全日本不動産協会の令和4年度税制改正要望実現に向けて!!


9月号に引き続き、6月23日全日本不動産協会総本部理事会にて承認された令和4年度政策及び税制改正要望書についてご説明いたします。今月号では、税制要望および昨年度全日本不動産協会より要望した「低未利用土地100万円控除」の利用状況についてご報告いたします。

令和4年度 政策及び税制改正に関する要望書

【不動産流通促進による地方活性化を図る税制改正要望】

  • 1.相続登記における登録免許税の廃止
  • 2.一定の住宅用家屋・土地購入時における抵当権設定時の登録免許税の廃止
  • 3.二地域居住等を推進する新規住宅ローンの創設並びにローン控除の適用
  • 4.印紙税の見直しによる新たな税の適用
  • 5. 既存住宅リフォームにおける消費税の非課税措置
  • 6. 住宅・土地に係る適用期限を迎える各種税制特例措置の延長と拡充

[今年度の新規案件]

3.二地域居住等を推進する新規住宅ローンの創設並びにローン控除の適用

要望主旨

現在、二拠点目となる住戸を購入する際には親族居住用住宅ローン、セカンドハウスローン等があるが、審査が厳しく、金利も高めに設定される。また、住宅ローン控除の合併や金利の高い2件目のローンでの控除が適用されないなど購入意欲の阻害要因となっている。

二地域居住等を推進するため、一般消費者の動機づけや一般消費者に対する当該住宅の購入意欲を増進させるため、住宅ローンの創設や住宅に対しての積極的な融資優遇措置となる環境の構築を要望する。

従前より要望している既存住宅の購入意欲を増進させるため、安心R住宅と一体となった既存住宅ローンの創設やインスペクションを実施した住宅に対しての、積極的な融資優遇措置となる環境の構築もあわせて要望する。

5.既存住宅リフォームにおける消費税の非課税措置

要望主旨

リフォームは空き家や既存住宅の住宅価値を高め、利活用するためには有効な手段であり、質の高いリフォームを行うことは既存住宅流通の活性化につながると考える。しかし現状は、築年数が多いほどリフォームの費用が嵩み、築浅のリフォーム費用が掛からない既存住宅しか流通されていない。

一般消費者が、築年数に関係なく積極的にリフォームに取り組む環境は、住宅のストック市場形成に大きく寄与するとともに、既存住宅流通促進のため導入された安心R住宅制度の利用促進や二地域居住等の推進に大きく影響すると考えられる。また新築購入時、既存住宅購入時等で消費税が発生し、税の重複をしており、他の先進国と同様に居住用の建物に対するリフォームに関し、費用の消費税を非課税とすることを要望する。

ご報告

全日本不動産協会が強く要望し実現した「低未利用土地100万円控除」はすべての都道府県において利用が確認され、令和2年土地等確認書交付実績として2,060件と、皆様にご利用いただける税制特例措置となりました。アンケート等にご協力いただきました会員の皆様へ改めてお礼申し上げます。詳細は次の資料をご確認ください。

低未利用地の適切な利用・管理を促進するための特例措置

地方部を中心に全国的に空き地・空き家が増加する中、新たな利用意向を示す者への土地の譲渡を促進するため、個人が保有する低額の低未利用地を譲渡した場合の譲渡所得から100万円を控除することで土地の有効活用を通じた投資の促進、地域活性化、更なる所有者不明土地の発生の予防を図る

低額な不動産取引の課題

想定したよりも売却収入が低い

相対的に譲渡費用(測量費、解体費等)の負担が重い

様々な費用の支出があった上に、さらに課される譲渡所得税の負担感が大きい

矢印

土地を売らずに、低未利用地(空き地)として放置

矢印

売却時の負担感を軽減することで売却インセンティブを付与し、土地に新たな価値を見いだす者への譲渡を促進

新たな特例措置の概要

※令和2年7月1日~令和4年12月31日

  • ・土地とその上物の取引額の合計が500万円以下
  • ・都市計画区域内の低未利用土地等

※譲渡前に低未利用であること及び譲渡後に買主が利用の意向を有することについて市区町村が確認したものに限る。
※宅建業者が空き家となっている中古住宅を買い取って、一定の質の向上をはかるリフォームを行った後売却する(買取再販)場合も含む。

