業者がガス供給契約獲得のため、あるいは、貸主の要求により、ガス給湯器・コンロのほか、ガス設備と関係のない、エアコン・インターホン・Wi-Fi機器等の設備の費用を事業者が負担して、貸主に無償貸与し、当該費用を不透明なかたちでガス料金に上乗せして入居者から回収するという商慣行が行われ、消費者保護の観点から問題となっています。

対応として、経産省・国交省から各業界団体宛てに、入居希望者にLPガス料金の情報提供をする等の要請がされていましたが、この解決には、無償貸与の商慣行を是正する必要があるとして、今年4月2日に液石法改正省令が公布されました(参考HP参照)。

02改正省令の概要と宅建業者の対応

改正省令は、LPガス事業者に対し、令和6年7月2日施行において、過大な営業行為の制限、および、入居希望者がLPガス料金等の情報を入手して契約の判断を行うことができるよう、入居希望者へのLPガス料金等情報の事前提示の努力義務(入居希望者から直接要請があった場合は応じる義務)を課しています(図2参照)。

また、令和7年4月2日施行において、LPガス料金に設備等の費用が含まれている場合は、その情報を入居者が認識できるよう、三部料金制によるLPガス料金表の徹底を義務付けます(図3参照)。

これに合わせて、国土交通省は集合住宅を管理している所有者および管理会社、仲介を行う宅建業者等の業界団体宛てに「賃貸借契約を締結する前の消費者に対して、LPガス料金表等の情報を適切に提供すること」等の要請を、今年5月17日の事務連絡等によって行っています(参考HP参照)。

LPガス供給の賃貸住宅に関しては以上のような問題があり、その対応要請がされていますので、仲介業者においては、入居希望者がLPガス料金に関するトラブルに巻き込まれないよう、国土交通省事務連絡の依頼に沿った実務対応を行う(LPガス料金に設備等費用の上乗せがされていないか等の調査を行い、契約締結前の入居希望者に対して、適切な情報提供を行う)必要があることに、注意をしておく必要があります。


一般財団法人不動産適正取引推進機構
調査研究部 上席研究員
不動産鑑定士

中戸 康文

一般財団法人不動産適正取引推進機構(RETIO)は、「不動産取引に関する紛争の未然防止と迅速な解決の推進」を目的に、1984(昭和59)年財団法人として設立。不動産取引に関する紛争事例や行政処分事例等の調査研究を行っており、これらの成果を機関誌『RETIO』やホームページなどによって情報提供している。
HP:https://www.retio.or.jp/