の要件を満たす取引について、売主の長期譲渡所得を100万円控除

矢印
  • ● 新たな利用意向を示す新所有者による土地の適切な利用・管理
  • ● 土地の有効活用を通じた投資の促進、地域活性化
  • ● 所有者不明土地の発生予防
特例適用イメージ
特例適用イメージ

(※1)取得費が分からない場合、譲渡価格の5%とみなされる。
(※2)解体費・測量費・宅建業者への仲介手数料等

利活用されていない少額の空き地等の活用イメージ
利活用されていない少額の空き地等の活用イメージ

出典:国土交通省資料より抜粋

令和2年低未利用土地等確認書交付実績(都道府県別)

  • ・全ての都道府県において、交付実績があり、平均して約44件となった。
  • ・1件当たりの譲渡の対価の額は平均231万円(単独所有の場合は257万円、共有の場合は143万円)だった。
  • ・交付件数のうち約2割は土地等が複数人の共有だった。

都道府県別確認書交付数上位(単位:件)

茨城県
124
愛知県
117
静岡県
92
岐阜県
92
北海道
87

市町村確認書交付数上位(単位:件)

宮崎県
都城市
43
山形県
鶴岡市
30
静岡県
浜松市
27
兵庫県
姫路市
24
新潟県
新潟市
24

1件当たりの譲渡の対価の額(単位:万円)
単独所有・共有の件数割合(単位:%)

単独所有の場合
257
78%
共有の場合
143
22%
全体
231
100%

低未利用地の適切な利用・管理を促進するための特例措置適用事例(山形県鶴岡市)

  • ○3人の地権者が所有する低額の狭小地2つと、共有の私道について、単体の売却を行った場合は、将来住宅を建てる際に接道要件を満たさず、建築確認を受けることが出来ない可能性があった。
  • 本特例措置により売却後に手元に残る額が増えたこともあって、売却のインセンティブとなり、宅地建物業者のコーディネートにより、纏まった事業用地として一括譲渡された。

※建築基準法第43条において、建築物の敷地は、道路に2m以上接しなければならないとされている。

<物件概要>
物件状況:更地
売却額:約400万円、約200万円
敷地面積:437㎡
<立地>
鶴岡駅:600m
スーパー:200m
低未利用地の適切な利用・管理を促進するための特例措置適用事例
低未利用地の適切な利用・管理を促進するための特例措置適用事例
低未利用地の適切な利用・管理を促進するための特例措置適用事例
国土交通省資料より抜粋
  • 北九州市に住む所有者が、両親の住んでいた鶴岡市の空き家を解体して売却し、新たに住宅用地として譲渡。
  • ○空き家について、所有者が管理のために定期的に現地を訪問するなど、交通費や宿泊費等の負担があったものの、本特例により、13万円ほど税負担が軽減され、解体後売却することができた。
<物件概要>
物件状況:空き家
売却額:約300万円(解体後)
敷地面積:115㎡
<立地>
鶴岡駅:1.6km
コンビニ:300m
鶴岡市の空き家
矢印
新たな住宅用地
宅建業者の広告等より引用

低未利用地の適切な利用・管理を促進するための特例措置適用事例(石川県輪島市)

  • 相続により、老朽化した空き店舗を取得したが、相続人は遠方に居住しており、管理が負担に。
  • ・宅建業者に空き家バンクの登録の相談をしたところ、宅建業者の紹介により、購入者が現れる。
  • ・購入後、改修し、ライダーのためのガレージハウスとして使用。景観の改善や地域活性化に寄与。
譲渡前の空き店舗
(出典:輪島市提供)
売主の声
  • ・相続により、老朽化した空き店舗を取得
  • ・遠方に住んでおり、管理が負担になっていた
譲渡後のガレージハウス
(出典:輪島市提供)
購入者の声
  • ・ゲストハウス運営法人
  • ・石川県輪島市「ライダーを笑顔で歓迎する都市」宣言に理解を示しており、ライダーを歓迎するまちづくりに取り組む